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日本画の修復事例

2010.12.14

作品の状態調査

作品の基本データ
種別 日本画(麻紙、着彩)
寸法 縦209.6 × 横135.6(cm)
保管 個人所蔵
保存環境

一般住居及び病院内待合室の壁に飾られていた後、住居の納戸に数年間しまわれていました。

損傷の状態

画面を保護しているアクリル板の内側に黒っぽいカビのような丸形の汚れが点在していました。本紙は全体的に薄く汚れており、特に周縁部は煤(すす)状の汚れがかなり付着していました。また、着彩箇所に一部亀裂が生じていました。

アクリル板の汚れアクリル板の汚れ
画面上のカビ痕らしき汚れ画面上のカビ痕らしき汚れ

環境調査と修復の作業

  • 環境調査
    1. カビの疑いがある汚れを採取して培養し、汚れがカビかどうかを確認しました。生えてきた場合はその種類を同定しました。
    2. 以前絵が飾られていた場所と絵をしまっていた納戸の空気を専用の検査機器で採取し、その場所に浮遊しているカビの量と種類を調べました。これにより絵に発生しているカビとの関連、カビ被害の危険性が見えてきます。
    3. 温度と湿度を計測し、カビの生えやすい環境になっていないか調べました。
    4. 作品を殺菌・クリーニングした後、再度カビ痕のあった箇所から採取をして、カビが残っていないか確認の培養をしました。

    今回の調査の結果、納戸内からは一般住宅で検出される平均的な浮遊カビ量より多めのカビが検出され、中でも好湿性のカビが多く検出されました。このことから普段締め切られることが多い納戸内は多湿になっていたことが分かります。

    納戸にしまわれる以前に壁にかけられていた場所から検出されたカビの量は少なく、温度と湿度も絵の保存に適した数値であったため、今回の調査で絵に発生していたカビは納戸にしまわれている間に付着したものと推察しました。そこで納戸内の環境改善策についてご提案をしました。

アクリル板のカビらしき汚れを捕集専用のスポンジで採取カビらしき汚れを捕集専用のスポンジで採取
空気から採取して培養したシャーレ空気から採取して培養したカビ
分離されたカビの1例(Aspergillus versicolor)分離されたカビの1例
Aspergillus versicolor

  • 修復
    1. 作品の組成を調べた後に状態調査を行い、処置前の写真撮影をしました。
    2. 額から絵を取り出し、本紙と裏面、額縁、アクリル板の殺菌処置を行いました。
    3. クリーニング用スポンジや刷毛を使って全体のドライクリーニングを行いました。今回の汚れはドライクリーニングのみできれいに除去することができました。
    4. 絵具に生じていた亀裂はニカワ止めをしました。
    5. 金泥が剥落した箇所や、付着物があった箇所、亀裂で隙間が生じた部分に補彩を施し、目立たなくしました。

    最後に額装をし直し、納品とさせていただきました。

絵具に生じていた亀裂絵具に生じていた亀裂
絵具による補彩絵具による補彩

修復前と修復後の比較例

クリーニング用スポンジで画面全体を覆っていた汚れを落とすと、金色の輝きを取り戻し、平面的に見えていた背景に奥行きが出た。クリーニング用スポンジで画面全体を覆っていた汚れを落とすと、金色の輝きを取り戻し、平面的に見えていた背景に奥行きが出た
修復前:白い付着物がある修復前:
白い付着物がある
修復後:付着物を取り除き、補彩を施した修復後:
付着物を取り除き、補彩を施した


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