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象印マホービン
圧力IH炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜」

2017.10.14

最新記事家庭で本格的なかまど炊きご飯

 秋口に入り、スーパーなどで新米入荷ののぼり旗を見かけるようになった。昨今、「米離れ」が言われて久しいが、おいしいごはんを求める人は多い。今回の「これは優れモノ」は、日本古来の技を活かした炊飯器を取材した。

南部鉄器 極め羽釜

構造や材質を徹底分析

 「始めチョロチョロ中ぱっぱ赤子泣いてもふた取るなという、おいしいごはんの炊き方を再現しました」と話すのは、象印の後藤譲さん(45)。後藤さんは、商品企画のリーダーとして、家庭で本格的なかまど炊きごはんが味わえる炊飯器の開発に携わってきた。
 近頃人気の和食店では、昔ながらの羽釜(はがま)とかまどを使って、米の本当のおいしさを売りにしている店も多い。一般家庭にはかまどもないし、お釜で米を炊いたことのある人も少ないから、かまど炊きごはんのおいしさは、なおさら珍重されているのだろう。
 象印は1970年に世界初の「電子ジャー」を発表。炊いたごはんを長時間保温できるとして爆発的なヒット商品となった。同社は、その後炊飯器を発売するなど、調理家電の分野にも注力してきた。
 「家事時間を節約できて、おいしく食べられるための製品づくりが目標です」と後藤さんは、同社の商品開発の姿勢を説明する。 炊飯器の開発では、手間暇をかけずにおいしいごはんを食べられるように、さまざまな創意工夫をしてきた。マイコンやIHの導入で、出来上がり時間や炊き加減に悩むことなく、均質なごはんの味を愉しめるよう利便性の追及に努めてきた。
 「しかし、消費者が望んでいたのは、手間暇のかかるかまど炊きごはんの味だったのです」(後藤さん)。かまどのない現代家庭で同じ味をどう再現するか。これは、ライバルメーカーのどの社も、成功していない高い目標だった。同社では、かまどや羽釜の構造、材質を徹底的に分析し、かまど炊きと同様のふっくらおいしいごはんの作り方を研究した。

現代の技術で再現

 「昔ながらのかまどは、釜の上に載せる重い木ふたや釜の周りの羽根においしく炊ける秘密があることが分かりました」と後藤さん。重い木ふたが釜の中に適度な圧力をかけ、釜の周りの羽根が下からの火を漏れなく受けて、強い火力を釜の中に伝えている。これにより、釜の中のお米が激しくかき回され、ごはんの甘みを引き出すというのだ。
 この仕組みを現代の技術を使って再現したのが、2010年に発売した圧力IH炊飯ジャー「極め羽釜」。翌年には南部鉄器の内釜を採用した「南部鉄器 極め羽釜」を発売した。本来、釜の周りの羽は、かまどにかけるためのストッパーの役割と下からの火を効率よく内部に伝えるためのものだ。「極め羽釜」では、羽を囲む本体部分に電熱線を通して、釜の側面からも加熱する工夫をし、本物と同様の役割を持たせた。
 後藤さんたちはさらに、「2017年6月に発表した新モデルでは、前回炊いたごはんの感想を入力すると、希望の食感に炊飯する機能を強化し、より幅広いニーズに応えられるようになりました」と、毎年進化する利便性を強調した。

interview第一事業部マネージャー 後藤 譲 氏

食感の感触を入力、次回に調整

商品開発のいきさつは

 炊飯器の進化は出尽くしていた感があって、新たなアプローチが必要と感じた。そこでおいしいごはんの定義づけから始めた。ごはんがおいしいという全国の店を探求し、味を確かめるとともにその炊き方などを研究した。そうして、昔ながらのかまどで炊く方法に行きついた。人の手間暇をなくすために機能を強化してきたが、今度は手間暇のかかったごはんを再現するという試みだった。

おいしいご飯の秘密は

 強い火力で釜全体を一気に包み込むことで、米の甘みが引き出せる。そのためには、内釜にも工夫が必要だった。それまでは、高く評価されていた独自開発の「真空かまど釜」を使っていたが、側面からの加熱が出来ないという難があった。そこで内釜の周りに羽をつけて、外釜との間に熱対流を起こさせ、釜全体に熱を行き渡らせる工夫を施した。強い火力も必要なので、現行品には業界最高の高火力1450ワットを装備させた。

他にも工夫をしている

 強い火力でごはんを炊けば、吹きこぼれも出る。この吹きこぼれのねばねば部分に、ごはんの旨みが詰まっている。上ふたに工夫を施し、余分な蒸気は逃がし、おいしさの詰った部分は内部に戻す仕組みを施した。ごはんに対する食感は各家庭で違う。米の産地や季節によっても炊き上がり方が違う。そこで、炊飯器にアンケート機能を持たせた。前回炊いたときの食感の感想を入力すると、次回は炊き加減を調整するというもので、121通りの食感に合わせることができる。

炊飯ジャーの市場動向は

業界の出荷統計では、平成29年は573万台の出荷を見込んでいる。数字的には、ここ3年ほど減少傾向だ。数量的に売れているのは、3万円以下の商品だが、8万円以上の高級機種も近年伸びてきている。国内で生産しているハイエンド機種は、北米や中国、東南アジアでの需要も多いので、強化していきたい。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ