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三菱鉛筆
消せるボールペン「ユニボールR:E」

2018.08.25

最新記事摩擦熱で消え何度でも書き直せる

 8月も残り1週間。読書感想文や日記など、親子で夏休みの宿題の追い込みに入っているご家庭も多いのではないでしょうか。今回の「これは優れモノ」は、最新の筆記具について取材した。

消せるボールペン「ユニボールR:E」

鉛筆除く筆記具は増加傾向

 「少子化で筆記具に対するニーズが変化しています」と、三菱鉛筆商品開発部の諏訪俊通さん(36)は説明する。
 小学校に入学すると、事柄の順序に従って話をしたり、書いたりする国語の授業が始まり、小学校の学習指導要領は、鉛筆などの筆記具の正しい持ち方にも言及している。
 筆記具メーカーは、メインユーザーである児童、生徒を意識した商品開発を行ってきたが、児童、生徒数の減少で、筆記具の代表格だった鉛筆の生産量にも影響が出てきている。
 日本鉛筆工業協同組合のデータでは、1960~70年代に年間10~13億本だった鉛筆の生産量は年々減り、2017年には約1億8000本まで減少した。生産量の変化は特に小学生の数と連動する。
 一方、中学生以上が使う筆記具は鉛筆からボールペンやシャープペンシルに置き換わり、鉛筆を除くと筆記具の生産量はここ10年、増加傾向にあるという。     

「世界に無二のものを」

 三菱鉛筆は1887(明治20)年、東京の内藤新宿(現在の新宿区内藤町)で眞崎鉛筆製造所として創業した。現在の「三菱」は創業者、眞崎仁六の家紋である「三鱗(みつうろこ)」からとったもので、三菱グループとは一切関わりがない。
 眞崎が大量生産に成功した鉛筆は、1901年に当時の逓信省(現総務省)が採用。これを記念し、三菱のマークを03年に商標登録した。三菱財閥よりも10年も前のことだった。
 三菱鉛筆は外国製に劣らない高級鉛筆の代名詞として国内市場に浸透すると、大正に入って世界中に輸出されるようになった。
 1958年には高級鉛筆「uni(ユニ)」を発表し、独特のエビ茶とワインレッドを掛け合わせた色柄の鉛筆は、60年にわたるロングセラー商品として定着した。「ユニ」は「ユニーク」からとったもので、「『世界に無二のもの』をという当時の開発者の心意気を表しています」(諏訪さん)という。
 同社はユニ発売の翌年、ボールペンの製造を開始する。インクから「チップ」と呼ばれるペン先の設計まで徹底した商品開発を行い、さまざまなタイプのポールペンを世に送り出してきた。
 そして、2017年に発売したのが、ノック式のこすって消せるボールペン「ユニボールR:E(0.5ミリ)」。専用の消し具で描線をこすると、摩擦熱で線が消え、鉛筆やシャープペンシルのように何度も書き直しができる“優れモノ”だ。今年6月には極細の0.38ミリの商品も発売した。
 「開発に約2年ほどかけた自信作です。高品質の鉛筆づくりを新商品にも生かしています」
 諏訪さんは、同社のものづくりへのこだわりを語った。

interview三菱鉛筆
商品開発部 諏訪俊通氏

インクから開発し直し完成まで約2年

商品名にあるR:Eの意味は

 「REWRITE(書き直す)」「REPEAT(繰り返す)」などの接頭語「RE」から、消せるボールペンをアピールしている。
 消せるというコンセプトの商品は2002年にも発表したが、書かれた文字のインクを紙の繊維ごと削るものだった。10年に出した「ユニボールR:E」の原型となる商品は、インクに改良を加え、こすった摩擦熱で文字が消えるようになった。ただ、厳密には、消えるのではなく見えなくなるだけで、マイナス10℃まで冷やすと文字が現れた。

消せるボールペンに再び挑戦した

 当時、「ボールペンは文字が消えないもの」という固定概念があり、商品化のニーズは低いと思われていた。しかし、他社が先行投入した摩擦熱で消すタイプの商品需要は高く、当社の研究センターでも技術的に十分対応できることから商品化を判断した。

開発で苦労した点は

 ボールペンには、ペン先をキャップで保護するタイプと、常に外気と触れているノック式がある。ペン先が外気に触れ続けるとインクが乾き、文字が書けなくなる。
 日本で人気のノック式にした「ユニボールR:E」は、インクから新たに開発し直す必要があり、約2年の時間を要した。

ボールペン開発の次の目標は

 ボールペンは、インクに使われている溶剤の違いで大きく水性と油性に分かれる。水性は滑らかな書き味が特徴だが、濡れるとにじんだり、消えたりする。油性は消えにくく、変色しにくいが、力を入れないと文字がかすれたりして書き味に難があるといわれていきた。両者の特性を生かした商品づくりを進めていきたい。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ