(1)赤い水あかの正体は?

 数日前まできれいだったシンクや洗面台などの水回りに、いつの間にか赤色やピンク色をした水あかが発生してしまうことはありませんか? これは汚れではなく、赤色酵母と呼ばれる微生物で、カビやキノコと同じ菌類です。赤色酵母は、学名ロドトルラ(Rhodotorula )属と言い複数種類がいますが、一般住宅では特に「ロドトルラ・ムシラギノーサ;R. mucilaginosa 」が見られます。

 よく発生する場所は、常に水分が付着しているシャンプーボトル、せっけん箱、風呂おけ、食器乾燥かごの水受け皿などです。水道の蛇口周辺や冷蔵庫内の製氷用水のタンク、加湿器などに繁殖しているのに気がつかずに使っていることもあります(写真)。住環境のあらゆる場所に存在し、「住まいの常在菌」と言えます。


写真 1: 水あか(赤色酵母)の発生、学名「ロドトルラ・ムシラギノーサ」

 赤色酵母を顕微鏡で見てみると楕円形で、髪の毛の断面の20分の1(短径4×長径10ミクロン)くらいの大きさです。増える前は小さすぎるため肉眼で見ることはできませんが、純培養して増殖すると紅色の集落を作ります。赤く見えるのは、増殖の過程で赤い色素であるカロテノイドを産生するためです(写真)。

写真 : 赤色酵母を顕微鏡で見る。純培養して増殖すると紅色の集落を作る。

 ほかの菌類に比べ増殖のスピードが早いのが特徴で、クロカビやアオカビが集落を作るまでには最低5〜7日かかるのに対し、赤色酵母は2〜3日で集落を作ります。「掃除したばかりなのに…」という場所に赤い水あかができてしまうのはそのためなのです。

 すぐにスポンジなどで擦れば落ちますが、放置していると色素がシリコンやプラスチックの細かな傷に入り込み、シミになってしまうことがあるので注意が必要です。


 赤色酵母が健康被害を及ぼすことはまれですが、免疫力の低下した入院患者の体内にカテーテルを通じて入り込み、感染症を引き起こした事例が知られています。
 赤色酵母が良く発生する場所は、①水分②温度(20〜30度)③皮脂や食物などの栄養分―がそろっており、健康被害を及ぼす他の悪玉菌が好む環境と言えます。このため、こまめな掃除が必要な環境かどうかを判断する指標になります。


 赤色酵母の繁殖予防には、水分の除去が一番です。ため水を作らず、シンクや洗面台の水滴はそのままにしないで拭き取るようにしましょう。また、風呂や食器用の洗剤は酵母を殺菌することができません。赤色酵母が発生してしまったら、消毒用エタノールか塩素系カビ取り剤を使って殺菌してからキッチンペーパーや布で拭き取りましょう。


【関連キーワード】 赤色酵母(Rhodotorula, R. mucilaginosa



(2015.7.10更新 エフシージー総合研究所 IPM研究室)



産経新聞掲載記事『微に入り細に入り』

次回の更新は7月24日(金)を予定しています。

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室内環境の有害物質を調査し、対策を研究・ご提案します。特に「室内環境中で健康被害を及ぼすダニ・微小昆虫類・カビなどの研究」を主たる仕事としています。研究や調査のご依頼がある場合は、お気軽にお問い合わせください。【IPM研究室はこちら】