オープンセミナー開催レポート
大学広報の基礎とメディアトレーニング

 7月24日(木)、25日(金)の両日、東京・日比谷の日本記者クラブで、広報セミナー「大学広報の基礎とメディアトレーニング」を司会進行・エフシージー総合研究所情報調査部長・山本ヒロ子で開催した。

セミナー1日目
基調講演
−学術都市復権へ、大阪大学の新たな挑戦

 初日の基調講演は大阪大学の鷲田清一総長。阪大は歴代、理系出身者が総長を務めてきたが、哲学者でもある鷲田氏は初めて文系から総長に選ばれた。「学術都市復権へ −大阪大学の新たな挑戦」と題して、ユーモアを交えて、大学として多角的に情報を発信していくことが大事であることを強調。自身が京大出身であることから、「かつては結婚するなら京大、デートをするなら同志社、引越しするなら阪大」といわれ、「いかハン」という言葉があった。「いかハンとは、いかにも阪大ということで、ダサい阪大生のイメージがあった。それを“もてハン=もてる阪大生”にしなければいけない。それには広報が大事だ」などと語った。

広報力が組織の明日を築く

 次いで、広報アドバイザー・危機管理コンサルタントの青柳榮一氏が「広報力が組織の明日を築く」とのタイトルで講演した。青柳氏は、民間会社で約40年も広報を担当していた経験を踏まえ、「広報の仕事をうまくやりたいなら、親しい新聞記者をつくれ。うまいプレスリリースを書きたかったら新聞のコラムを読みなさい。大事なことは、すぐにトップの耳に入れなさい」などと実戦的なアドバイスを送った。

マスコミを引き付ける情報発信 −記者からのアドバイス

 昼食をはさんで午後からは産経新聞経済本部長でフジサンケイビジネスアイ取締役編集担当の鶴田東洋彦氏が「マスコミを引き付ける情報発信 記者からのアドバイス」として講演。社会部記者と経済部記者との違い、新聞社のデスク(各部の担当編集責任者)の判断の仕方、新聞社の締め切り時間など新聞記事ができるまでを説明。その上で、「常に危機に備えて情報を整理、蓄積しておかなければいけない。マスコミに対して、公平に接しないとマスコミは記事を書いてくれなくなる」などと述べた。

パネルディスカッション「戦略的広報の時代へ」

 このあと、「戦略的広報の時代へ」をテーマにパネルディスカッションのプログラム。出席者は、中央大学総務部広報室副課長兼入学センター事務部入学企画課広報担当の五十嵐星汝(せいな)氏、明治学院大学広報室長の齊藤一誠(かずのぶ)氏、金沢大学総務部総務課広報戦略室・広報企画係長の松本芳江氏、広報コンサルタントの萩原誠氏。司会進行はエフシージー総合研究所情報調査部主任研究員の藤野克己。
 この中で、中央大の五十嵐氏は、その前日の八王子の通り魔事件で中大4年の女子大生が刺殺されたことに関連、「それほどマスコミが押しかけるとは思っていなかったが、予想を超えるものすごい報道陣が押しかけて、まった何もできないほどだった」と、事が起きたときのマスコミ攻勢のすさまじさを語り、参加者の関心を呼んだ。 明治学院大の齊藤氏は「東京と東京近辺からの学生が多いが、ブランド広報に力を入れるとともに、地方への広報に重点を置いている」とブランド力を前面に押し出していることを強調した。金沢大の松本氏は、国立系としては比較的早くから広報部門を重視してきたことを指摘し、入学者のエリアが限られているので、そのエリアを広げるべく全国的な広報を心掛けていることを語った。中央大の五十嵐氏は、広報誌や入試案内などで幅広く広報活動を展開する中で、最近はホームページの充実に力を入れていることなどを述べた。

 以上の初日のプログラムの最後は、名刺交換会を兼ねた懇親会。セミナー会場の横の別室で、ビールやワインなどのグラスを傾けながら、話題は、日ごろの広報をめぐる苦労話や対マスコミ関係の難しさなどに集中したようでした。

セミナー2日目
わが社の広報 −企業からのワンポイントアドバイス

 2日目は、民間会社の広報の実情を住友商事広報部長の井場満(いば・みつる)氏から話を聞いた。井場氏は、住友商事の広報を素材に、トップをマスコミに登場させるためには仕掛けも必要であることや、広報には「攻めの広報」と「守りの広報」があることなどをざっくばらんに語り、大学ももっと広報に力を入れるべきだと力説した。井場氏の話では、不祥事を起こした企業のマイナス効果を数字で表した点が興味を引いた。

記者会見の対応で大学の評価が決まる

 次いで、エフシージー総合研究所常務取締役(元産経新聞政治部長)の小林静雄が「記者会見の対応で大学の価値が決まる」として、「うまい記者会見」「下手な記者会見」を例示しながら、記者会見での注意事項など記者経験を踏まえてアドバイスした。「うまい会見は会見者の言葉が素直に理解できて見出しが頭に浮かぶような会見。専門用語を使わずに話す努力をしてほしい」などと語った。

不祥事とマスコミ対応

 昼食休憩のあとは産経新聞社会部長の鈴木裕一氏が講演。鈴木氏は「大学の場合、いつでも不祥事が起きて、すぐに会見しなければならないことが必ず起きると覚悟してください。会見を開くことが社会的責任を果たすことになる」と前置きして、事件・事故・不祥事が発生した場合の注意事項を実際のケースを挙げながら説明した。具体的には
@隠し事はダメ
A学内の論理は通用しない
B内部告発があると思って対応すること
C広報は危機管理の要である
―などと指摘した。

実践メディアトレーニング
「他校の不祥事は自校の危機」

 2日間で最後のプログラムは、セミナーのハイライトとも言える模擬記者会見のメディアトレーニングだ。今回の模擬記者会見のテーマは
@教授による女子学生へのストーカー行為の発覚
A本学の学生がコンビに強盗―
の2つのケース。まず参加者が6チームに分かれての想定問答づくりを行った。「こういう質問が出たら、こう答えるべき」とか、「こういう質問は出ませんかね」などと詰めた議論が展開された。この想定問答づくりのあと、いよいよ「本番の模擬記者会見」に入った。記者役は産経新聞社会部長の鈴木裕一氏、夕刊フジ編集局長の別府育郎氏、エフシージー総合研究所常務取締役の小林静雄、同研究所情報調査部長の山本ヒロ子。

模擬記者会見に臨むAチーム
Aチーム
模擬記者会見に臨むBチーム
Bチーム

 まず「教授のストーカー事件」は、学長役の受講者がみごとなまでの冷静な態度と適切な受け答えで、再発防止策や責任論などの質問にもよどみなく答え、終了後に会場から拍手が起きた。講評でも「すぐに学長ができますね」と冗談が飛び出したほどで、ほぼ完璧な出来だった

 ところが、もう一つのケース「本学学生がコンビニ強盗」という設定の模擬記者会見では、犯人が19歳という未成年者という想定であるにかかわらず氏名を公表するという“暴走”を演じてしまった。2日間にわたるセミナーで「隠し事はダメです」という“クスリ” が効きすぎたのか、講評では記者役の方が「なぜ氏名を公表したのですか」と尋ねたほど。会見チームの答えは「いくら未成年でも、殺人と犯罪を犯した以上、大学として社会的責任を果たすためには氏名を社会に公表すべきだと思った。全員一致の意見でした」。いやいや…。「新聞は、そんな発表されても氏名は公表しませんよ」と講師側から説明されて納得したが、これもセミナーでの貴重な体験だったかも。

 模擬記者会見は時間の関係で、セミナー受講者全員が体験することはできなかったが、記者会見のテーブルに座った受講者は「記者会見の怖さが実感できました。考えていたより質問が厳しかった」と感想を語っていた。

(08.7.28記)
「オープンセミナー」とは

当研究所では、広報活動に関するさまざまなセミナーを開催しています。セミナーのテーマは、危機管理からニュースリリースづくりなど、幅広く展開。主なものに「事件と広報」「製品回収事件と広報」「インターネットのリスク管理」「新任広報マン夏期講座」「何がニュースになるか」「戦力としての広報ウーマン」「読まれる社内報づくり講座」などがあります。

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