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中村屋
中華まん

2017.12.09

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 今年も残すところ、あとひと月ほど。週末には、そろそろ家族総出で大掃除や新年の準備に入る家庭も多いのではないか。今回の「これは優れモノ」は、忙しい合間の昼食やおやつとして親しまれている中華まんを取材した。

中華まん

パン屋からスタート

 「弊社の中華まんは、中国の包子(パオズ)をヒントに開発したものです」と話すのは、中村屋FF事業部の弘中雅裕さん(51)。大学の工学部出身だが、中村屋入社後は4半世紀にわたって中華まんの開発・製造に携わってきた。
 1901年創業の同社は、東京・本郷でパン屋としてスタートした。日本初となるクリームパンを創案・発売し、その土台を築いた。
 その後、現在の新宿本店のある場所に移り、和菓子や洋菓子の製造・販売を始め、27年にはレストランも開業。今から90年前のその年に、中華まんは誕生した。
 弘中さんによると、「中国伝統の包子は油っぽかったので、創業者の相馬愛蔵、黒光夫妻は、日本人好みのあっさりした味に仕立てて提供した」という。
 同社の資料によると、27年当時、「天下一品志那饅頭」という商品名で、肉入りが6銭、あん入りが4銭で販売されていた。ちなみに、同じ年に開通した日本初の地下鉄(現在の銀座線)の上野ー浅草間の初乗り運賃は10銭だった。
 当時一部の中華料理店でしか食べることができなかった中華まんは、中村屋の中華まんの登場により、庶民にも親しまれるようになった。
 パン屋からスタートした同社の中華まんの最大の特徴は、ふっくらとしたまんじゅうの皮にある。
 開発当時は生地の開発にかなり苦労し、中国の職人を雇って試行錯誤の末に製品化にこぎつけた。その後も「昭和40年代までは。中華まんは全て職人の手で作られていた」(弘中さん)という。
 その後、大量消費時代を迎え、同社は中華まん製造の機械化に取り組む。機械メーカーと協力して、自動的に中華まんを成形する製造技術を確立した。

販路ごとに品質変え

 自動化に成功しても、「素材となる生地作りには最新の注意を払っています」と、弘中さん。独自の発酵技術も強みに、まんじゅうの皮の食感と風味にこだわり続けている。
 近年気を配っているのが、中華まんの「温め方」の変化だ。昔は、蒸し器で蒸かして食べていたが、現在は電子レンジで温めるというのが一般的。蒸し器とレンジでは食感も変わることから、定番のロングセラー商品といえども生地の改良には余念がない。もちろん、時代とともに顧客の好みが変化していることも見逃さない。現在、同社の中華まんは、百貨店や駅ビルなどにある直営店、スーパー、コンビニエンスストアなどさまざまな場所で売られている。
 弘中さんは「販路ごとに使用する具材や生地の食感などは違います。ただ、ふっくらした独特の生地の持ち味は、中村屋の味として全ての商品において大切にしています」と、伝統の味づくりへのこだわりを語った。

interviewFF事業部 弘中雅裕 氏

味を毎年微妙に変え、消費者の好み反映

中華まんは今年で発売90周年を迎えた

 弊社に喫茶部(レストラン)を開業した1927年に、中華まん、純印度カリー、月餅、ボルシチなど、現在も中村屋を代表する商品が生まれた。弊社は創業後50年近く、一店舗主義だったが、戦後の早い時期から時代の流れとともに百貨店に出店し、中村屋の味を広めてきた。中華まんもその主力商品の一つで、おかげさまで、中華まんと言えば中村屋といわれるようになった。

基本的な製法は変わらない

 発売当初のレシミや製造方法などの記録はなく、職人から職人に口伝のような形式で伝わっていたようだ。戦災で社屋や工場が焼失し、戦後に中華まんを再び販売する際には、原材料の調達とともに戦前の味を再現するのに苦労したと聞いている。中華まんの生地にはこだわっていて、中国発祥の「老麺」という発酵種を使った生地を使っている。長時間熟成でうまみを出すのだが、安定して大量生産するのはハードルが高く、試行錯誤して完成させた苦心の作だ。

時代とともに風味や食感を変えている

 消費者の好みは変化しているため、実は中華まんは毎年、味を微妙に変えている。ヘビーユーザーがいるので大きく変えるというのではなく、質的向上を図るというものだ。生地はふっくら、もっちりと、具の肉はジューシーで、あんのほうはとろりとした舌触りを大事にしている。年齢にかかわらず、どなたにもaiされる味を目指している。

販路によって商品が違う

百貨店や駅ビルにある直営店では、中華まん「天成饅」を販売している。自家製酵母を使用した風味豊かな生地と厳選した国産原材料による弊社最高峰の中華まんだ。スーパーやコンビニでは、より手頃な価格で弊社独自の味を提供している。また、今年から家庭で本格中華まんを味わえるチルドタイプを一部店舗で販売している。食事代わりにもなる、手で包んだような風味や食感を楽しめる自信作だ。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ