フジテレビ商品研究所

今までの研究レポート

貝みそ汁

貝の冷凍保存

春は貝がおいしくなる季節。スーパーの鮮魚コーナーでは一皿の量が増えたり、ゴールデンウイーク前には潮干狩りシーズンがスタートするなど、一度に調理しきれず、保存しなければならない場面も多くなる。
インターネットを検索すると、「冷凍すると貝のうま味が増える」という情報が多数、見受けられる。そこで、家庭の冷凍庫で保存した貝のうま味について調べた。

研究目的

うま味成分の測定と官能評価を通し、冷凍によって起こる貝のうま味の増減を明らかにする。

実験方法

《貝と冷凍冷蔵庫》

アサリ、シジミ いずれも愛知県産
冷凍冷蔵庫 三菱ノンフロン冷凍冷蔵庫(MR-S40NF-W形)

《冷凍方法》
購入した貝を、砂出しはせずに殻をよく洗って水気をふく。
ジッパー付きの冷凍用ポリ袋に入れ、冷凍庫で1ヶ月間保存する。

《成分の測定方法》
購入直後の貝と冷凍1ヶ月後の貝について、貝の代表的なうま味成分のコハク酸、遊離アラニン、遊離グルタミン酸と、健康効果が期待されている成分としてアサリの遊離タウリン、シジミのオルニチンの含有量測定を分析機関に委託した。
分析方法は表1の通りである。

表1:分析方法

《官能評価用試料の調整方法》
冷凍アサリは室温に1時間、冷凍シジミは室温に30分放置してから調理した。殻についた霜は取り除いた。
冷凍品、新規購入品ともに、貝約300gに水800gを加え、中火で13分加熱した。途中、アクを網で丁寧に取り除いた。冷凍アサリは口が開きにくかったため、加熱6分後、強制的に口をこじ開けた。 加熱後、ザルを使って身と煮出し汁を分け、煮出し汁に水を加えて800gに調整し、「だし汁」とした。
その半量については、塩分計(フードテスターFD-1)で測定しながら塩分濃度が0.7~0.8%になるように食塩を加え、「吸い物」とした(表2)。
身は殻ごと提供した。

表2:官能評価用資料の塩分濃度

官能評価に用いた試料を、写真1に示した。

写真1:アサリ(左)とシジミ(右)の官能評価資料

《官能評価方法》
アサリとシジミの新規購入品と冷凍品を使って作り、40℃前後に調整した「だし汁」「吸い物」「身」について、どちらがうま味を強く感じるか、どちらが好きかを10人で評価した。

実験結果

《成分含有量》
表3と図1に示したとおり、アサリ、シジミともに、うま味成分のコハク酸、遊離アラニン、遊離グルタミン酸は冷凍によって減少し、減少率はアサリの方が大きかった。
アサリに多く含まれているタウリンも減少したが、シジミのオルニチンは増加した。

表3:成分含有量の変化

図1:成分含有量

《官能評価》
アサリは、だし汁、吸い物ともに冷凍品はうま味が強く、好ましいとされた。反面、冷凍の貝の身は形が崩れてふっくら感もなく、味も出しがらのようでおいしくないとした人がほとんどであった(2)。
シジミでは意見が分かれ、アサリと同様の傾向はみられたが、アサリほどの大差はつかなかった(図3)。

図2:官能評価結果 アサリ

図3:官能評価結果 シジミ

考察

家庭の冷蔵庫でアサリとシジミを1ヶ月間、冷凍しても、味に影響を及ぼすと考えられる一般的なうま味成分は増えなかった。しかし、冷凍アサリのだし汁、吸い物は高評価であった。このことは、冷凍すると身の組織が破壊されて貝の身からうま味成分が流れ出しやすくなるため、うま味を強く感じるようになることを示唆している。
成分の増加はないため、インターネットにある「貝を冷凍するとうま味が増える」という情報は成分の増加ではなく厳密には間違いではあるといえる。言葉を補って「貝を冷凍すると『煮だした汁の』うま味が増える」とすれば、正しい情報になるだろう。
使いきれなかった貝を冷凍することは、非常に便利な保存方法である。アサリを購入したら、まずは酒蒸しなどで身の味わい、冷凍したものは汁を味わう吸い物やスープ、鍋料理に使うとよいだろう。シジミは使い分ける必要はなさそうである。

(2015.03.20 食品料理研究室)

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