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パナソニック
筋肉トレーニング機器 「ひざトレーナー」

2016.5.14

最新記事宇宙飛行士の筋力低下防止研究から開発

 新緑の季節、さわやかな緑に囲まれてハイキングやウォーキングを楽しむ人も多い。今回の「これは優れモノ」は、軽い散歩でも脚力を鍛えられるトレーニング機器を取材した。

筋肉トレーニング機器 「ひざトレーナー」

JAXAからの依頼

 微小の重力空間にいる宇宙飛行士の筋力低下を防ぐのが、製品開発の発端です」とパナソニックビューティ・リビング事業部の三井雅之さん(49)。
 久留米大学医学部の志波直人教授らは、動作している筋肉に電気刺激を与えることで、筋力アップを図れる”ハイブリットトレーニング機器”の研究を長年にわたり行っている。
 2014年には宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で国際宇宙ステーションでの4週間にわたる実証実験も行い、宇宙滞在時の筋肉の衰えの予防を示唆する結果が得られた。 ”ハイブリットトレーニング機器”の開発に向けて志波教授が、パナソニックの研究所に回路設計を依頼したことが、2015年8月発売の「ひざトレーナー」の開発につながった。
 パナソニックの健康器具開発の歴史は、1935年のハンディ・マッサージャーにさかのぼるというから、この分野への強い思い入れを感じさせる。

転倒予防学会の推奨品に

 血圧計とか活動量計といった健康器具はニーズもありますが、コモディティー化も早い。簡単にまねされず、ニーズも高い器具の開発が求められています」(三井さん)。三井さんによると全国には、変形性膝関節症の方が推定で2500万人いる。運動したくても、ひざの痛みから歩くこともできず、結果として筋力低下という悪循環に陥るケースも多いという。整形外科医の世界では、ひざ周りの筋肉を鍛えることで、ひざの痛みを緩和できることは常識となっている。
 筋肉は、疲労と回復を繰り返すことで筋繊維が太くなり、強くなる。「ひざトレーナー」の仕組みは、太ももの前側の大腿四頭筋と後側のハムストリングスに電極を配置して、歩くときに伸び縮みするそれら前後の筋肉に、負荷となる電気刺激をかけて、疲労の度合いを高くし、筋力アップを図るというものだ。
 パナソニックが、60~70代の男女15人を対象に3カ月間の実証テストを行ったところ、被験者の筋力が、平均で大腿四頭筋が41.6%、ハムストリングスが37.3%それぞれアップしたという。
 使用方法は、歩行やスクワットなどの軽い運動をする際に、両脚の太ももに電極パッドが内蔵されたサポーターを巻くだけ。電極パッドは、低周波治療器に用いられているものと同じ構造だが、ボディモーションセンサーで微細な動きを感知、歩行の時は、足が着地する瞬間に電気が流れるようになっている。歩き方は個体差もあるため、さまざまなテストによりアルゴリズム(算法)を開発、どんな歩き方でも正しく電気が流れるようにした。
 今年4月には、電化製品としてはじめて、日本転倒予防学界の推奨品にも選ばれた。

interviewパナソニック ビューティ・リビング事業部 三井雅之氏

地域密着型のショップ中心に展開

発売後1年の売れ行きは

 14万円を超える高額商品で、大掛かりなCMやキャンペーンも行っていないが、6000台以上の販売を記録している。うれしい誤算だが、販売方法を地域密着型のパナソニックショップ中心に展開したことが正解だったと考えている。弊社の研修を受講した店舗だけでの販売で、顧客に対してきめ細かなアドバイスができるのが強みだ。

主な販売対象は

 60代をターゲットにしている。ただ、この世代は、まだ自分の筋力に自信を持っているようで、実売では70代が中心になっている。筋肉の強化が、将来の障害予防につながることなどを訴えて、中高年層にも本品の認知度を上げていきたい。

使用の目安は

 1日30分、週3回のウォーキングを3カ月続けると、筋力の強さが4割アップする試験結果がでている。基本的には歩行などで負荷をかける運動が必要になるが、座って使用するだけで筋力の維持ができるモードもある。

開発で困難だった点は

 シニアの脚の形はさまざまなため、どんな形にもフィットするサポーターが必要で、電極を正しい位置に当てるというのも大変だった。また、歩き方もすり足の人がいたりするので、アルゴリズムの算出には時間をかけた。電気刺激の強弱も、50段階に分けることで個体差や運動量の違いにも対応した。試作品だけでも15パターンを製作した。

次の開発目標は

 今回とは違う部位の筋力トレーニング機器の開発を検討している。これからも、高齢化という現実の中で、総合電機メーカーとして、人々が健康で健やかな生活をおくるための機器の開発に取り組んでいきたいと考えている。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ
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