89

ロッテ
チョコレート菓子「コアラのマーチ」

2019.07.08

最新記事多彩な絵柄 味はカカオ焙煎の本格志向

 平成から令和へと新しい時代を迎えた。昭和・平成・令和の3世代の家族構成というのも珍しくなくなる。いま、若者の間では、ちょっとした”昭和ブーム”になっているという。今回の「これは優れモノ」は、昭和に発売された菓子を取材した。

コアラのマーチ

女子の都市伝説でヒット

 「今年で35年目を迎えるロングセラー商品です」と話すのはロッテマーケティング部で1年前から「コアラのマーチ」を担当している江幡辰也さん(31)。大学で遺伝子工学を専攻し、入社後は3年半ほどチョコレートの原料であるカカオの品質などの研究をしてきた。
  コアラのマーチは、1984年10月に多摩動物公園(東京日野市)などに初めてコアラがやってくることを聞き、その年の3月に発売した。
当時、ロッテにはビスケットの中にチョコレートを注入する技術があり、キャラクターやネーミングなどの商品コンセプトを思案中だった。
  「地味な灰色で動きの少ないコアラが楽しくマーチングバンドを組んで日本にやってくるというコンセプトで“コアラのマーチ“と命名し、楽器を持った絵柄など12種類をビスケットにプリントしました」ということだが、江幡さんによると、当時の担当者は絵柄にはあまりこだわりを持っていなかったという。
 発売から6年ほどたった1990年頃になると、女子高生の間でコアラの絵柄ブームが起きる。まゆ毛のあるコアラがプリントされたものを見つけるとラッキーだということが口コミで広がった。
 この都市伝説は、SNSのない時代にあっても全国に広まったため、同社では各絵柄に名前をつけるとともに、絵柄を増やし、話題化を図る絵柄募集のキャンペーンなども実施した。
 コアラの絵柄は、玩具や文房具などにもライセンスされ、ロッテ自体をイメージさせるほどのブランド資産にまで成長した。 一時期、500種類まで増えた絵柄は2015年にキャンペーンの一環として”総選挙”を実施して、365種類に絞った。

半世紀以上も培った技術

 絵柄を探す楽しさが「コアラのマーチ」のヒット要因になったが、味が飽きられたらロングセラーにはならない。
 「当社のチョコレート作りは原料のカカオの焙煎から行っています」と江幡さん。
 カカオの焙煎からチョコレート菓子を大量生産しているメーカーは、同社を含めて国内で数社しかないという。
 チョコレートの原料となるカカオは、紀元前から中南米の先住民たちに食べられていた。15世紀に栄えたメキシコのアステカ帝国の皇帝は、カカオをすり潰し、唐辛子を混ぜたドリンクを精力剤として愛飲していた。
  この帝国を滅ぼしたスペイン人たちがカカオを持ち帰ったことから、以後ヨーロッパでチョコレート文化が栄える。日本では明治初頭に紹介され、日本の菓子メーカーも製造するようになった。
 「半世紀以上にわたるチョコレート作りの技術が詰め込まれています」と江幡さんは、コアラのマーチの人気の秘密を明かした。

interview六rw マーケティング部 
江幡 辰也氏

母子ともに満足 エンタメ性で愛され続ける

今年で発売35周年を迎えた

 外箱のデザインは時代に合わせて多少変えたが、六角形の箱の形や中身の味は変えていない。この商品を企画した担当者も、これほどのロングセラーとなるとは思っていなかったそうだ。この商品は、母と子で食べてもらうための商品として企画された。風味を子供向けにすると、母親は買わないだろうし、その逆では子供が喜ばない。味わいで両者を満足させたうえに、絵柄を楽しむというエンターテインメント性を加えたことが長年愛され続けてきた要因だと思う。

さまざまな技術も詰っている

 1980年代には、ビスケットの中にチョコレートを注入する技術は確立していた。ビスケット用の伸ばした生地にコアラの絵柄をカラメルのインクでプリントする。それを型で抜いて、オーブンで焼く。絵柄が入っていない面に裏返して、チョコレートを注射針のような細い管で注入するという具合だ。チョコレートを注入する際に、ビスケットを裏返す仕組み作りには苦労したと聞く。

季節によって売り上げに変化は

 コアラのマーチに関しては、通年でコンスタントに売れている。ハロウィーンやイースター、七夕などの子供向けイベントの時期には、期間限定パッケージの商品なども販売している。また、味の嗜好も変化しているため、現在はオリジナルのチョコのほか、いちご、ココア&ミルクの3つのフレーバーを通年販売している。すべて国内の工場で生産している。子供人口が減っていることもあり、20~40代の世代にも選んでもらえる商品づくりにも注力したい。

海外での販売は

 タイに生産拠点を設け、東南アジアや欧米向けに輸出している。パッケージのデザインなどはほぼ日本のものと同じだが、各国のレギュレーションに合わせて原材料を変えている。また、フレーバーもマンゴー味、チョコバナナ味など対象国の嗜好に合わせたものを販売している。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ