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セコム
あんしん防災シェルター

2018.09.22

最新記事大規模災害から身を守る工夫随所に

 9月は防災月間。豊かな自然と四季に恵まれた日本だが、地震や風災害が発生しやすい島国でもある。今年7月には記録的な集中豪雨が発生し、西日本を中心に200人以上の命が奪われた。今回の「これは優れモノ」は、自然災害から身を守る防災シェルターを取材した。

あんしん防災シェルター

30㌧の荷重に耐え水に浮く

 「当社の被災地での復旧、復興支援活動を通じ、現地の方々の声を元に企画した商品です」と話すのは、セコム企画部の小松原康弘さん(35)。
 2016年に発足した「セコム災害支援プロジェクト」は行政や社会福祉協議会、NPOとともに大規模災害の被災地へのさまざまな支援を行ってきた。その中で被災地では避難したくてもできない人たちが少なからずいることが分かった。
 「プラントや工場では2次災害を防ぐため、最後まで現場に踏みとどまらなくてはいけない方たちがいました」(小松原さん)。他人の財産を預かる金融機関なども避難が遅れがちになるという。
 地震、津波、洪水、土砂崩れといった突然の大災害から身を守る備えとして開発したのが「あんしん防災シェルター」だ。80㌧の荷重に耐えられ、密閉構造の防水性で水に浮く“優れモノ”で、9月上旬から本格販売に乗り出した。
 「30㌧の荷重というのは、木造家屋の2階部分で3軒分の重さに相当し、建屋が崩れてきても耐えられる構造になっています」と、1995年の阪神・淡路大震災を身をもって経験した小松原さんは説明する。都市直下型の阪神・淡路大震災では、4224人が建物の下敷きなどで圧死したり、窒息死したという調査報告もある。

救急セットや食料装備

 一方、2011年の東日本大震災では、ほとんどの人が津波の犠牲になっており、津波や洪水で流された場合も想定。小松原さんは「密閉構造で、水に浮くと自動的にシェルターのハッチが上に向き、脱出しやすい仕組みにしました」と説明する。この技術は、共同開発パートナーである光レジン工業の特許技術を用いた。
 シェルターには大人2人分のスペースがあり、内部から携帯電話やGPS端末を使用できる。オプションで、セコムの位置情報提供システム「ココセコム」を利用すれば、シェルターが流されても位置特定ができ、救助も容易になるという。外装は繊維強化プラスチック(FRP)でオレンジ色の塗装を施し、海上でも発見しやすくしている。
 安全性の向上に加え、救助までの時間の長期化を想定し、シェルター内にはヘルメット、ライフジャケット、救急セット、水、食料、携帯酸素など13のアイテムも装備している。
 セコムは1962年に日本初の警備保障会社としてスタートし、セキュリティーから防災、医療などへとその守備範囲を広げてきた。CSR活動の一環として、同社の技術やノウハウを生かした被災地支援などを積極的に展開している。
 「あんしん防災シェルターは、『社業を通じて社会に貢献する』という企業理念が生んだものです」。小松原さんは、社会的問題の解決につながる商品企画をこれからも続けていきたいと語る。

interviewセコム
企画部 小松原康弘氏

被災者や専門家の意見を元に開発、居住性も考慮

セキュリティー分野とは異なる商品だ

 当社は警備業として創業したが、そこから派生して、家庭の安全や人々の健康といった分野にサービスを拡げ、防災分野でも安否確認などBCP対策支援サービスを提供している。さらに、被災地支援などの実績から、当社の持っている人的・技術的資産をビジネスとして積極活用することで、社会貢献ができると考え、「あんしん防災シェルター」を開発した。

開発にはどのくらいの時間が必要だったか

 1年ほどだ。同種のシェルターは、さまざまなメーカーが作っており、地震や津波が懸念されている地域では、設置が進んでいると聞く。今回の商品は、繊維強化プラスチックの加工で高い技術力を持つ光レジン工業との共同開発で、安全・安心のために両社の持てるノウハウを融合した自信作だ。

開発で苦労した点は

 防災シェルターは安全基準が定められておらず、スペックの決定と商品評価に時間がかかった。被災地支援の関係者や防災専門家の意見を聞きながら、光レジン工業と当社の開発部門で協議し、プロトタイプを製作。防災の展示会などの場でフィードバックを求め、耐久試験をはじめ、さまざまなテストを繰り返した。居住性にも配慮し、大人4人が入ることができるサイズながら、定員を2人にした。内部には低反発素材を貼り、乗っている人への衝撃を緩和するようにした。

今後の商品開発の目標などは

 年間120台程度の受注を目指し、南海トラフ巨大地震の津波浸水想定地域など、災害リスクが高い地域を中心に提案していきたい。「あんしん防災シェルター」の認知度を上げる活動とともに、ユーザーの声を聞き、さらなる改良を検討していきたい。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ