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ハウス
ご飯にかけるシチュー「シチューオンライス」

2018.12.03

最新記事副菜から主菜へ 新たな食べ方提案

 12月は、氷月(ひょうげつ)という異名があるように、日が落ちると氷が降るような寒い夜もある。そんな夜には、体の温まる晩御飯を思い描きながら、家路を急ぐ人も多いのではないか。今回の「これは優れモノ」は、冬の定番料理シチューの新しいメニューを取材した。

シチューオンライス

絶対の方程式に疑問符

 「寒い夜にはあったかいシチュー、という絶対の方程式に疑問符がついたのです」と話すのは、ハウス食品事業戦略本部の田村紘嗣さん(39)。
 同社は1966年にクリームシチューの素の草分けともいえる商品「ハウスシチューミクス」を世に送り出し、シチューをカレーと並ぶ食卓の定番に育て上げた。 しかし、2011年の東日本大震災を境にシチュー商品の売上が下降傾向にあることが分かった。
 当初は、温暖化やプライベートなどの低価格帯商品の影響によるものと考えたが、詳しく調べてみると、カレーのように日常的に購入してくれるリピーターが減っていることが分かった。いつの間にか、「消費者とわたしたちで、食卓ンお中でのシチューに対する意識に開きがでていたのです」と田村さんは指摘する。
 そもそもシチューは、野菜や肉、魚介類などをソースで煮込んだ煮込みの料理を指す。古代ローマの料理書にもさまざまなレシピが残されている。日本はというと、文明開化の明治期に入ってきたという説が有力で、ジャガイモと牛肉のシチューが”おふくろの味”の肉じゃがもから転じたものといわれている。ホワイトシチューが、日本の一般家庭に登場したのは、戦後20年ほどたってからのこと。家庭ではなかなか作れなかったホワイトソースを粉末状のルウの素として、ハウス食品などが発売し、冬の食卓の主役に定着した。

発売直後に大きな反響

 しかし、肉食が中心の西欧ではシチューはメイン料理であるのに対し、そもそも「日本の家庭では主菜ではなく、副菜の”汁もの”として扱われて、別に主菜のおかずを作る家庭も多かった」(田村さん)。このため、震災後の電力不足や倹約による食卓の簡素化を機に、シチュー料理が再度メニューから姿を消していった。デパ地下などの惣菜売場の充実し、平日を中心に家庭で料理を作る頻度が減っていることも背景にある。
 そこで、改めてシチューの食べ方やニーズなどの消費動向を分析すると、クリームシチューをカレーのようにご飯にかけたり、パスタとあえて食べることが多いう結果が出た。
 同社はただちにプロジェクトを立ち上げ、シチューの新しい食べ方として”シチューライス”を提案。2017年から専用ソース「シチューオンライス」を発売すると、驚くほどの反響で、その年のヒット商品に選ばれる成功を収めたという。
 「定番商品でも目先を変えれば新たなニーズを掘り起こせると確信しました」。田村さんは、自社の製品開発力をそうアピールした。

interviewハウス食品
事業戦略本部 田村紘嗣氏

家庭の習慣から着想 定番具材使わずシンプルに

ご飯にシチューという発想はどこから

 2011年からシチュー売り上げがダウントレンドに入った。消費者ニーズが私たちの想定と離れていて、これまでのような一方的な提案型マーケティングは通用しないと感じた。2015年からシチューのニーズを探るため「Moreシチューエーションプロジェクト」を立ち上げた。2万人を超す会員で、Web上の企画会議を運営する「Blabo!」(ブラボ)とともに家庭の主婦をプロジェクトのメンバーに加え、新たに商品の方向性を模索した。ご飯にシチューをかける食習慣は、沖縄や東北、北関東では以前からあり、今回の商品の発想のもとにもなった。

発売後すぐに大ヒット商品に

 発売した2017年8月からの1年間ほどで、約10億円の売り上げを記録した。世間では、『やっと自分の食べ方(シチューがけごはん)にメーカーが気付いた』という反応や、夕食にシチューだけだと罪悪感があったとした主婦からは、『これで堂々と夕食に出せる』というお声ももらった。

開発で苦労した点は

 メニュー課題の探索から商品化には、3年ほどの時間をかけた。普通のシチューよりも粘度を上げて、ややドロッとしたものにして、味もスパイスを効かせた。ただそれだけでは、普通のシチューとの違いが分かりづらい。そこで、シチューの定番具材であるジャガイモ、ニンジンをあえて使わず、メインのお肉とタマネギ、シメジなどの比較的簡便に作れる具材と合わせる提案をした。現在、「チキンフリカッセ風」「ビーフストロガノフ風」「カレークリーム」の3タイプのソースを販売している。

今後の展開は

 カレーライスやハヤシライスに次ぐ、オールシーズンでいつでも楽しめる「シチューライス」という新しい食文化の定着を図りたい。テレビCMやSNSなどで認知度を高めていきたいと考えている。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ