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第236回 立ち呑みサポーターオヤジ(2010年6月21日更新)
齢(よわい)55にしてサッカーW杯の応援をどこかの店で経験してみたいと思った。どんな雰囲気なのか知りたくなったのだ。それに、これからも日本がW杯本選に出られるかどうか、自分もそんなことのできる体でいられるかどうかわからない。そこで、できるうちにやってみようと考えた次第。いろいろなところにチャンスはあるが、帰りがタクシーになるので、自宅から一番近い繁華街の渋谷を選んだ。
日本とカメルーン戦当日の14日に出向く。JR渋谷駅から忠犬ハチ公像の前を通り過ぎ、スクランブル交差点を斜めに渡りセンター街に入る。人だかりは多い。よくテレビに出てくるテレビ中継の見られるレストランの前に立つが、なんと予約が必要とわかる。予約のいらない店もあるが、頭に鉢巻をするサポーターたちを見た途端、「そこまではできないな」と腰がひける。
「しまった、準備不足。この先のサウナでしか見られないかも」と思いつつ早足に。するとマックを過ぎてサウナの手前10メートルほどのところで、「まだまだW杯が中で見られますよ」と若い女性に声をかけられる。そこは、立ち呑み(なぜか立ち飲みではない)の看板が掲げられた店。ウイスキー、ビール、ウオッカ、ウーロン茶など何でも1杯500円の3枚綴りチケット1500円分を支払い、中に入る。
液晶テレビが入り口付近と奥の2カ所に据えつけられ、奥の40人ほどの人だかりの中には外人も4人いる。そこでは立ちっぱなしになりそうなので、入口近くのテレビが見られる柱に背をもたらせて見ることにする。そして試合開始。まずは、民族楽器ブブゼラの音が大音響で聞こえてくるのにまいる。ハエが飛び回っているような感覚に襲われて集中力をそがれること、このうえない。
ただ、間違いなく店内は暑いうえ、口角泡を飛ばして「いけ!」とかいった声を聞いても不思議と暑さを感じない。そんなことを感じる余裕がないほど、自分の意識が試合を見るのに釘づけになっているからだろう。もっとも、知らない人同士でも「今日は(中村)俊輔はいらないな」などと気さくに話し合う声は聞こえる。あいさつなどいらない応援の気持ちで一致する独特のコミュニケーションの世界を感じる。
そんなことを考えながら見ていると、本田圭佑選手のゴール。「ワー」という大歓声が起き、知らない人同士が抱き合っている。そして試合終了になると、だれからともなく、「ニッポン、ニッポン」の大声と手拍子の渦。出がけに店の女性から「お疲れさまでした」と声をかけられ、清々しい気持ちになる。ただし、ふくらはぎが痛い。立ち呑みサポーターは、オヤジにはつらいなあと感じて歩き出した。
(情報調査部長 水上創)
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