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日立アプライアンス
冷蔵庫「真空チルド」

2017.07.08

最新記事0.8気圧で酸化を抑え、鮮度長持ち

 7月に入り、夏のボーナス商戦の時期を迎えた。ちょっと値の張る耐久消費財などの買い替えを検討している人も多いかもしれない。今回の「これは優れモノ」は、真空技術で食品の鮮度を保つ冷蔵庫を取材した。
 「市販用で真空構造を持つのは弊社の冷蔵庫だけです」と話すのは日立アプライアンス商品戦略本部の南雲博文さん(46)。入社以来、冷蔵庫の設計や企画を担当し、真空構造の冷蔵庫開発にも深く関わってきたベテランだ。

真空チルド

10年使える耐久性も重要

 食品の品質低下の原因の一つとして酸化が挙げられる。これは食品が空気中の酸素と触れることで、風味の劣化が起きる現象。真空パックは、この酸化を防ぐための代表的な保存方法だ。
 冷蔵庫内で真空状態を作れば、酸化による食品の劣化は抑えられ、魚や肉などの鮮度も保たれるはず。この理屈に基づき、同社が真空のチルドルームを持つ冷蔵庫を発売したのは、2007年のこと。以来、この構造の冷蔵庫では他社の追随を許していない。
 南雲さんは「ものの出し入れを繰り返す冷蔵庫内に、真空の空間を作るのは簡単なようで難しいです」と技術的なハードルの高さを説明する。ポンプで空気を外に吸い出せば、真空状態は作れる。
 だが、空気を抜いた空間は気圧が下がるため、周りから押しつぶされないように強固で密閉度の高い構造にしなければならない。一方で、庫内のスペースを広くするために、周りを囲む部材には薄さや軽さも求められる。
一度買い替えたら、10年は使う製品なので耐久性も重要だ。「技術面とコスト面でどう折り合いをつけるかも製品開発のポイントでした」(南雲さん)。
 真空チルドルーム内は、完全な真空ではなく酸素を20%減らした状態の約0.8気圧で、酸化を抑えている。しかも、チルドルームは内部に冷気を送風して冷やす方式ではなく、密閉されたチルドルームの外から冷やす方式を採用している。冷風が食品に直接当たらないため、乾燥を防げる。このため保存食品にラップは不要という。

新モデルは庫内2倍に

 チルドルームの温度は、肉や魚が凍らず鮮度が保てる氷温マイナス1℃と豆腐やチーズなど水分の多い食品に最適な1℃を選択できる。
 さらに、庫内の食品から出るエチレンガスや臭い成分を白金(プラチナ)による触媒で分解し、より多くの炭酸ガスを生成する仕組みを設けた。炭酸ガスは食品の鮮度を長持ちさせる効果があり、食品製造の分野でも幅広く使われている。プラチナ触媒の仕組みは、冷蔵庫の野菜室にも設けられ、野菜をみずみずしい状態で保存できるという。
 2016年8月末から発売した新モデルの真空チルドXGシリーズでは、真空チルドルームを初代のモデルに比べ2倍に広げたほか、冷凍室も3段トレイにすることで利便性を高めた。
 「食品の鮮度も長持ち、大容量でも優れた省エネ性能ということで、販売現場での評判も上々です」と南雲さんは目を細めた。

interview日立アプライアンス 商品戦略本部 南雲博文 氏

真空の度合いを試行錯誤し最適状態発見

開発のいきさつは

 日本の家庭では、生ものを自宅で食べる習慣があり、食材を凍らせずに冷蔵庫で保存するのが一般的です。また、作りかけ、食べかけのものでも新鮮な状態で冷蔵庫保存したいという要望も多くいただいていました。そこで、鮮度が長時間保てる真空チルド方式を考えつきました。

開発には苦労した

 今までになかった方式なので、試行錯誤を繰り返しました。真空にする技術や密閉度を高める部材の接合方法などは、掃除機や洗濯機などで培ってきた製造技術を転用したものもあります。真空といっても完全な真空がよいのか、それとも酸素を一部減らすだけでよいのか、何度も実証試験を繰り返し、最適な状態を見つけ出しました。

売れ筋の大きさは

 400~600リットルの容量のものがボリュームゾーンで、2015年の出荷台数ベースで4割強がこのレンジに当てはまります。実は、少子化や高齢者世帯の増加で、400リットル未満の中・小型が伸びると予測していました。部材の進化により、大型になっても中型と外寸はほとんど変わらずに庫内容量は大きくなり、消費電力も少なくなったためと思われます

海外での販売は

冷蔵庫は、その国の食生活と密接にかかわりがあります。日本では生ものを食べる習慣がありますが、欧米ではほとんどありません。従って、冷蔵と冷凍機能があればよいので、2ドアのタイプが世界的な主流です。 日本の冷蔵庫もガラパゴス化が進んでいるともいえますが、台湾など日本に近い食習慣の国では販売が大変好調です。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ



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