(11)商業洗濯の種類と効果

 まだまだ汗ばむ陽気が続き、スーツなど水洗いできない衣類にとっては悩ましい季節です。クリーニングには“ドライクリーニング”や“ウエットクリーニング”などいろいろなサービスがありますが、何が違うのでしょうか? 第11回は“クリーニングの種類と用途”をご紹介したいと思います。

●ドライクリーニング(非水系洗浄)
 ドライクリーニングでは水洗いではなく、有機溶剤により油溶性汚れを溶かすことで落としており、水溶性汚れは落としにくいという欠点があります。ウール(毛)やシルク(絹)などの水洗い不可の衣類に用いられる形態や風合い変化の少ない洗浄方法です。

図1 ドライクリーニングでの汚れの除去

 溶剤には、主に石油系溶剤と塩素系溶剤(パークロロエチレン)が使われます。炭化水素混合物で沸点150℃から210℃の石油系溶剤は、洗浄力が緩やかで衣類への影響が少ないため、デリケートな衣類の洗浄に適しています。これに対し、塩素系溶剤(パークロロエチレン)は、高い洗浄効果を発揮しますが、衣類損傷が大きく、特別管理物質のため、安全に使用できるよう規制されています。

●家庭洗濯とは異なる作用「逆ミセル」

 家庭洗濯で使われる洗剤の主成分は界面活性剤です。界面活性剤は、水になじみやすい性質(親水基)と油になじみやすい性質(親油基)をあわせもち、ある一定以上の濃度になると親水基を外側、親油基を内側に向けて分子同士が集まります。この集合体を「ミセル」といいます。ミセルは油溶性汚れを取り込み、水中に溶解して除去する作用があり、洗浄効果に大きく影響します。

図2 界面活性剤の構造とミセル


 ドライクリーニングでも多少の水溶性汚れを落とせる工夫はされており、有機溶剤の他に界面活性剤と少量の水を含んだ特殊な洗浄液が使われます。この洗浄液に水溶性汚れが溶け込むことで汚れが落ちるため、水分量が多いほど汚れは落としやすくなります。しかし、溶解できる水分量には限界があり、各クリーニング業者は繊維への影響を考慮しながら扱っています。この時、界面活性剤は、水洗いの時と向きが異なる“逆ミセル”を形成し、溶剤中に分散します。

 

図3 ドライクリーニングの原理と洗濯表示


●ランドリーとウエットクリーニング(水系洗浄)
 ドライクリーニングと違う水洗いによる洗浄方法の一つが「ランドリー」と呼ばれる手法。洗浄液の主成分として界面活性剤を用い、Yシャツなどの水洗いできる衣類を石けんや合成洗剤により洗浄します。洗浄温度が高く(約60℃前後)、アルカリ剤や漂白剤などの添加物や洗濯機による高い機械力が加わるため、家庭洗濯では落とせない汚れを落とし、白く仕上げます。また、作業工程に殺菌工程が入ることもあります。しかし、その分、衣類にかかる負担も大きいため、デリケートな衣類には不向きです。

●水溶性に効果を発揮「ウエットクリーニング」
 ランドリーと比べて機械力や洗濯温度が低く、デリケートな衣類に用いられるのが「ウエットクリーニング」と呼ばれる手法です。衣類への負担を軽減し、風合いを最重視しながらもドライクリーニングと同等の仕上がりが得られるよう洗濯から脱水まで特殊な技術が使われています。そのため、水洗い処理により油溶性汚れだけでなく、汗などの水溶性汚れにも効果を発揮します。改訂された洗濯表示記号に新しく追加され、クリーニング業者側にも正しい知識が求められることになります。

図4 ウエットクリーニングにおける特殊機器と洗濯表示

●ドライクリーニングやウエットクリーニングに向かない衣類も
 ゴム製品、レザー、スエードなどは、溶剤に溶けてしまうのでドライクリーニングはできません。また、水溶性汚れがつきやすい綿や麻などのセルロース繊維では、一度とれた汚れが再び付着する再汚染の恐れがあります。また、ウエットクリーニングといえども毛皮、皮革製品、フェルト製の帽子など不向きなものもあります。

トラブルを未然に防ぎ、大事な衣類を守るためにもクリーニング業者に任せるだけでなく、自分自身が正しい知識をもつことが大切です。


(2017.09.15)

生活科学研究室