(40)微生物と治療薬

 巷ではインフルエンザとノロウイルス感染症が流行していますが、様々な感染症の原因となる「ウイルス」、「細菌」、「菌類=真菌=カビ」について、一般の方々に誤解を生むような表現が使われているように思います。微生物の種類の違いは、私たちが感染し、疾病として顕在化したときに意味を持ちます。そこで、今回は微生物とは何かについて少し解説します。


 インフルエンザウイルス(図 赤)やノロウイルスなどのウイルスは、とても小さく、20〜200ナノメートル=ナノ(1ナノは1ミリの百万分の一)です。多くの人が感染する風邪もウイルス感染によって引き起こされます。ウイルスは粒子が小さいため飛散しやすく、ウイルス性の感染症は流行しやすい特徴があります。
 ウイルスはヒトの細胞に寄生してヒトの遺伝子を利用して増殖するため、有効な薬剤を作ることが難しく、抗インフルエンザ薬など特定のウイルスのみをターゲットとした抗ウイルス薬や病原ウイルスを無毒化したいくつかのワクチンがあるだけです。



 我々が風邪をひいた時に医師が処方する抗生物質は、感染したウイルスを不活化するものではありません。二次的に鼻水や痰を引き起こす細菌の増殖を抑えるための薬です。
 大腸菌(図 青)やサルモネラ菌、乳酸菌、などの細菌の仲間は多細胞の動植物と異なり、1つの細胞で生きている単細胞生物です。多くの細菌は0.5〜5ミクロン(1ミクロンは1mmの千分の一)で、PM2.5と同じくらいの大きさの微生物です。細菌が原因となる感染症は最も多くの種類があります。
 ヒトと細菌は全く異なる進化をしてきたため、抗生物質で大きな悪影響を出さずに体内の細菌だけを狙うことができます。細菌の細胞壁を壊す働きのタイプやタンパク質の合成を阻害するタイプなど100種類前後が実用化されています。


 ミカンに生えるアオカビ(図 緑)や、お風呂の目地に生えるクロカビ、パン酵母、水虫菌(白癬菌)などは菌類です。菌類は菌糸と胞子でできており、胞子の大きさは2〜12ミクロンで、肉眼では見えませんが。胞子が発芽、伸長して大量繁殖したものが目に見える集落となります。また、菌類は多細胞生物である人や動物に近い生物です。そのため、体内の菌類だけに効果を発揮する薬剤を作ることが難しく、実用化されている抗菌真菌薬は10種類前後です。細菌やウイルスの様に致死性の大規模感染は非常にまれですが、アレルギーや発がん性のカビ毒など、喘息など治りにくい症状を引き起こします。


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(2017.01.13更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は2月10日(金)を予定しています。

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室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】