食品料理研究室
2004年度の企画概要
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新聞掲載用レシピ制作『阿木燿子の ほんのりきぶん』
ライブビストロも経営する女優・作詞家の阿木燿子さんが、お得意の酒の肴を教えてくれました。お酒にまつわる楽しいエピソードもお楽しみに。
新聞掲載用レシピ制作
 
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手間暇かけ、コトコト煮込んで

 私は煮物を作る時、時間をかけて、ガスの弱火でコトコト煮るのが常だ。
 圧力鍋や電子レンジを使えば早いのは分かっているが、あえてその方法は取らずにいる。
 私のイメージでは、煮物は編物に似ている。一目一目、気長に編み針を使い、編んでゆく感じである。そんな風に時間をかけると、煮物がただの料理ではなく、作品のように思えてくるから面白い。
 とくにお豆がふっくら煮えた時などは、器に移してからしばらく、うっとり眺めていることもあるくらいだ。その後、口に運んでみて美味(おい)しいと感じると、やったァ、と叫びたくなる。
 そういえばある正月。男友達のために黒豆を作ったことがあった。彼は独身。お正月なのに、おせち料理を食べられないのは気の毒だと思い、家に招いたのだ。
 その時、彼の希望で黒豆を煮ることにした。錆(さ)びた釘を入れて煮ること一昼夜。前の晩、水に浸した時から数えると三日がかりだ。
 芸術的に仕上がったとニンマリしていたら、彼から電話が入った。急用ができて、行けないと言う。
 私は思わず、電話口で大声を出した。
 「せっかく黒豆を煮たのに、来ないなら、絶交だからね」
 主人(ミュージッシャンの宇崎竜童さん)が横で笑っていた。私のその剣幕(けんまく)に驚いてか、彼は慌てて駆けつけてきた。そして黒豆に箸(はし)をつけ、美味しい、と言ってくれた。
 同じようなことがあったら、今回の〈大根の一本煮〉も“絶交”と叫ぶに違いない。まさに私にしてみれば作品。手間暇かけた分、思い入れも深い。
 それにしても、忙しい時ほど、時間をかけて何かを煮たくなるのはなぜだろう。それは、あのコトコトという音がくせ者で、魔法のように、心を穏やかにしてくれるからに違いない。(文・調理 あき・ようこ=作詞家)

大根の一本煮

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