広報ショートコラム
 
第222回 『病院のレピュテーション』(2010年3月8日更新)

 先月25日、弊社主催の病院危機管理セミナー「実践 メディアトレーニング」を開いた。札幌から沖縄までの病院関係者49人もの参加をいただいた。ただ、当日朝、東京湾周辺で発生した濃霧の影響で、空のダイヤが大幅に乱れた。伊丹から羽田行きに搭乗した方は、大阪に逆戻り。大分からの方は成田に着陸してしまい、約2時間掛けて内幸町の会場に駆けつけていただいた。まさに主催者にとっても、危機管理を要するスタートとなった。

 基調講演は、慈恵医大病院広報推進室長の高橋誠さんに、「病院ブランドを高めるための広報戦略」をテーマにご講演いただいた。長年の企業広報マンとしての経験に基づき、守りから攻めの広報について事例をあげながら具体的にご紹介いただいた。そのなかで特に参加者が聞き入った場面は、一昨年6月に発生した秋葉原無差別殺傷事件で被害者の1人が救急搬送されて、緊急記者会見を開くまでを時系列で紹介したときのことだった。

 大挙して押し寄せた報道陣から患者の氏名をはじめとする個人情報の開示を求められた際に、押し問答が続いた。結局、「都内の70歳代の男性」まで答えたが、氏名は公表しなかった。高橋さんは一連の流れを記録して考察し、課題や反省点などをまとめた。「日ごろ、広報担当者として、病院内で危機管理について話し合う機会をもっているものの、大きな社会的事件に遭遇してみて、改めて初期対応の難しさを知った」との言葉が印象的だった。

 高橋さんの講演の結びは「病院レピュテーションの向上」。ブランドを高めるためには、レピュテーション(評判、評価)向上は不可欠と力説した。実際、私が打ち合わせのため慈恵医大病院を訪問したとき、職員や医師、看護師さらに警備の人までが患者目線の対応で、感じが良かった記憶がある。なるほど、あれがレピュテーション! 院内コミュニケーションの総和が図られ、高橋さんの指摘する継続的な広報活動の成果なのだろうと感じた。

 その後の模擬記者会見では、事務局の想定(がん誤診、診療報酬不正請求、院内感染、患者の個人情報流出など)について6〜7人ごと7チームに分かれ、プレスリリースを作成。それに基づき模擬記者会見に臨んでもらった。産経新聞とフジテレビの編集長・現職部長から厳しい質問が浴びせられ、必死に応じる場面もしばしば。医師、看護師、事務、経営管理など参加者の役職はさまざまだが、各立場で広報の重要性を肌身で感じていただけたと思う。

 病院危機管理セミナーは、今年で7回目。スタート当初に比べ、リリースの作成や記者会見の運びなど、皆さんそれぞれ勉強されているように感じる。病院のホームページも年々充実してきた。院内に医療安全対策室、医療安全課といったリスクマネージメントを意識した組織が誕生しているのも時代の流れなのかもしれない。最終的に、理事長や院長が広報の重要性を認識し、率先してマスコミ対応を学んでいただくのが最も大切だと思う。
 

(広報フォーラム事務局 永井久恵)
あなたの会社が、何らかのトラブルで記者会見を行わなければいけない...。突然の記者会見対応...。そのときになってから対策を講じていては、間に合いません。いざというときのために、事前に模擬記者会見を体験してはいかがでしょうか。
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