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第241回 再生可能エネルギーから暴力団排除を(2010年7月26日更新)
暴力団が日本相撲協会のプロ野球賭博事件などにかかわった問題について、エネルギー業界の幹部と話していたら「他人事ではない。われわれの世界に入り込もうとしてくるかもしれない」とつぶやいた。電力やガスの事業に参入してくるわけではない。CO2(二酸化炭素)をはじめ温室効果ガス削減に寄与する太陽光や風力、地熱などで発電する再生可能エネルギーの導入拡大で参入機会が増えることを危惧している。
「なぜ再生可能エネルギーに」と驚く。詳しく聞けば、「風が吹けば桶屋が儲かる」の論理に似ているのに気付いた。まず、話の振り出しは、政府が進めている再生可能エネルギーの全量買い取り制度。経済産業省は23日、この制度のあり方を検討している有識者会議に導入すれば電力料金が最大200円ほど上がるとの試算を提示した。この程度なら国民の理解も得られるのではないかとも指摘。2012年度から導入したい意向も示した。
この制度は、いま太陽光や風力での発電を電力会社が買い取っているシステムと前提が大きく異なる。今は、自分で使った分の余り、つまり余剰電力だけしか買い取りの対象になっていない。したがって、自分に利益が出るかどうかは、余りがどれだけ出るかのリスクを計算しないとわからない。しかし、全量買い取ってもらえるならば、買い取り価格より安い値段で設備を導入できれば確実に利益が出る。ノーリスクに変貌する制度となる。
そこに、暴力団のつけ込む余地が生まれる。組事務所や組員の自宅、使っていない納屋などに太陽光パネルを張りめぐらせて発電し、電力会社に買い取りを申し入れる。恐喝すれすれで設備代金を安くしたり買い取りを迫ったりするのは、お手のもの。実際、全量買い取りを実施している欧州の国では、暴力団員のような者が輩出していると聞いた。そういう者が日本でも出てくるのは絶対に避けなければならない。
世の中が平和になってくるのに伴い、暴力団員に必要な資質は変わる。闇市で儲けたり殺し合いで縄張りを広げていったりした時代には、武闘派と呼ばれる腕力や拳銃に強い者が重用された。だが、世の中が安定し平和になると、巧妙な株の買い集めや不動産売買といった経済行為に強い組員が若頭などの幹部に出世してくる。一方で武闘派は遠ざけられる。戦国時代、加藤清正らが豊臣秀吉から次第に遠ざけられた構図に似ている。
そのような者の活躍で利益を貯めこんできた暴力団の経済力の膨張に深刻な危機感を覚えた政府が作ったのが暴力団新法だ。現在の暴力団は、法の網をくぐり抜けビジネスチャンスがあれば何としてもくらいつき利益を生み出そうと蠢(うごめ)いている。再生可能エネルギーの導入拡大という美名に隠された大きな危険性を見逃してはならない。そういう制度設計をするのも健全な政府と国民とのコミュニケーションのあり方の一つだと考える。
(情報調査部長 水上 創)
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