食品料理研究室
2004年度の企画概要
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新聞掲載用レシピ制作『阿木燿子の ほんのりきぶん』
ライブビストロも経営する女優・作詞家の阿木燿子さんが、お得意の酒の肴を教えてくれました。お酒にまつわる楽しいエピソードもお楽しみに。
新聞掲載用レシピ制作
 
12/31

地味な食材も一工夫で高級に

 誰にでもひとつやふたつ、食わず嫌いがある。かつて私は、タン塩が駄目だった。
 人間の味覚というのは勝手なもので、同じ牛肉でも、ヒレやロースなら美味(おい)しそうだと感じるが、タンと聞くと食欲が失(う)せたりする。
 忘れもしない。私が初めてタン塩を食べたのは、東京・下北沢の焼き肉屋さんだ。今は亡き(俳優の)松田優作さんがごちそうして下さった。
 この時は主人(ミュージシャンの宇崎竜童さん)も一緒で、彼にとってもこれがタン塩の初体験になった。
 オーダーをする際、尻込みをする私たちに、例の低音で、優作さんがこうおっしゃった。
 「まァ、宇崎さん、阿木さん、騙(だま)されたと思って食べてみて下さい。きっと病みつきになりますよ」
 その言葉に嘘(うそ)はなかった。想像していたのとは異なり、牛舌はあっさりしていた。レモンを掛けると、何枚でも食べられるそうだ。
 優作さんのおかげで、私たち夫婦はタン塩が大好物になった。
 また人には、子供のころは嫌いでも、大人になるに従って、好きになる食べ物もある。
 えてして子供は、分かりやすい味を好む。ケーキのようにただ甘いとか、カレーのように辛いとか、単調な味に惹(ひ)かれる傾向がある。見た目にも大きく左右され、外見がパッとしないと、手を付けてくれない。
 その点、身欠きニシンは不利である。ルックス的には生活に草臥(くたび)れた中高年のようで、あまりに地味だ。
 でも、一旦(いったん)、火を通してじっくり煮込めば、この通り。高級感溢(あふ)れる一品に。おまけに八角を入れたので、エキゾチックな味に仕上がった。これぞまさしく大人の味覚。
 人間、何事も食わず嫌いはもったいない。大人にならなければ分からない味があることを思えば、この先の人生にも希望が持てる。(文・調理 あきようこ=作詞家)

身欠きニシンと大根のエスニック煮

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