フジテレビ商品研究所

商品研究レポート

面ファスナー 

接着力とその耐久性



面ファスナー



 ワンタッチで簡単に止めたり外したりできる面ファスナーは、ホームソーイングにも活躍する便利グッズ。手芸用品売場などにはさまざまな種類が販売されていまが、手軽に使える反面、接着力や耐久性が気になります。そこで、面ファスナーについて、接着力に違いがあるのか、表面にゴミが付いた場合、新品時に比べてどれくらい接着力が低下するかを調べてみました。


評価品

 評価品は、一般的なオス・メスのタイプ(A、B、C)、オスがマッシュルーム形状の(D)、オスとメスの区別がない(E、F)の6種類です。仕様とオス・メスの拡大画像、オス・メスのタイプ別イメージを表1にまとめます。



表1:評価品一覧




 それぞれの評価品の特徴を拡大画像と手触りで比較すると以下の通りです。


評価品の特徴





試験方法

1)接着力試験
 日本工業規格(JIS L3416面ファスナ)に準拠して、引張せん断強さとはく離強さを測定しました。方法は以下の通りで、試験は各5回以上行い、外れ値を除く5回の平均値を新品時の接着力としました。

【 試験片の作製 】
 各評価品の長さは20㎝。引張せん断強さの試験片は、オス・メスの端5㎝を互い違いに重ね、2㎏のローラーを2往復させて試験片としました。はく離強さの試験片は、オス・メス20㎝の評価品をぴったり重ね合わせた状態で端5㎝だけに2㎏のローラーで2往復させて試験片としました。

❶ 引張せん断強さ (図1)
 試験片を滑り方向に引張試験機で30㎝/minの速度で引っ張り、外れたときの最大引張せん断荷重を測定し、引張せん断強さを以下の式で算出しました。

引張せん断強さ算出式



❷ はく離強さ (図2)
 剥がし方向に剥がす時のはく離荷重を引張せん断強さと同様の試験条件で測定し、以下の式からはく離強さを算出しました。

はく離強さ算出式






測定風景






2)接着力の耐久性試験
 接着力が使用の繰り返しで低下するのか、以下の条件で作製した評価品の引張せん断強さとはく離強さを測定し、新品時の接着力と比較しました。

❶ 繊維ゴミの強制付着
 着用による糸くず等のゴミが付着した場合を想定して、オス・メスそれぞれの表面に綿タオルを置き、500gの重りを50往復擦りつけて試験片を作製しました。

❷ 繰り返し洗濯
 綿タオルに評価品のオス・メスをそれぞれ縫い付け、頻繁に洗濯した場合を想定して、ドラム式洗濯乾燥機の全自動モードで洗濯(洗い→すすぎ→脱水→乾燥)を30サイクル行い、試験片を作製しました。洗濯条件は、被洗物1.5㎏、水温40℃としました。






試験結果

 試験結果を表2にまとめます。


表2 接着力試験結果



1)接着力
 引張せん断強さ(図3)は、Dが他の評価品に大差をつけて外れにくいという結果でした。次に外れにくいのはAとE、次いでC、F、Bが同程度に外れにくいという結果でした。はく離強さ(図4)では、D>A>E>B>F>Cの順でした。
 両評価でDが一番強かった理由として、D以外のオスのように一般的なフック型では、フックが伸びきった時点でメスが外れてしまうのに対し、Dのマッシュルーム型の「かさ」は変形しにくい形状であるため、容易にメスが外れないこと、さらにDはメスの密度も高いため、オスが数多く引っ掛かりやすくなっていることが考えられます。
 次に成績の良かったA、Eは、オスが太いために変形しにくく、また、フックのカギ部が長く、メスのループが抜けにくいことからB、C、Fよりも強い接着力となったと考えます。




図3 新品時の引張せん断強さ



図4 新品時のはく離強さ





2)接着力の耐久性
 新品時の接着力を100とした場合の、繊維ゴミを強制付着させた際のはく離強さ(図5)および繰り返し洗濯後の接着力(図6)を示します。数値が100に近いほど接着力の低下が少ないという目安になります。

❶ 繊維ゴミ付着による影響
 最も低下したのはDで、新品時より30%近くも低下してしまいました。このDは新品時には一番はく離強さが強かった製品です。表2の表面画像からも分かるようにDの試験片表面には繊維ゴミが隙間なくびっしり付着している状態で、繊維ゴミがマッシュルームの「かさ」を埋没させ、メス面に引っ掛かりにくくなってしまったためだと思われます。

 Dに次いで、オス・メス混在のE、Fがそれぞれ16%、17%と、10%以上の低下を示しました。表2の表面画像からは繊維ゴミの付着量が少なく見えますが、これはオスにしか繊維ゴミが付着しないためです。しかし、オス・メスが混在しているシートにいったん繊維ゴミが付着してしまうと、オス・メスの引っ掛かりの機会が少なくなり、はく離強さがより低下したようです。

 A、B、Cの一般タイプでははく離強さの低下はありませんでした。繊維ゴミはかなり多く付着しているように見えますが、オスのフック部は繊維ゴミよりも上に出ているためメスの引っ掛かりやすさには影響しなかったと考えられます。



図5 新品時を100とした場合のゴミ付着時のはく離強さ



❷ 繰り返し洗濯による影響
 繰り返し洗濯でも、Dの接着力の低下が顕著でした。特にはく離強さに関しては40%程度という大きな低下が見られました。洗濯による摩耗や乾燥による熱のせいで基布から垂直に立っていたオスが横に傾いてしまったことが、垂直方向に引っ張る はく離強さでは大きな接着力低下の要因となったと考えられます。また、繊維ゴミがマッシュルームの「かさ」を覆ってしまっていたことも大きく影響しいているようです。

 オス・メスが混在しているE、Fも先の❶ 繊維ゴミ付着の影響と同様、繰り返し洗濯による接着力の低下が見られました。洗濯による形状の変化と、オスへの繊維ゴミの付着による接着力への影響は、オスとメスが別々のタイプのものより、混在しているものの方がオス・メスの引っ掛かり具合をより少なくさせ、接着力を低下させたと考えます。

 A、B、Cの一般タイプでは接着力の低下は少ない傾向でした。洗濯処理をすると規則正しく配列されていたオスに若干の変形や乱れが生じますが、それでも多くのフックが繊維ゴミの上に出ているため接着力の大きな低下はありませんでした。なお、Cについてはオスの変形や乱れがほとんどなく、はく離強さの低下はありませんでした。



図6 新品時を100とした場合の洗濯後の接着力





まとめ


 強い接着力が必要で、かつ取り外しや洗濯をほとんどしない場合にはD、頻繁に洗濯する場合では接着力の低下が少ないA、B、Cがおすすめです。E、Fは他の生地素材を傷めにくく、糸くずやゴミが付きにくいので外観が気になる服飾などの用途に選ぶとよいでしょう。

 表面に糸くずのようなゴミが付いたとき、一般タイプのA、B、Cは接着力の低下は少ないため気にする必要はありませんが、D、E、Fタイプでは歯ブラシなどでやさしくブラッシングして取り除きましょう。洗濯する際は、洗濯ゴミが付かないように面ファスナーをしっかりと閉じた状態にして洗うこと、また、長時間の乾燥は、しないようにすることでオス面の変形や乱れを防ぎ、接着力が維持できます。単純に接着力が強いものを選ぶのではなく、目的に応じたタイプの面ファスナーを選び、オス面が傷まないような取り扱いをすることが大切です。

(2016.07.19 生活科学研究室)

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