食品料理研究室
2004年度の企画概要
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新聞掲載用レシピ制作『阿木燿子の ほんのりきぶん』
ライブビストロも経営する女優・作詞家の阿木燿子さんが、お得意の酒の肴を教えてくれました。お酒にまつわる楽しいエピソードもお楽しみに。
新聞掲載用レシピ制作
 
10/8

記憶を呼び起こす季節の味

 物事は単純に善悪で括(くく)れるものではないが、私の中で良いのか悪いのか、判然としない事象がある。それは、食材における季節感の喪失だ。
 今は一年中、スーパーマーケットの野菜売り場にはキュウリやトマトが並べられている。若い人なら何の不思議もないだろうが、それを見るたびに、私は違和感を覚える。
 私の子供のころには、この二つは代表的な夏野菜であった。八百屋の店先に、赤く熟したトマトを見掛けると、あー、今年ももうすぐ、ギラギラ太陽が輝く季節がやって来るな、と胸が踊った。おやつ代わりにキュウリをかじると、独特な青臭さが口の中に広がり、夏休みの楽しい計画が心をよぎった。
 果物も同様で、その時々の季節にしか食べられない物がほとんどだった。だから、その記憶はさまざまな思い出や習慣と絡みついている。中でも私が女だからだろうか、着る物との関係が深い。
 苺(いちご)は半袖のセーターが肌に心地良いころだったし、桃は木綿のブラウスに着替え、髪をポニーテールに縛って、軽やかな足取りで散歩したくなる季節だった。
 ところが今は大抵の物は一年中、手に入る。料理大好き人間としては有り難いが、ノスタルジックに考えると、夏の象徴としてトマトやキュウリが輝いていた、あのころが懐かしい。
 しかし、昨今でも季節限定に近い野菜や果物がない訳ではない。流通の問題なのか、保存方法のせいなのか分からないが、比較的、その季節にしか出回らない種類もある。無花果(いちじく)もそんな果物のひとつだろう。
 無花果の熟れたあの感じは、熟女そのものだね、と言ったのは名立たるプレイボーイのM氏。
 だったら、それに加えるのは、苦味が効いたアロエと菊の花が良いかも知れない。人生のほろ苦さを実感する人向きの一品。(文・調理 あき・ようこ=作詞家)

無花果の花

※こちらの原稿はサンプルとして掲載しております。この原稿を無断で雑誌等に転載することは禁じられております。使用を御希望される方は当研究所までご連絡ください。

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