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第226回 “鉄の扉”の導入に広報の意見を(2010年4月5日更新)
「どうして、こんなに無愛想なんだろう」。新年度入り早々、人の顔の表情について、あれこれ書こうとしているわけではない。ここ数年、官庁や企業で導入が進んでいる入り口の鉄製の扉を見ると、いつもそう思ってしまう。中央官庁の経済産業省(東京・霞が関)と財界総理の別名がつく会長をいただく日本経団連の会館(東京・大手町)が相次いで、昨年入り口に設けた。入館証をかざすと、大きな音がして扉が開く。
それまで警備員が入館証や身分証明書をチェックするなどして、不審者が入り込まないか警戒していた。ただ、警備員だけだと、身分証明書が有効かどうかといった悶着が起きたとき、その横を不審者が通り過ぎて進入する可能性がある。扉を設ければ、こうした隙をついて入り込もうとする者の出入りは防げる。理由はわからなくもない。ただ、訪れる人を迎え入れようとしている気持ちがまったく伝わってこない。
それどころか、拒絶しようとしているのではないかとさえ思ってしまう。無愛想の元凶は、第一に色。どこもかしこも黒で、受ける印象は冷たい。しかも、高さが腰あたりまでしかない。急いで入ろうとすると、ぶつかってしまう。東西冷戦時代、英国のチャーチル元首相は東欧から中央にかけて、「鉄のカーテンが降ろされた」と緊張関係を表現した。その言葉を借りると、まさに現代のビルの扉は、“鉄の扉”と表現できる。
そんな無愛想な入り口の扉ばかり見ていたとき、「人を歓迎しているなあ」と思わずつぶやいてしまう入り口と扉に出くわした。産経新聞東京本社と道一本隔てた大手町ビルの7階にある電力中央研究所。入り口には、警備員も受付嬢もいない。液晶パネルとつながる電話機が1台。パネルは、一定時間使われていないと熱帯魚が動く画面(スクリーンセイバー)になっている。その透明な色合いで、まず気持ちが癒される。
ついで画面に触れると、部署名か会いたい人の姓のどちらかで内線番号が表示される。このシステムにも、訪問者の操作をできるだけわかりやすくしようという考えがうかがえる。そして、迎えに来てくれた人が出てきたとき、改めて感動した。開閉する扉は壁に埋め込まれており、色もアイボリー。ぬくもりや温かさが伝わる。「そうか、扉の形や色を変えるだけで、こんなにも印象が違うんだ」と納得した。
そんな話を上場企業の広報部長にしてみた。この会社の本社は今年度中に移る。どんな反応をするのか楽しみ。すると、「確かに感じの良い入り口にしたいと思いますが、私には扉の形や色を決める権限がないんですよ」。決めるのは総務部門。それならば、“鉄の扉”の色や形を決めるとき、広報部門の意見も採用するようにしてはどうか。人を受け入れようと感じさせる個性的な扉が、どんどんできてほしい。
(情報調査部長 水上創)
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