137

キッコーマン
「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」

2021.06.21

最新記事家庭用の定番 和食に色合いと風味

 コロナ禍で家で食事をする機会が増えた人も多い。出来合いのものではなく、栄養のバランスに配慮した和風の家庭料理が見直されている。今回の「これは優れモノ」は、和食に欠かせない調味料しょうゆを取材した。

生しょうゆ

江戸から「こいくち」普及

 「しょうゆの味は、時代とともに変化してきました」と話すのは、キッコーマン食品プロダクト・マネジャー室しょうゆ・みりんグループマネジャーの井上美香さん。
 しょうゆのルーツは古代中国の「醤(ひしお)」までさかのぼる。獣肉などを塩漬けにし、自然発酵したペースト状の塩辛い調味料の一種だったとされる。日本には大豆を原料とした発酵食品として伝わり、今日のしょうゆや味噌となったという説が有力だ。その醤油が一般に普及したのは、16世紀の室町時代末期のころと推定される(渡辺実著:『日本食生活史』)。
 井上さんによると、現代の日本で生産量の8割を占める「こいくちしょうゆ」が生まれたのは、江戸時代という。17世紀、徳川幕府によって巨大都市へと変貌を遂げた江戸では、数多くの労働者を呼び込むこととなった。
  江戸時代初期、しょうゆは主に関西地方で生産されたものが江戸に運ばれた。いわゆる「下りしょうゆ」は、色が淡く、旨みも薄いと推測されている。これは、江戸の労働者にとっては物足りないもので、千葉・野田や銚子の醸造家らが、濃厚でキレの良いこいくちしょうゆを生み出したというのだ。
  「うなぎ、そば、天ぷら、江戸前の握りずしなど江戸の食文化の発達と共に、こいくちしょうゆは広く社会に浸透し、やがて全国に広がったと思われます」(井上さん)
  西洋人にとって、コショウなどのスパイスが料理に欠かせないものであるように、しょうゆは日本人にとって万能の調味料だ。その原料は、大豆・小麦・食塩のみで、製造方法も、江戸時代とそれほど変わっていない。
  蒸した大豆と炒って砕いた小麦に麹菌を合わせてしょうゆ麹をつくる。これに食塩水を混ぜたものを「もろみ」といい、これを半年以上かけて発酵・熟成させ、布を使って搾る。搾ったものは生揚げしょうゆといい、これを加熱して色・味・香りをととのえる「火入れ」という工程を経て、しょうゆはできあがる。

最終工程で火入れせず

 しょうゆはJAS法で5種類に分類される。調理用・卓上調味料と幅広いシーンで活用される「こいくち」の他、野菜の煮物や吸物、うどんつゆなどにマッチする「うすくち」、中部地方を中心に愛用され、煎餅やあられなどのつけ焼きなどにも使われる「たまり」、濃厚な味わいで主に刺身や鮨に用いられる「さいしこみ」、色が淡く、吸い物や茶わん蒸しなどに用いられたりする「しろ」などだ。
 また、製造方法で、最終工程の火入れを行わない「生しょうゆ」というものもある。加熱をしていないので、鮮やかな色合いとまろやかな風味となる。
 キッコーマンでは2010年に「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」という商品名で発売し、家庭用しょうゆの定番商品にまで成長した。「これからも人々のニーズに合ったしょうゆづくりを目指します」と井上さんは、強調した。

interview キッコーマ食品
プロダクト・マネジャー室 
しょうゆ・みりんグループマネジャー    井上 美香 氏

数十種類から厳選 出荷累計5億本を突破

「生しょうゆ」を発売した背景は

 近年、鮮度の良い食材が手軽に手に入るようになり、しょうゆにも素材を引き立てる鮮やかな色合いやまろやかな旨みが求められるようになった。そこで目をつけたのが、火入れをしない生しょうゆだった。「しぼりたて生しょうゆ」は、生ならではの鮮やかな色、おだやかな香り、さらりとした旨みを楽しめるように、数十種類のしょうゆの中から厳選した。

技術的に困難だった点などは

 生しょうゆでは、火入れによって微生物を殺菌するのではなく、ろ過することで微生物を取り除く必要がある。そのため発酵・熟成の際の細かな温度管理や、フィルターで微生物を除去する技術を確立した。また、繊細で品質が変化しやすい生しょうゆの鮮度を保つため、しょうゆが空気に触れない密封容器を約10年かけて開発し、一般に流通させることに成功した。

密封容器の仕組みは

 2010年の発売当時はパウチ状の容器だったが、残量が少なくなると容器が倒れるなどしたため、翌年から現在のボトル状の容器に改良した。ボトルの中にしょうゆを詰めた内袋を入れた二重構造で、キャップの形状を工夫し、しょうゆが入った内袋に空気が入らない仕組み。ライフスタイルの変化などで、家庭でのしょうゆを使い切るまでの時間が長くなったが、この容器の開発で、鮮度の低下を解決することとなった。 この密封ボトル入りのしょうゆ「いつでも新鮮」シリーズは、今ではアイテムが約20種類に広がり、今年1月、同シリーズの出荷本数は、累計5億本を突破した。

人々の嗜好も変化している

 家庭用のしょうゆは、1Lのペットボトルで販売するのが主流だったが、顧客の用途に合わせるために、密封ボトルでは、200mlの卓上サイズから、620mlの調理用サイズまで展開している。しょうゆの種類も、従来からのこいくちしょうゆの他、生しょうゆ、減塩しょうゆなど、多品種になった。今後も顧客ニーズに合わせた商品の開発に努めていきたい。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ