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帝人
スーパー大麦「バーリーマックス」

2018.12.17

最新記事腸の奥まで届く食物繊維で身も心も健康に

 健康志向で食事や運動に気を使う人が増え体に栄養を取り込む腸の働きに関心が集まっている。今回の「これは優れモノ」は、腸の奥まで届く食物繊維を多く含んだスーパー大麦を取材した。

バーリーマックス

世界中の研究者が注目

 「腸内環境の改善と、精神面と体の健康の関係性については世界中の研究者が注目しています」と話すのは、帝人ヘルスケア新事業部門の北薗英一さん(46)。北薗さんは入社以来、国内外で先端素材の開発などに従事し、これまでに100件もの特許を出願している。
 帝人は1918年、帝国人造絹絲(じんぞうけんし)としてスタート。絹のような光沢、肌触りを持つ再生繊維、レーヨン(人絹(じんけん))の生産を始め、事業変革を通じて化学繊維、医療、高機能素材などにも分野を広げてきた。単なる化学メーカーではなく、「未来の社会を支える会社」となることを長期ビジョンに掲げている。
   同社の山口県岩国市にある高分子材料研究所で、特殊ポリマーの開発をしていた北薗さんに、東京で医療分野や全く新しい素材の開発をするよう辞令が出たのは約16年前。北薗さんは「再生医療や医薬の分野について、かなり自由に研究させてもらいました」という。「最終的にモノにならなかったと謙遜するが、他社の製品などに活かされている研究成果も少なくない
   2008年にさらなる転機が訪れた。米国シリコンバレーで新しいビジネスの種を見つけろという社命だった。シリコンバレーというと、IT企業の一大集積地を思い浮かべるが、インスリンの治療薬やC型肝炎の薬など、最先端の創薬・メディカル企業も多い。北薗さんが驚いたのは、数多くの企業や研究者が、農業分野でさまざまな取り組みをしていたことだった。
   遺伝子組み換えが不要で、気候変動に強い種子や、食肉牛に飲ませて健康状態を計測する特殊カプセルなど、日本人では思いつかなかったようなさまざまなプロジェクトを目の当たりにした。そして、「いま、米国の研究者らが注目しているのが人体の腸と脳です」 (北薗さん)

善玉菌の餌になる

 腸内には、1000種類以上の細菌がいて、腸壁にお花畑(フローラ)のように並んでいるため、腸内フローラと呼ばれる。このうち善玉菌に栄養が運ばれると、腸内環境が改善され、体全体の健康に役立てられるということが最新の研究で分かってきた。それには、大腸まで分解されずに届く栄養素が求められた。
 そこで、北薗さんらのチームが見つけたのが、オーストラリア原産のスーパー大麦だ。腸で発酵し、善玉菌の餌となる水溶性食物繊維「β-グルカン」や「フルクタン」、難消化性でんぷんと言われる「レジスタントスターチ」が豊富に含まれているという。。
   16年からこのスーパー大麦「バーリーマックス」を用いた食品を発売し、大反響を得た。現在は、さまざまな大手食品メーカーのシリアルやパック米などにも使われている。
   「繊維会社が提供する『食べられる繊維』です。ぜひお試しください」と北薗さんは笑顔でPRする。

interview帝人
ヘルスケア新事業部門 北薗英一氏

体形で菌に変化、肥満防止にもつながる

食品を扱うようになった経緯は

 2011年からシチュー売り上げがダウントレンドに入った。消費者ニーズが私たちの想定と離れていて、これまでのような一方的な提案型マーケティングは通用しないと感じた。2015年からシチューのニーズを探るため「Moreシチューエーションプロジェクト」を立ち上げた。2万人を超す会員で、Web上の企画会議を運営する「Blabo!」(ブラボ)とともに家庭の主婦をプロジェクトのメンバーに加え、新たに商品の方向性を模索した。ご飯にシチューをかける食習慣は、沖縄や東北、北関東では以前からあり、今回の商品の発想のもとにもなった。

米国ではさまざまな研究が行われている

 国家事業として、1990年から最優秀の科学者・研究者を集め、ヒトゲノムの解析プロジェクトを開始。これは2003年に完了したが、このプロジェクトに関わっていた科学者らが次に注目したのが、人体のブラックボックスだった脳と腸だった。企業もこの分野に莫大な投資をし、さまざまな成果を挙げている。

腸の研究で興味深いデータは

 米国では肥満対策が切迫した問題になっている。著名な微生物学者の実験では、マウスに太った人の糞便を与えたら肥りはじめ、反対に痩せた人のものを食べさせたら痩せはじめたそうだ。肥った人と痩せた人では腸に違う菌を持っており、それが解析できれば肥満防止につながると言われている。腸内環境を整えることで、睡眠障害やストレス、さらには脳にもいい働きが期待できるとの研究報告もある。

今後の課題は

 「バーリーマックス」は、シリアルや、コンビニのおにぎり、弁当などにも使われている。薬ではなく食品なので、おいしく食べてもらう方法を食品メーカーと協力し、認知度をさら上げていきたい。1日の摂取目安は12グラムで手のひら程度なので、無理なくとれる。ほかのサプリメントなどで代替するより、安価で済むことも魅力だ。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ