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津嘉山酒造所
琉球泡盛「國華」

2020.01.20

最新記事何も足さず、何も引かず、伝統の製法守る

 文化、文明のある所には酒があるという学者もいる。文化の多様性が、異なる酒を生んだともいえる。現代の日本ほど様々な酒を造っている国も珍しいのではないか。今回の「これは優れモノ」は、日本古来の蒸留酒、泡盛を取材した。

國華

日本最古の蒸留酒

 「酒造りでは余計な手は加えないこと」ときっぱりと話すのは、沖縄県名護市の泡盛製造専門の酒蔵、津嘉山酒造所の秋村英和さん(48)。千葉県出身で大学卒業後、東京でサラリーマンをしていた時、仕事の息抜きで訪れた沖縄で泡盛造りに魅了された。36歳の時に、津嘉山酒造所に入り、酒造りの基本を学んだ。以来何も足さず、何も引かず、昔ながらの製法を守り、伝統の味を作り続けている。
 泡盛は日本最古の蒸留酒と言われている。ひと口に蒸留酒と言ってもさまざまだ。ウイスキー、焼酎、ウォッカやブランデー、テキーラなど原料や製造方法の違いによって味も香りも全く異なる酒となる。酒の元になるアルコールは、糖類が発酵することで作られる。旧石器時代の人類が、腐った果物を食べると酔うことに気づいたのがきっかけだと言われている。
 果汁や植物液、穀物や動物の乳などは、糖類を多く含んでおり、アルコールの原料として最適だ。天然発酵させた場合にアルコールの濃度は18~19度に達するが、それ以上高くはならない。アルコールの発生によって発酵が止まってしまうからだ。そこで考えられたのが、蒸留法だ。紀元前4世紀の古代ギリシャの哲人、アリストテレスの著作の中に、その方法が記されているものもある。
 近代の蒸留技術の源は、7世紀以降のアラビアの医師や化学者らによるものと推測されている。その方法は、大鍋に入れた水を沸騰させて、その蒸気を綿に吸わせて、別の器の上でその綿を絞るというものだった。

原料はインディカ米

 水とアルコールでは沸点が違う。水は100℃だがアルコールは78.3℃のため、加熱するとアルコールが先に蒸発する。この時に集めた蒸気を冷やして、液体にすることで濃度の高いアルコールとなる。飲用に適したアルコールを抽出するには、78~82℃でゆっくりと蒸留すると良いと言われている。
 できたアルコールを水で薄めることで度数の違った酒を造ることが出来る。ちなみに泡盛や焼酎は蒸留によってつくられるが、日本酒や紹興酒、ビールは蒸留しないのでアルコール度数は低めとなる。
 泡盛の原料は日本酒と同じく米だが、粘り気のある日本米(ジャポニカ種)ではなく、硬質でパサパサしたインディカ種(細長い系統のお米)のタイ米を使う。
 タイ米に黒麹を混ぜて米麹にする。それに水と酵母を加えてもろみにし、発酵させる。これを蒸留させて出来るのが泡盛だ。蒸留し、液体となった時に泡が盛り上がるようだったので、泡盛と言われるようになった。
 昔ながらの製法で作った津嘉山酒造所の自信作が、國華(こっか)。「先代からの伝統製法を守った雑味の無い味が特徴です」と秋村さんはほほ笑んだ。

interview 津嘉山酒造所
秋村 英和 氏

機械をばらして徹底洗浄 雑菌の混入防ぐ

酒造りでこだわっていることは

 甕や瓶に入れて3年以上寝かして熟成させた、古酒(クース)が珍重されているようだが、その製造にはこだわらない。その代わりに、昔ながらの製法を守ることと、工場を清潔に保つことの2点には、気を付けている。とくに清掃は、酒造りと同じくらいの時間をかけている。作るたびに、機械をすべてばらして、ほぼ1日かけて徹底的に洗浄する。空気中の黴菌がもろみに混入すると酒に雑味が出てしまい、売り物にならない。役所の衛生検査でも、とてもきれいな工場ですねとお褒めの言葉を頂くほどだ。

酒造りの難しい点は

 米を均質に蒸すのが難しい。上手に蒸さないと米に麹菌がいいあんばいで付かない。また、麹作りも微妙な作業が必要だ。蒸した米に種麹を混ぜて、一晩寝かせてコウジカビを繁殖させるのだが、この時の温度管理が難しい。外気温も影響するし、庫内の温度センサーだけではムラがあるので、経験値による見定めが必要となる。仕込みは月に2回のペースで行っている。1回の仕込みにかかる期間は、真夏で3週間、冬場で一月ほどだ。

酒造所は戦前からの建物だ

 沖縄戦でも焼け残った。米軍が占領後に広い建物が必要だったので、残したのではないか。おかげで、戦前からの酒造所としては沖縄県で唯一生き残った。建物は大正時代の創業当時からのもので、2009年に国の重要文化財に指定されている。あちこち修繕が大変だが、沖縄の歴史を色濃く残す建物と伝統の味を守っていきたいと考えている。

泡盛の美味しい飲み方などは

 作り手としては気軽に飲んで欲しい。水割り、ストレートなどどんな呑み方でも味わえる。その昔は、鯖缶の汁で割って呑む方法が人気だったそうだ。國華は県外では入手困難だと思うので、沖縄に来たときにぜひ試していただきたい。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ