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第228回 『言わぬが花』のトップ発言(2010年4月19日更新)
大西洋クロマグロの国際取引全面禁止案が国際会議で否決された。マグロが食卓から消えてしまうかもしれないだけに、多くの関係者はホッとしたことだろう。しかし、記者会見での赤松広隆農水相の発言はいただけない。ニヤニヤしながら裏側で各国に働きかけた事実を匂わせた。新政権発足後の初ヒットともいえそうな交渉結果だから有頂天になる気持ちもわからないではない。しかし、日本国の閣僚としてはいかがなものか。
国益がぶつかる外交のみならず、利害が対立する企業間での交渉でも、根回しは欠かせない。たが、それをことさら周囲に話す必要はないだろう。裏取引をしたなどと思わぬ反撃にあうからだ。クロマグロの国際会議では、負けた側の米国代表が怒りを込めて、「裏側に大きな力が働いた」とコメントしている。大きな力が中国なのか日本なのかは不明だが、わざわざ他国の怒りを買うような発言は慎んだ方がよい。
企業では、業務提携や買収についての進捗状況や結果を発表する機会が多い。メディアを取り込んで、事を有利に運ぼうとする虚々実々の駆け引きも見え隠れするケースもある。破談になると、交渉相手の会社側に非があり自社は悪くないと印象づけるために、決裂の内幕を公表するケースさえあるほどだ。もっとも、大企業のトップが、子供の喧嘩ではあるまいし、言った言わないなどと触れ回るのは恥の上塗りだと思うのだが。
企業間の交渉がうまくいくかどうかは、経営者の人間性・信頼性も大きく関係する。それゆえに、企業への信用調査では、経営トップの人物像が大事なポイントになっている。たとえ自社を有利な立場にするためとはいえ、当事者かぎりの話を外部に漏らすのは自ら信用を落としているのと同じだ。交渉に失敗しても、引き際にどんな立ち居振る舞いをするかで、その企業なり経営者なりの質がわかってしまうような気がする。
さて、あなたが広報担当者であれば、不首尾に終わった提携交渉の発表について、社長にどんな助言ができるだろうか。「社長、それを言っちゃまずいでしょう」と直言できる人はそういないとは思う。それでも広報は社会への窓口だから覚悟を決めて直言すべき場面もあるはずだ。広報職の醍醐味は経営者の目線と外部からの目線との両方を斟酌して行動することにあると考える。片方だけを見ていては、広報職は務まらない。
クロマグロの話に戻るが、今回の交渉では、農水省(水産庁)のもの言わぬ能吏たちの活躍が目を引いた。国内で、この役所の存在は大いにアピールした。しかし、欲をいえば、はしゃぐ社長(=大臣)に、「交渉はこれからも続きます。反感を買わないように淡々と冷静に笑わないで記者会見に臨んでください」と事前に釘をさしておいてほしかった。政治主導だからといって、“必要なことももの言わぬ”能吏ばかりでは困るのである。
(広報フォーラム事務局 大島光博)
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