広報ショートコラム
 
第236回 学長はトップ広報マン(2010年6月14日更新)

 昨年10月からフジサンケイグループの経済専門紙「フジサンケイ ビジネスアイ」の毎週土曜日紙面に、「広報で克つ」を連載している。取材先は大学だ。内容は、“わが大学の売り”。教育研究の特徴や社会貢献活動、学生にいかに充実した4年間を過ごしてもらうかといった学生の関心事についての工夫などを伺っている。広報責任者に取材を申し込むと、意外だったのが、「それでは、学長からお話させていただきます」という回答だった。

 学長となると、企業でいえば社長である。緊張する。こちらが聞きたいと思っていることを十分に伺うことができるだろうか。当初はそう思った。しかし、日ごろからお孫さんのような学生と接しているからだろうか、気さくで思いやりがある。「学生のころは、学長って偉い人なんだろうと思っていましたが、いざ自分が学長になってみると経営のことを考えるとか、何でも屋ですね」とぼやく方もいて、何とも微笑ましい感じがした。

 これまで取材した学長の中から3人の横顔を紹介したい。中部地区の教育大学の学長には、東京での会議の合間に取材させてもらった。1年前の今ごろ、奥さまをがんで亡くされていた。数カ月はボーッとされていたようだが、教職員や学生たちに励まされ、今では時間がとれると大学近くの自宅の庭で野菜作りに励んでいる。学生が時々訪ねてきて、採れたての野菜をつまみに飲むビールは格別と語っていた。優しい目が印象的だった。

 北海道の農業単科大学の学長は、実家が開業医。兄弟はその道に進んだが、ペット好きだった学長は迷わず、その大学を選んだ。入学して少し方向が違うかなと感じたそうだが、どんな経験も無駄なことはない。博士号取得のため、一時期、四国の大学で学んだが、再び母校に戻って教鞭をとることになった。「牛や馬が放牧されているのを小学生たちが見学に来るんです。みんな、目が輝いています」。そう語る目も輝いていた。

 都内の理工系大学の学長は、化学の仕組みを素人が分かるように話をしてくださる。広報のよき理解者だ。2年後、この大学は下町に新校舎をオーブンする。私が「地元では、若い学生さんが来て活気が出ると期待しているようです」と話すと、「ほらみなさい。われわれは期待されているんですよ。学内外にそのことを積極的にPRしないと」と同席していた広報課長に言い聞かせていた。「山本さん、その話をもっと皆に言ってくださいね」とも。

 大学にはPRする素材がたくさんある。しかし、それらを大学が披露しても人間の息吹がなかなか伝わらない。ホームページの教員一覧は名前と研究テーマだけ。なぜ専門を研究テーマに選んだのか、子供のころからの関心事を交えて語ってもらうと、じつに面白い。学長の失敗談には親しみがわく。今こそ、「顔が見える大学」が求められている。その早道は、学長をはじめ教職員、そして学生に登場してもらうことだ。人は人を引きつける。


(広報フォーラム事務局 山本ヒロ子)
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