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リンテック
自動車用ウインドーフィルム
2018.05.12
最新記事最上級の断熱性能 環境にも優しく
春の陽気に誘われて、休日にドライブという人も多いのではないか。最近では、女性がロングドライブするというのも珍しくなく、自動車関連業界も女性ドライバーを意識した装備やマーケティングを展開している。今回の「これは優れモノ」は、安全で快適な運転をサポートする自動車用ウインドーフィルムを取材した。
春の陽気に誘われて、休日にドライブという人も多いのではないか。最近では、女性がロングドライブするというのも珍しくなく、自動車関連業界も女性ドライバーを意識した装備やマーケティングを展開している。今回の「これは優れモノ」は、安全で快適な運転をサポートする自動車用ウインドーフィルムを取材した。
「海外では、自動車の窓ガラスにフィルムを貼る方が非常に多いです」と話すのは、粘着製品メーカーのリンテック産業工材事業部門の甘田(あまだ)利明さん(55)だ。甘田さんはこの春まで、ウインドーフィルムの調査や研究、施工技能検定試験を行う業界団体である日本ウインドウ・フィルム工業会の理事長も務めていた。
自動車用ウインドーフィルムといえば、濃色やメタリックなどのデザイン性が注目されがち。だが、紫外線カット効果や赤外線カットによる遮熱効果、さらにはガラス破損時に破片の飛散を低減する飛散防止対策効果など優れた機能性も有する。
地震の多い日本国内では、破片の飛散を低減することなどを目的として建物用ウインドーフィルムが普及している。しかし、自動車の窓ガラスにフィルムを貼っている割合は、1割程度という。
道路運送車両法による規制で、フロントガラスや運転席・助手席の側面のガラスにフィルムを貼る場合、視野の確保のために、可視光線透過率と呼ばれる光を通す割合が70%以上必要と規定されている。
「この規制が、ドライバーや一部の民間車検場の間で拡大解釈され、ウインドーフィルムをこれらの箇所に貼るのは違反という間違った認識が広がってしまいました」と、甘田さんは国内での施工率が上がらない理由を説明する。
同社は、2010年に自動車用のウインドーフィルム群のブランド名を「ウインコス オートモーティブフィルム」とし、国内外での販売を強化している。法令基準をクリアした透明タイプもラインアップしており、安全性向上のほか、遮熱効果による車内環境の向上や省エネにも一役買う機能を持たせている。
四方を窓で囲まれた自動車に乗ると、紫外線を多く浴びることになるため、夏場には二の腕まで覆うような手袋をする女性ドライバーも珍しくない。地上に届く2種類の紫外線、UV-AとUV-Bはそれぞれ、しわやたるみ、しみやそばかすの原因になるといわれている。
これに対し、甘田さんは「当社のフィルムは、米国などで採用されている紫外線防止指数(UPF)で最高値の50+を実現しています」と、フィルムを貼ることで紫外線を99%以上カットできると解説する。
また赤外線カットによって、強い日差しによる車内温度の上昇も抑えることができ、同社の実証テストでは、フィルムを貼った場合に最大で13.5度の温度差を記録したという。紫外線や日射熱をカットすることで、ダッシュボードやシートなど車内装備へのダメージも軽減できる。
甘田さんは「夏場のエアコン使用も抑えられ、燃費の向上とCO2削減にも貢献します」と、世界有数の高い技術力で培った同社ウインドーフィルムの有用性を強調する。
産業工材事業部門 ウインドーフィルム営業部 甘田利明 氏
視認性や飛散防止対策、欧米市場でも評価
ウインドーフィルムの施工率が低い理由は
自動車用ウインドーフィルムは、40年近く前から市場に出回っていたとされるが、日本では、車外からの視線をカットする目的やファッション性のために利用する人が多く、ガラスの飛散防止対策や紫外線、赤外線のカットといった機能性がなかなか理解されなかった。また、視認性の確保という安全面から、一定の法規制が設けられ、利用が進まなかったと考えられる。
素人が貼るのは難しい
製品本来の機能を100%発揮するには、正しい施工が重要だ。業界全体としてこのことを啓蒙していくため、1982年に日本ウインドウ・フィルム工業会が設立された。自動車の窓ガラスは曲面なので、施工には確かな知識と技術が要求される。施工技能検定や研修を通じ、人材の育成にも努めている。
海外での需要は
中東やアジア、オセアニアなどの日差しが厳しい地域では、ウインドーフィルムはなくてはならないものだ。紫外線をカットするだけでなく、車内温度の上昇も抑えられるからだ。品質の高さが理解され、当社への引き合いは多い。欧米市場でも、視認性の高さや飛散防止対策効果が高い評価を得ている。海外では、ウインドーフィルムの有用性が理解されており、当社でも市場開拓をさらに推し進め、ビジネス拡大につなげていきたい。日本の場合は、自動車整備業者のようなアフターマーケットでの認知度を上げていく必要がある。
ウインドーフィルムの機能が進化している
建物用ではプライバシー確保のため、見る角度によって透明に見えたりすりガラス状に見えたりするウインドーフィルムを開発している。また、夜景を楽しめる飲食店や店舗のショーウインドー向けに、ガラス面への反射による映り込みを抑えるフィルムも市場投入した。自動車用についても、デザイン性だけでなく多彩な機能を提案していく。