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新型コロナウイルス感染症対策
〜IPM研究室 環境微生物学の研究者の立場から〜
第12回:季節の変わり目にすべき新型コロナウイルス対策(1)
~風邪症候群に罹らないように、最善の注意をしましょう!~

 新型コロナウイルスを終息させる手段は、「①集団免疫を獲得すること」「②ワクチンが開発されて使用できるようになること」であると本コラムで何度か述べてきました。そして、コラム9では「ヒトが持っている高度な免疫システム」について解説しました。読者の皆様は、既にご存知のことと思いますが、免疫学の世界的権威である順天堂大学医学部(免疫学講座)の奥村康・特任教授は、「日本はすでに、免疫保有者が国民の一定割合に達して収束に向かう『集団免疫』状態に達しており、リスクの高い高齢者施設や病院以外では感染拡大防止対策は不要だ」と記者会見されました。一緒に発表された京都大学の上久保靖彦・特定教授が発表された論文から鑑みても秋季から冬季にかけて第1波を超えるような感染者数(死亡者数)の増加は無いと考えて良いでしょう。勿論、異論を唱える研究者もいますが、従来から言われている「集団免疫獲得の一般論」から少しも出ていません。

 国民にとって大事な情報にも関わらず、『集団免疫獲得』に関して、テレビの報道番組ではほとんど取り上げられることもなく、相も変わらず「PCR検査陽性者=擬陽性も含む」を「感染者数」と称し、80%以上が軽症(普通の風邪症候群の症状で回復)であることについて正しく伝えようともしないテレビの報道姿勢に対して、多くの国民が疑問符を感じ始めているのではないでしょうか。
 今回のコラムと次回コラムの2回に渡って、「新型コロナウイルス感染症」の現状を正しく捉え、その上で取り組むべき具体策について解説します。


【風邪に罹った時のことを思い出して、同じことをしない】
 風邪症候群は“Cold”、インフルエンザは“Flu”で全く別の疾病であることは周知の事実かと思いますが、表16に「風邪症候群」と「インフルエンザ(季節型)」の違いについて示します。また、表17に「新型コロナウイルス感染症」の症状の経過について示します。比較してみると、それぞれの特徴が良く解ると思います。ただし、初期症状は良く似ていて、検査をしなければ診断できないようです。

 コラム11で解説した通り、風邪症候群の病原体であるコロナウイルスは4種(229E, NL63, HKU1, OC43)で、これにSARS、MERS、COVID-19(SAES-CoV-2)の3種を加えた7種のコロナウイルスが知られています。「風邪症候群」には、誰もが一度は罹患した経験があると思いますが、特に、季節の変わり目(10月)の寒暖差に身体がついていけなくなって風邪を引いてしまったという経験をされた方も多いのではないでしょうか? また、「朝晩の寒暖差が激しいため、公共交通機関の車内の温度と外気の温度差を肌で感じて、思わずクシャミをしたこと」も誰しもが思い当たるのではないかと思います。

 少し回りくどい説明になってしまいましたが、秋季~冬季にかけて各自が先ずすべきことは「過去に、どのようなシチュエーション(situation)で風邪を引いたのか?!」その時のことを良く思い出して、同じことをしないようにすることです。筆者自身のことを思い出してみると、「深酒をして帰宅し、風呂にも入らず、布団もかけずに寝てしまい、翌朝、喉の痛み・咳・微熱で起き上がった」時のシチュエーションが頭に浮かびます。
 風邪症候群に罹らないように注意すること。至極当然のことですが、「新型コロナウイルス感染症」と「インフルエンザ」の予防にも通ずることだと思います。男性は、女性よりも季節の変わり目のファッションに疎いので、晴天だと何も考えずにクールビズのまま出勤しがちです。すると、日没後の急激な気温の低下が思わぬ落とし穴となります。必ずジャケットを持って家から出ることを忘れないようにしましょう。

表16:風邪症候群とインフルエンザの違い

表17:新型コロナウイルス感染症の症状の経過

【インフルエンザワクチン等予防接種の勧め】
 インフルエンザ(季節型)には、毎年1万人以上が罹患し、死亡者数は2017年(2,569人)2018年(3,325人)2019年(3,225人)となっており、新型コロナウイルス感染症の約2倍です(9月30日現在の新型コロナウイルス感染症死亡者数:1,567人。厚生労働省のインフルエンザの月別データを見ると、2019年1月にはインフルエンザで1,685人が亡くなっており、1か月で新型コロナウイルス感染症による現時点での死亡者数を超えています。この数値は、1日平均の死亡者数が54人となる計算で、危惧すべき感染者数であることは間違いありません。直接的・間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡者数を推計する「超過死亡概念」から観ると、インフルエンザによる年間死亡者数の推計は、世界で約25~50万人日本で約1万人と推計されています。

 また、厚生労働省によると、肺炎に罹患して亡くなる人の割合は、<第1位:悪性新生物(がん)28.7%、第2位:心疾患15.2%>に次ぐ第3位(9.4%)となっています。肺炎は世界的に見ても、死亡率の高い疾病です。海外の肺炎で亡くなる年代は乳幼児・児童と若年者に多く、2015年には肺炎が5歳未満の子供の死因の15%を占め、世界中で92万人の子供が肺炎で死亡しています。しかし、日本における肺炎は、高齢者の死亡原因として認知されているように思います。高齢者に多い理由のひとつには喫煙率の高さが関係しているようです。喫煙率は女性より男性が高く、15年ほど前には男性の約5割が喫煙をしていました。65歳以上の市中肺炎で入院した患者における原因微生物は、第1位が肺炎球菌(30.3%)、2位のインフルエンザ菌(7.5%)を大きく上回っています。

 表18にワクチンで予防できる疾病について示します。新型コロナウイルス感染症が流行中の今季は、例年以上にインフルエンザワクチンの需要が高まっており、厚生労働省は以下のように公報を出しています。公報に沿って、なるべく早めにインフルエンザの予防接種を受けることをお勧めします。


表18:ワクチンで予防できる疾病(VPD:Vaccine Preventable Disease)

『今年は過去5年で最大量(最大約6,300万人分)のワクチンを供給予定ですが、より必要とされている方に、 確実に届くように、ご協力をお願いします。
○ 原則として、
①予防接種法に基づく定期接種対象者(65 歳以上の方等)の方々でインフルエンザワクチンの接種を希望される方は10 月1日(木)から(※)接種を行い、それ以外の方は、10 月26 日(月)まで接種をお待ちいただくようお願いします。
(※)自治体によってはワクチンの接種開始時期が異なり得ますので、ご注意ください。
○ 10 月26 日(月)以降は、
特に、②医療従事者、65 歳未満の基礎疾患を有する方、妊婦、乳幼児(生後6 ヶ月以上)~小学校低学年(2年生)の方々で、インフルエンザワクチンの接種を希望される方に対して、接種が可能となります。
○ なお、これら以外の方々についても、10 月26 日(月)以降は接種をお待ちいただく必要はありません。』 

 前述の通り、肺炎球菌ワクチンの接種については、該当する小児と高齢者は、本年10月1日改定の『異なる種類のワクチンを接種する際の3つのルール』(参考文献「厚生労働省ホームページ:2020年10月1日から異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔のルールが一部変更されます」を参照)を良く読み、早めに予防接種を受けることをお勧めします。

 コロナ禍の中、一般の方々の「ワクチン」に対する意識が高まりつつありますが、各自が今一度「ワクチン接種」の意義について考えてみることが賢明でしょう。


(文章責任:川上 裕司)

[参考文献]
奥村 康(2020)健康常識はウソだらけ コロナにも負けない免疫力アップ,pp.206,ワック株式会社.
厚生労働省ホームページ:季節性インフルエンザワクチン接種時期ご協力のお願い
厚生労働省ホームページ:2020年10月1日から異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔のルールが一部変更されます。
大和田 潔(2020年8月6日)現役医師「これからは『コロナは風邪』と割り切る視点も必要だ」"元気な人"の入院で現場は疲弊

Kamikubo Y. and Takahashi A. (2020) Epidemiological Tools that Predict Partial Herd Immunity to SARS Coronavirus 2.
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.25.20043679.this version posted
March 27, 2020.

岡田幹治(2020年9月5日)日本で新型コロナ対策はもう不要?「日本は集団免疫を獲得」説の中身
岡田幹治(2020年9月10日)新型コロナ感染で、日本はすでに「集団免疫状態」にあるという説の根拠

上久保靖彦・小川榮太郎 (2020/9/27) ここまでわかった新型コロナ(新書),pp.216,ワック.
本間 真二郎(2020)感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫,pp.240,講談社ビーシー/講談社.
西日本新聞(2020年9月29日)終息のシナリオは?弱毒化してる? 識者に聞くコロナの最新情報~ウイルス学が専門の柳雄介九州大教授に聞く


(2020年9月30日)


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