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サンクゼール
リンゴのお酒「シードル」

2019.11.25

最新記事創業の原点 地元産を伝統手法で

 今年も残すところあとひと月あまり。クリスマスや年末年始など、親しい友人や家族と食卓を囲んで楽しいひと時を過ごす予定の人も多いのではないか。今回の「これは優れモノ」は信州の自然が生んだお酒を取材した。
 「会社の始まりはペンション経営でした」と話すのは、長野県の食品製造会社サンクゼールで広報を担当する山川誠一さん(44)。信州大学で化学を専攻し、部品メーカーなどに勤めた後、デザイナーとして同社に入社した。

シードル

夫人のジャム好評

 サンクゼールが食品会社として踏み出すきっかけは、長野県産のリンゴを使った自家製ジャムだった。創業者の久世良三氏が斑尾高原で経営するペンションで、農家から譲り受けた規格外のりんごを使った、まゆみ夫人手作りのジャムを宿泊客に出したところ好評で、本格製造に乗り出した。
  ロットが増えたため、製造委託先にレシピを提供して、創業者は自ら販路の拡大にあたった。
 「当初は委託先で製造していたのですが、ジャム作りの様子を見たいとの声が増えたので、自社工場を建設することになりました」(山川さん)。この時、創業者が描いたのは、かつて旅したフランス・ノルマンディーで感動した豊かな田舎の世界。村の中心に教会やレストランがあり、農場の中には小さな醸造所がある。そこで生きる人々は誇り高く成熟した文化を創り出していた。
 こうした思いを胸に、最初のジャム作りから10年後の1988年に自社工場が完成した。レストランや商品の販売店も設け、ブドウ畑とワイン醸造所を運営するに至った。

ワインコンテスト入賞

 ワイン醸造を始めるときは、「経験がないということで、酒造免許がなかなか下りず苦労したとのことです」と山川さん。ワイン製造から10年目に、国際的なワインコンテストで入賞するなど、ワイナリーとしての知名度を上げていった。
 一方で、創業のきっかけとなった長野県産のりんごを使ったお酒、シードル造りも始めた。
 日本語ではリンゴ酒、英語ではサイダーと呼ばれるシードルの起源は紀元前のローマ帝国時代にまでさかのぼると言われている。ローマ帝国の一部であった、フランス北西部のノルマンディーやブルターニュ地方は、リンゴ栽培に適していて、ここでシードル文化が育まれたという説が有力だ。
 収穫後のりんごを圧搾機で搾り、その果汁をタンクで一次発酵させるとりんごのお酒ができる。さらにもう一度発酵させる二次発酵を経て、きめ細かい泡を造りだすとシードルは完成する。アルコール度数は4~7パーセントで、リンゴの糖分だけでアルコールと炭酸ガスができる。炭酸と酸味はどんな料理にも合い、ポリフェノール、ビタミン、ミネラルなどが豊富で女性やヘルシー志向の人に人気だ。
 サンクゼールの造るシードルは、地元長野県飯綱町産のリンゴを使い、手間暇のかかる伝統手法である瓶内二次発酵で製造している。
 「今年のジャパンシードルアワードに当社の5品が入賞しました」と山川さんは、にこやかに語った。

interview 広報担当
山川 誠一 氏

つくり手の顔見えるこだわりの逸品

地元に根差した企業だ

 東京出身の創業者がほれ込んだ長野で始めた事業だ。ペンション経営者の時に始めた大切な家族や顧客のための愛情たっぷりのジャム作りが原点だ。その精神は現在も変わらず、「サンクゼール」と「久世福商店」の2ブランドの店舗に引き継がれている。両ブランドで全国約150店舗を展開しているが、自社商品だけでなく他社の商品も扱っている。どの商品も、つくり手の顔が見えるこだわりの逸品と自負している。

どんな商品展開をしている

 サンクゼールはジャムやワイン、シードルのほか、パスタソースやドレッシングなどメーカーズブランドとして自社製品をはじめとした洋食文化のものを中心としている。久世福商店では和のセレクトショップとして、各地のこだわりの商品を販売している。「健康で安全なおいしい食品を提供する」が社是で、これらには妥協を許さない姿勢を貫いている。

ノウハウはどのように

 ワイン造りなどは、海外の専門家を招聘して、基礎を教わった。また、米カリフォルニアのナパバレーなどにもスタッフを派遣し、研鑽を積んできた。長野は、標高もあり、寒暖差によって酸味と甘味のあるブドウができる。ナパバレーに負けないいいワインが出来ると思う。日本にはきめ細かいモノ造りの伝統があり、西洋伝統のワイン造りでも引けをとらないと考えている。

今後の展開などは

 2年前に米国オレゴン州にある食品製造工場を取得した。ジャムやパスタソース、スムージーなどは日本向けのみならず、現地向けにも製造している。米国市場での浸透を図るために、日本国内での晩酌奈ブランド作りに努めていきたい。お酒に関しても、ワインのみならず、ジャパンブランドのブランデーを広めていく。海外から蒸溜器を手に入れ、アップルブランデーの製造を開始したので、今後順次、提供していく予定だ。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ