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ヤマハ発動機
三輪スクーター「トリシティ155」

2019.05.27

最新記事機動性・環境性能追求 若年層にも好評

 5月のさわやかな季節、新緑の中をドライブに出かけるという人も多いのではないか。最近では、中高年がオートバイでツーリングを楽しんでいる姿もよく見かける。今回の「これは優れモノ」は安定感のある3輪スクーターを取材した。

トリシティ155

ユーザーの高齢化が課題

 「若者にオートバイの楽しさを知ってほしい」と話すのは、ヤマハ発動機販売営業統括部の早田(そうだ)和正さん(56)。オートバイ好きが高じてヤマハに入社した、ライダー歴30年以上の営業マンだ。
  早田さんによると、ヤマハの新車オートバイ購入者は40歳代が中心という。実際、日本自動車工業会の2017年度調査でも、二輪車ユーザーの平均年齢は52.7歳という結果が出ている。10年前の07年度調査では、45.8歳だったことから、ユーザーの高年齢化が続き、若者のオートバイ離れが顕著になっていることを証明している。
 「オートバイはおじさんの乗り物と一部で揶揄されている」と、早田さんは残念がる。
  ヤマハ発動機の前身で、ピアノをはじめとした楽器製造を行っていた日本楽器製造(現ヤマハ)が、オートバイ製造に乗り出したのは1953年のこと。朝鮮戦争の特需景気でオートバイ・メーカーが乱立する中で、最後発の参入だった。
 1955年に同社第一号となる空冷2ストローク125ccの「YA-1」が誕生、黎明期の日本のモーターレース界で数々の勝利を飾った。その後も国内外のオートバイレースにワークスチームとして参加し、スポーツオートバイメーカーとしてヤマハの名前は世界に広がっていく。
 さらに、同社はオートバイの世界にとどまらず、モーターボート、スノーモービル、電動アシスト自転車、自動車のエンジン製造など事業分野を広げている。
 1977年、日本のスクーターブームの火付け役となったパッソル(Passol)を発売する。イメージキャラクターに当時46歳だった女優の八千草薫を起用、スカート姿でまたがらずに、両足を揃えて乗れるとして、女性にも大人気のモデルとなった。
 デザイン性にこだわり、エンジンの周りをカバーで覆うことで服の汚れを防いだり、自転車と同じように、ハンドルに前後輪のブレーキを設けたりなどさまざまな工夫を施した。 

本場欧州でも人気モデル

 早田さんによると、ヤマハでは、当時すでにフロント2輪の3輪モデルを試作、実験を繰り返していたという。ただ、通常の原付2輪車の需要が好調なことから、この企画はいったん休止となった。
 2000年以降、先進各国や成長著しい新興国の都市部では、慢性的な交通渋滞に悩まされ、社会的な問題となっている。そうした中で、オートバイは、機動性の高い手段として、各国で多用されており、その環境性能の良さから更なる需要が期待されていた。そこで、オートバイに乗った経験のない人でも扱いやすく、安定感のあるフロント2輪モデルとして14年に発売されたのが、「トリシティ(TRICITY)」だ。
 「オートバイの本場欧州でも人気のモデルで、日本の若者からも高反響を得ています」と早田さんはうれしそうに語った。

interviewヤマハ発動機 販売営業統括部 早田 和正 氏

20代にインパクト 学生の指名買いも

フロント2輪のオートバイは世界初か

 海外にも、同タイプのオートバイはある。ただ当社のトリシティはリーニング・マルチ・ホイール(LMW)という独自のシステムを搭載している。カーブする時にフロント2輪が車体と同調して傾斜(リーン)することで、タイヤと地面との接地幅があまり変わらず、安定性とオートバイ本来の自然な乗り味が楽しめる。通常のオートバイでは石畳や砂利道、濡れたマンホールの上でグリップを失い滑ることもあるが、トリシティでは、フロント二輪の左右どちらかがグリップを失っても、もう片方がグリップしていれば、路面の影響も受けにくく、転倒のリスクも減らせる。

このほかの利点は

 フロントが二輪あるので、ブレーキを掛けたときの安定感が高い。また、これまでのオートバイではカーブの途中で制動力の強い前輪ブレーキを掛けるのは避けるべきなのだが、トリシティではフロント二輪によるグリップ力に加え、独立した3つのブレーキをそれぞれ最適に制御して車輪のロックを抑制するABSも標準搭載しているので、カーブ途中のブレーキ操作でも車体のコントロールがしやすい。さらに、段差などの衝撃を吸収しやすいほか、急な横風にもふらつきにくいという特徴がある。また、これらの安定性能によって、乗り手の疲労感が軽減するという結果も得ている。

主要な顧客層は

 40代を主なターゲットに考えている。販売を開始して5年ほどになるが、首都圏を中心に販売が拡大している。最初のモデルは125ccだったが、2016年から155ccモデルを投入した。この排気量だと高速に乗れるので、ロングツーリングも楽しめる。

若者への訴求は

 トリシティは、これまでバイクに乗ったことのない20代の若者に新鮮な乗り物として受けている。学生の指名買いも多い。過去にはモニターを募集して車両の貸し出しを行うなどプロモーションを展開した。今後も新たなモビリティーとして、男性だけではなく、若い女性への浸透を図っていきたい。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ