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凸版印刷
紙製飲料容器「カートカン」

2019.12.16

最新記事アルミレスで常温・長期保存を可能に

 環境保全や温暖化対策の重要性が言われて久しい。最近では、海洋プラスチックが国際的な問題となっている。今回の「これは優れモノ」は、環境問題に貢献する紙製飲料容器を取材した。

カートカン

製品ではなく作品を作る

 「社名に印刷とありますが、祖業はパッケージ事業なのです」と話すのは、凸版印刷生活・産業事業本部パッケージソリューション事業部の宝居要介(ほうきょ・ようすけ)(44)さん。
  同社は、1880年代に大蔵省印刷局で働いていた木村延吉(きむら・えんきち)と降矢銀次郎(ふるや・ぎんじろう)らによって設立された。2人は、近代的紙幣の製造に用いられた「エルヘート凸版法」など当時最新の印刷技術を学んだ技術者で、当初は有価証券などの高級印刷を中心とした事業展開を目指していた。
 ところが、折からの不況で高級印刷はほとんど需要がなく、会社設立は一時とん挫した。ビジネスの機会を探っていると、し烈な販売競争をしていたタバコ会社のパッケージのデザインから印刷・製造を手掛けることに成功。1900年に現在本社のある東京都台東区台東一丁目に創業することができた。社名は、「エルヘート凸版法」からとったもので、会社設立の趣意書の中には、「印刷術は美術なり」という一言が盛り込まれた。
 この精神は現在も受け継がれ、製品ではなく作品を作るという心意気が会社の理念として、脈々と流れているという。
 「どんなパッケージが消費者の心をつかむのかを常にウォッチしています」。宝居さんは、食品や生活用品メーカーなどと商品の開発段階から共同でパッケージづくりに関わっている。

紙パック同様のリサイクル

 近年では、機能性や生活者の利便性だけではなく、環境負荷の削減を図る「パッケージの最適化」が世界的な潮流となっている。そのため、紙パックに入った飲料なども広く流通している。
 しかし、紙パックの内側には、中身の保存期間などを延ばすために薄いアルミ箔が貼ってあることも多い。紙パックを古紙として活用するためには、アルミ箔を分離する必要があり、リサイクルの課題ともなっている。
 1986年に凸版印刷が開発・発売した透明バリアフィルム「GL FILM」は、世界最高水準のバリア機能を持つ透明バリアフィルムで、吸湿・乾燥・腐敗などの変化から内容物を保護する「優れモノ」。アルミ箔の代わりに紙容器に使用することで、紙パックと同様のリサイクルが可能だ。
 このフィルムを使って、飲料の常温流通・長期保存を実現したのが紙製の小型飲料容器「カートカン」だ。ドイツで生まれた製品だが、日本国内の品質基準に合わせるために改良を行い、「アルミレス」「長期保存」「常温流通」を実現した。原料となる紙には間伐材を含む国産材が30%以上使用されている。健全な森林を育てるためは、「植える」「育てる」「収穫する」サイクルを回していくことが必要であり、日本の森林保護とCO2削減に一役買っている。
 「弊社が1996年から日本で初めて導入した商品ですが、近年の環境意識の高まりで多くの引き合いを頂いております」と宝居さんは力強く語った。

interview 凸版印刷 生活・産業事業本部
パッケージソリューション事業部
宝居要介  氏

焼却ごみ福泣く、塩素系ガスの発生もない

カートカン開発の背景は

 もともとはドイツで生まれた容器だが、国内での市場性を見込んで日本に導入した。ドイツでは容器の内側にはアルミ箔を貼っていた。アルミ箔は水蒸気や酸素を遮断するバリア性を有し、内容物を吸湿や腐敗から守ることができる。一方で、アルミは枯渇資源であることや、リサイクル適性が高くないという欠点があった。

日本導入で改良した点などは

 弊社は1986年に透明バリアーフィルム「GL FILM」の開発に成功した。バリアー性能が高く、食品などの内容物を腐敗や乾燥、吸湿などから保護できる。また、焼却しても塩素系ガスの発生もなく、焼却後のごみも少ないという優れた製品だ。この「GL FILM」をアルミの代わりにカートカンに用いた。ペットボトルや缶の販売が禁止されているイベント会場や公共施設でも、カートカンであれば販売が可能だ。また、カートカンの容器成型と中身の充填には特別な装置が必要なため、専用の工場を千葉と福岡に設けた。

農林水産大臣賞も獲得した

 紙を使うことから、原料となる木材を消費すると思われがちだが、実は森林を健全に育成することに寄与している。森は木が増えすぎると、光が当たらずかえって痩せてしまう。人の手で間伐が必要なのだが、間伐材の使い道がないと、なかなか進まない。カートカンは、間伐材を積極的に使うことで、日本の森林保護にも貢献している。

今後の課題などは

 近年の社会情勢を受けて、環境意識の高い生活者が増えており、贈答品や限定の商品などにも多く採用されている。われわれの培ってきたデザイン力や印刷技術でパッケージのプレミアム感を演出し、商品自体に付加価値を付与することで、より多くの生活者にカートカンを手に取ってもらうことが目標だ。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ