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セコム
「バーチャル警備システム」

2019.06.17

最新記事複数言語にも対応 人手不足の救世主に

 2020年東京五輪の開催まで残すところ1年となった。都市部の再開発で新たなビルが次々と建築され、街並みの変化も激しい。今回の「これは優れモノ」はオフィスビルなどの新たな警備システムを取材した。

バーチャル警備システム

サービス業と研究両立

 「当社はサービス業ですが、自社で製品の研究開発も手掛けている稀有な会社です」と話すのはセコム オープンイノベーション推進担当の沙魚川久史(はぜかわ・ひさし)さん(42)。同社のイノベーションを推進するリーダーで、東京理科大学の客員准教授も務める科学研究のエキスパートだ。
  1964年の最初の東京五輪は、戦後日本の復興を世界に印象付けた。その警備の一翼を担ったのが、日本初の警備保障会社として発足した日本警備保障(現セコム)だった。
 同社は、創業から4年後の1966年に業務の機械化にいち早く踏み切った。自社でオンライン安全システム「SPアラーム」を開発し、サービスを開始した。
  これは現在、大手の警備会社やビル管理会社などが採用している24時間遠隔監視システムの原型ともいえるモデル。警備先のビルに防犯・防災センサーを取り付け、異常があれば通信回線で中央のセンターに知らせ、警備員がすぐに駆けつけるというという仕組みだ。
 その後も、銀行に現金護送サービスを提供するために独自の現金護送車を開発するなど、サービス提供のために自ら機器やシステム作りまで行うという戦略で、成長軌道を描いた。
 ビジネス分野を中心に展開してきた同社だったが、1981年に日本初の家庭用安全システム「マイアラーム」(現セコム・ホームセキュリティ)を発売する。この商品は、イメージキャラクターの長嶋茂雄氏によるCM、「セコム、してますか?」で全国に広まった。 

企業などと共同開発推進

 同社が提供するサービスには日本初の冠がつくものが多い。その中でも、一般の人が街中のビルや駅でよく見かけるのが、AED(自動体外式除細動器)だ。機器自体は、同社が開発したものではないが、機器のレンタルサービスを日本で初めて手掛け、消耗品を定期的に交換し常に使用できる状態を保つビジネスモデルを創り上げた。心肺停止状態の人に電気ショックを与え蘇生させるというもので、同社サービスの導入件数は累計20万件を突破し、救命事例は約2400件に上る。
 同社は、セキュリティー分野の専門研究所と、研究を基に製品化を目指す開発センター、さらには製品製造子会社を持っている。こうした垂直統合型のビジネスモデルで競争力を高めてきた。
 「私たちはこれまでのやり方に消してこだわりません。技術革新のスピードが速まっているなか、多様な課題と技術を融合するオープンイノベーションを進めています。」と沙魚川さんは2015年以降、積極的に取り組んでいる企業・大学との共同開発について説明する。
 今年4月に発表した「バーチャル警備システム」もその一つ。AGC、ディー・エヌ・エー(DeNA)、NTTドコモと共同で開発した世界初の人工知能(AI)活用の警備・受付業務システムで、2020年の発売を目指している。「人手不足時代の救世主となりうるシステムです」と沙魚川さんは自信をのぞかせた。

interviewセコム オープンイノベーション推進担当リーダー 
沙魚川 久史氏

仮想的存在で自然なコミュニケーションを

開発の背景は

 日本は生産年齢人口が減り続け、深刻な人手不足に直面している。中でも警備業全体では有効求人倍率が約9倍に達している。一方で、オフィスビルや大型施設などでの警備需要は伸び続けている。当社が培ってきた「オンライン・セキュリティシステム」だけではなく、多くの来訪者が行き交う有人施設の警備においては人による案内などの顧客対応が求められる。そこで今回開発したのが、世界初の人工知能(AI)を搭載したバーチャル警備員が有人施設の監視・受付業務を行うというものだ。

具体的にはどういうものか

 高反射率のミラーディスプレイに等身大のバーチャル警備員の3Dキャラクターを表示する。この警備員は、人間と同じような所作をする。例えば、目の前に小さな子供がやってくれば、しゃがんで目線を合わせてあいさつをしたり、来訪者に敬礼し、用件を聞いたりもする。来訪者から話しかけられるとAIによって音声や顔や持ち物などを認識し、キャラクターが実際に語りかけるような合成音声で対応する。もちろん、急病人が発生したなどの緊急時には、施設内の人間がいる監視卓に通報し、常駐警備員が対応する。

キャラクターではなく人間の映像でもよかったのではないか

 これからセコム本社ビルで価値検証と運用検証を進めるが、現実の人間の映像だと、コミュニケーションがぎこちない場合に、かえって異質さが強調される可能性がある。キャラクターの方が、仮想的な存在としてコミュニケーションが活性化し、訪問客が自然と話しかけることができると考えている。女性と男性のキャラクターを用意し、声優の声を参考にした合成音声エンジンを用いている。特殊なミラーディスプレーによって、映りこむ現実空間と表示されるキャラクター像とが調和する実物感のある3D画像が実現した。今後、英語など複数言語にも対応できるようにする。また、海外展開も視野に入れている。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ