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住友化学
大空間屋外用虫よけ「ストロンテック」

2016.7.23

最新記事振動で薬剤散布 半径3.6メートルのバリア

 夏休みに入り、キャンプ場に出かけたり、家庭菜園で汗を流したりする人も多いのではないか。この時期、屋外の活動で気になるのは虫。今回の「これは優れモノ」は屋外用の虫除け器を取材した。

ストロンテック

 「これまで室内用の殺虫剤や防虫剤はありましたが、大空間屋外用の虫よけがなかったことが開発のきっかけです」と住友化学生活環境事業部の棚橋規雄さん(53)。棚橋さんは大学で昆虫の研究を専攻し、卒業後は長年にわたり農薬や家庭用殺虫剤の営業に携わってきた。
 現在、殺虫剤や農薬などで広く用いられているのは、ピレスロイドという成分だ。除虫菊の中から見つかったもので、1890(明治23)年に「金鳥」の商標で知られる大日本除虫菊が、この成分を用いて世界初の蚊取り線香を発明した。住友化学は天然成分であるピレスロイドを工業的に合成する技術を確立。現在、家庭用ピレスロイド系殺虫剤製造の大手だ。
 「殺虫剤の開発でもっとも重要視されるのが、虫に対する効果性と人などへの安全性です」と棚橋さん。性質的にピレスロイド系の薬剤は、比較的どんな虫にも効きやすい。住友化学では1999年にピレスロイド系の新たな薬剤、メトフルトリンを開発した。低薬量でも効果性の高い薬剤で、多くのメーカーの家庭用殺虫剤に使われている。
 薬剤の量が少なくても、蒸散性が高いため、ベランダや玄関などにつるすタイプの虫よけ製品などにも用いられている。この薬剤を使った大空間屋外用の虫よけとして、2015年4月から発売されたのが、「ストロンテック」だ。この商品は、特にユスリカを防ぐものとした開発された。
 「薬剤によるバリアを作って、虫が嫌がって入ってこないという仕組みをイメージしてください」と棚橋さん。エアゾール製品のように人がいちいち噴霧するのは面倒だし、火や可燃性の圧縮ガスを用いて自動噴霧するのも安全性の観点から除外した。
 開発陣は、火もガスも使わず、熱源も要らないピエゾ技術に着目した。携帯電話のスピーカーやインクジェットプリンタなどに応用されている技術で、電圧をかけることで細かな振動を起こすというもの。
 薬剤の入ったカートリッジの先端からは芯が伸びていて、薬剤がしみこんでいる。芯は、噴霧器の振動個所と接触しており、振動のたびに薬剤が噴霧される仕組みだ。30秒に1回振動して、薬剤を噴霧する。「煙やにおいもなく、20マイクロメートルの細やかな粒子が、半径約3.6メートルという広さをカバーします」と棚橋さんは図を見せながら説明する。
 薬剤の粒子が細かすぎると風に飛ばされ、効果が薄れてしまう。反対に大きくなると薬剤成分が地面に落ちてしまうため、粒子の大きさと噴霧頻度を決めるまで、実証試験には半年ほどの時間をかけたという。

interview住友化学 生活環境事業部 棚橋規雄 氏

父親世代を意識 噴霧技術には時間かけた

発売後1年の売れ行きは

 弊社は典型的なBtoB企業のため一般消費者への販路を持っていない。現在は、ホームセンターやアウトドアスポーツ店などへの働きかけを行いながら、インターネット販売を中心に行っている。商品開発の背景やメカニズムなどの詳細をネット上で公開して、その価値や認知度を高めてきた。1年ほどで認知度が徐々に上がってきたせいか今年に入っての売れ行きは好調だ。

主な販売対象は

 特定の年齢層をターゲットにしているわけではないが、アウトドアやレジャーでの利用を想定している。学齢期の子供のいる父親世代を意識して、機器の色も人気アニメの兵器と同じミリタリーグリーンにしたところ、ネット上で話題になっている。

使用の目安は

 風などの影響にもよるが、半径3.6メートルの広さをカバーする。においも煙もほとんどないので、庭での食事やパーティーでも気にならない。電源も単三のアルカリ電池2本とコンパクトなため、どこでも持ち運びができる。カートリッジ1個で約30時間使用できる。週に一度、4時間くらいの使用で、3カ月ぐらいは持つと考えている。

開発などで困難だった点は

 火やガスなどを使わず、安全に薬剤を噴霧する方法の技術化には時間をかけた。また、屋外での効果性のテストは風が強い場合など時々の環境に左右されるため、何度もを行った。

商品自体に対する自信は

 屋外では風が吹いたりもするので、虫の侵入を完全に防ぐことは保証できないが、通常の使用条件ではその効果を実感できると思う。本製品の効能は、屋外の大空間でユスリカを防ぐというものだ。まったく新しいコンセプトの商品なので、時間をかけて育てていきたいと考えている。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ



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