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サカタのタネ
「袋で育てるはじめてセット」

2016.4.9

最新記事家庭菜園 キッチン脇で気軽に

 春本番を迎えて、緑の中の散策やガーデニングには、最適のシーズンになった。植物を育てることが、レクリエーションやストレス解消にもなることから、郊外で市民農園を借りる人も多い。今回の「これは優れモノ」は、初心者でも気軽に始められる家庭菜園キットを取材した。

袋で育てるはじめてセット

土の処分に困る都心部

 種苗会社「サカタのタネ」は、欧米で園芸や種苗の基礎を学んできた坂田武雄が1913(大正2)年に横浜で坂田農園として創業。苗木の輸出を皮切りに、様々な品種の花や野菜のタネを創り出してきた。
 庶民にはなかなか手の届かなかったメロンも品種改良により、作りやすく、安価なタネを市場に投入。1977(昭和52)年に発売した「アンデスメロン」は40年近くにわたり、愛され続けている。商品名のアンデスは、「安心です」の略で南米のアンデス山脈とは全く関係がない。
 「日本国内では、中高年を中心にガーデニングや家庭菜園が人気ですが、若年層にも愛好者のすそ野を広げていきたい」とサカタのタネ小売商品統括部の廣瀬健一さん(43)。
 食の安全へのこだわりから家庭菜園を始める人も多いが、土や肥料の選定、種まきや水やりのタイミングなど初心者にはハードルが高い。しかも、郊外で庭のある家ならまだしも、都心のマンション暮らしには容易ではない。「都心部で家庭菜園をされている方からは、土の処分に困るという声をよく聞きます」(廣瀬さん)。タネをまいてからの収穫時期が分からず、途中で諦めてしまう人も少なくないという。

水やりと日光だけで

 そこで、2015年11月から栽培容器付きの「袋で育てるはじめてセット」の発売を始めた。「1〜2回で食べきれる量の野菜をキッチン脇で、水やりと日光だけで育てられるというのが、開発のコンセプトでした」(廣瀬さん)。
 タバコのパッケージ大の箱(縦横9.3センチ、厚さ2.3センチ)には、圧縮した乾燥培養土と栽培容器(直径10.5センチ、高さ9センチ)となる箱状のポリ袋が封入されている。乾燥培養土は、ココヤシ繊維が主成分で臭いもない。同封のポリ袋に入れ、400ccのぬるま湯を注ぐと2〜3分程度で、10センチ四方、高さ9センチ程度に膨らみ、タネをまける状態になる。
 一回使いきりのタネ(別売り)をまき、日当たりの良い所におき、適宜水やりをすると、20〜50日超で収穫できるという。イタリア料理で必須のルッコラやバジルなどは、ひと月半程度で収穫の時期を迎える。培養土は、タネまき2回分ぐらい使うことができる。居住の自治体にもよるが、使用後は乾燥させてポリ袋の栽培容器とともに一般ごみとして捨てられる。
 狭いスペースで手間もかからず、タネとセットで500円程度という価格設定。これなら初心者でも気軽に家庭菜園を楽しめそうだ。

interviewサカタのタネ 小売商品統括部・廣瀬健一氏

忙しい若い人にも楽しさを

開発のきっかけは

 年齢にかかわらず、家庭菜園やガーデニングに興味を持つ人は多いが、実際に行っている人となると50代以降の中高年に集中している。育児や仕事などで忙しい若い層にも、家庭菜園の楽しさを気軽に味わってもらいたいというのが出発点だ。

開発で苦労した点は

 タネを一回分の使いきりに分包する点だ。簡単なようだが、発芽率を勘案し、均等に一回で収穫できる適切なタネの量を算定するのは難しかった。包装方法にしても、ホームセンターなどのレジ横に置いてもらうため、コンパクトなものに工夫した。

タネの開発にかかる年月は

通常10年程度はかかる。長いものになると20年近くかかるものもざらだ。気候やその土地に適した品種で、病気に強く、育てやすくて、均等に発芽するということが求められる。無論、野菜の場合はおいしいということが大前提だ。国内5カ所、海外は米・仏など8カ国10か所で研究開発を行っている。また日本国内では、お客様相談室も運営し、生産者・愛好家からの問い合わせなどにも対応している。

このセットの海外での販売予定は

 国内での販売を中心に考えている。気候や国によって好まれる野菜の種類が違う。土地の広い米国では裏庭で立派な家庭菜園ができてしまうのでこのようなキットはうけない。日本国内での新たなマーケットづくりを担う商品という位置づけだ。

どのような販売方法を

 現在は、ホームセンターやネット販売を中心に行っている。商品の特徴を活かして、学校教材や料理雑誌の付録などに使ってもらうことで、一般に広げていくことも検討している。タネの開発同様、長期的な視野でマーケティングしていくつもりだ。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ
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