エフシージー総合研究所・フジテレビ商品研究所

最新の学会発表

大学講内における室内浮遊真菌および
Aspergillus fumigatusの季節推移に関する調査<2>


A Survey on Seasonal Transition of Indoor Airborne Fungi and Aspergillus fumigatus population in Campus <2>


小田尚幸(会員)1、2),橋本一浩(会員)1), 川上裕司(会員)1),槇村浩一(非会員)2)
1) 株式会社エフシージー総合研究所、2) 帝京大学 大学院医学研究科 宇宙環境医学研究室
○Hisayuki Oda1、2), Kazuhiro Hashimoto1),Yuji Kawakami1),Koichi Makimura2)
1) Laboratory of Environmental Science, FCG Research Institute, Inc.
2) Laboratory of Space and Environmental Medicine, Teikyo University

Abstract: We sampled air of the school cafeteria, office room, and outdoor, in the Itabashi campus of Teikyo University from January, 2015 to September, 2016 to check an airborne fungus and the number of the floating particles. As a result, as for the annual mean of the number of the airborne fungi, the outdoors, a school cafeteria, an office were 145CFU/m3, 36CFU/m3, and 19CFU/m3 each. The number of the floating particles was 532,117Particles/m3, 156,250Particles/m3, and 183,611Particles/m3 each. Aspergillus fumigatus was detected 8 colonies (outdoor: 4, school cafeteria and office room: 2) in total in 2015. Five colonies were separated among A. fumigatus separated in 2015 from January to February.

キーワード:浮遊真菌(Airborne Fungi)、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigatus)、季節推移(Seasonal Transition)

1.はじめに

 Aspergillus属真菌は、一般的な住宅室内の空気においてごく普通に見られる浮遊真菌の1属である。その一種であるAspergillus fumigatusは、肺アスペルギルス症原因真菌の大部分を占める種であるため、医学的にも重要性の高い真菌である。しかしながら、室内におけるA. fumigatusの分離頻度は他のAspergillus属真菌と比べても決して高くないことからその暴露量も少ないと推察される。演者らはA. fumigatus感染経路の解明を目的として、2013年と2014年の夏期に東京周辺の一般住宅周辺の室外空気を調査し、複数個所でA. fumigatusが分離されることを明らかにした1、2)。これを受けて、室外空気中の真菌が室内への侵入経路を明らかにするため、一般住宅に比べて人の往来が多い大学の構内および構外の空気を並行して調査した。また、都心近郊の真菌相をモニタリングした事例は少ないため、A. fumigatus以外の真菌相や浮遊粒子数との関連性についても合わせて調査した。本要旨では2015年の調査結果について記載する。

2.材料および方法

場所: 帝京大学板橋キャンパス(東京都板橋区加賀)
屋内:1F学生食堂・2F事務室
屋外:北側出入口前
日時: 2015年1月〜10月、2016年4月、6〜9月
金曜あるいは土曜の14:00〜

2-1. 浮遊真菌の調査
 エアサンプラー(SAS-IAQ:pbi、IDC-500:アイデック)を用いて調査地点の空気100LをDG-18培地3枚(SAS-IAQ:2枚、IDC-500:1枚)にサンプリングした。サンプリング後の培地2枚を27℃で、1枚(SAS-IAQ採取分)を38℃で1週間培養した。
 27℃培養の培地に発生したコロニー数から1m3あたりの菌数を計数した。属種の同定はコロニーと分生子の形態的特徴で行った。A. fumigatus様コロニーについては新しいPDA培地に単離し、48℃で培養し近縁種と識別した。

2-2. 浮遊粒子の調査
 浮遊真菌採取時にパーティクルカウンター(RION KR-12A)で1Lの空気を吸引し、浮遊粒子の計測を行った。

3.結果および考察

3-1 浮遊真菌と微粒子数
 2015年の浮遊真菌は平均で、屋外145CFU/m3、食堂36 CFU/m3、事務所19CFU/m3であった。浮遊真菌数の推移は、概ね一般的な住宅室内と同様に、夏が多く冬が少ない結果であった。
 ただし、大学構内に特徴的な点も明らかとなった。食堂では春季休暇と重なった3月は利用者が少なかったからか、真菌が検出されなかった。逆に7月は、テスト期間であり学生が常に食堂に居る状況となったため、真菌数の上昇が見られた。事務室では新年度が始まった4〜5月に真菌検出数の上昇が見られた。
 また、真菌の種類も一般住宅と異なり、過去の調査ではA. section RestrictiEurotium spp. などハウスダスト由来の好乾性真菌が多く検出される傾向にあった3)。本調査では好乾性真菌の検出数は少なかった。食堂では酵母様真菌の検出が他2か所と比べて目立った。
 浮遊真菌数は学生の生活と連動しており、また、真菌の種類も住宅内の推移とは異なっていた。
浮遊粒子数は平均で、屋外532,117Particles/m3、食堂156,250Particles/m3、事務所183,611Particles/m3だった。浮遊微粒子数は、月ごとの変動はあるものの、季節ごとの大きな特徴は見られなかった。室内空気中の粒子数と真菌数は、概ね連動して推移していたが、相関が見られない月もあった。

3-2.A. fumigatusについて
2015年1月〜10月にかけて、8株のA. fumigatusが検出され、いずれの株も48℃培養で陽性を示した。検出数は屋外が4株と多かったが、事務室は調査回数や総浮遊真菌数に対してA. fumigatus分離数が比較的多かった。8株の内、5株のA. fumigatusが1・2月に分離された。また、浮遊真菌数とA. fumigatus検出数に特徴的な関係性は見られなかった。

空気清浄機能付ファンヒーターを用いた室内浮遊真菌の除去効果
図 2015年における全調査地点の平均浮遊真菌数(対数)とA. fumigatus検出数。
黒棒と数字はそれぞれA fumigatus検出月と分離株数を示す。

4.参考文献

1)東京郊外の住宅地と隣接する農地及び住宅造成地におけるAspergillus fumigatusの分布調査平成27年 室内環境学会学術大会
2)住宅地と隣接する農地および住宅造成地におけるAspergillus fumigatus の分布調査平成26年 室内環境学会学術大会
3)一般住宅における室内浮遊真菌の年間変動 橋本一浩・川上裕司 2015 防菌防黴 43(6); 269-273

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