広報ショートコラム
 
第221回 『驚かされた広報戦略・戦術』(2010年3月1日更新)

 月が変わり、今年度も残すところ1カ月。官公庁では2010年度予算案の議会審議が、3月期決算会社では決算対策が、それぞれ佳境を迎える。そういう忙しさを控え、このところ職場や仕事先、知人と交わす話題の中心は、きょう閉会式(日本時間)の開かれるバンクーバー五輪だった。期間中、私が最も驚いたのは、韓国がスピードスケート500メートルの男女で金メダルを独占したことだった。

 新聞やテレビの報道によると、金メダルを獲得した韓国のスピードスケート選手は、既にお家芸といえる自国のショートトラック選手からターンなどの技術を学んだ。そうした精進の積み重ねが、並みいる日本や欧米の有力選手らに勝つ原動力となった。ショートトラック選手から学ぼうとする戦略、そして身に着ける技術をターンなどに絞り込んだ戦術が功を奏したと考える。

 世界のトップに君臨していた日本の男子複合が強くなったのも、戦略・戦術がきちんとしていたからだ。ジャンプで大差をつけ、距離で追いつかれないようにする戦略を考えた。戦術として、いち早くV字ジャンプを取り入れた。日本の強さにいらだった欧米各国はジャンプより距離の点数を高くするルール改正を断行。いま日本が金メダルを取れないのは、改正ルールに対する戦略・戦術が立てられなかったからだと思う。

 戦略・戦術が重要なのは、スポーツの世界に限ったことではない。広報の世界でも、きちんとした戦略・戦術は、メディアで取り上げられるかどうかに大きく影響する。産経新聞編集局経済部の記者時代、「すごいことを考えるなあ」と思わずうねる広報の戦略・戦術を目の当たりにした。それは、ある食品メーカーが10年ほど前に打ち出した作戦だった。

 その戦略は、「担当記者だけでなく、新聞別に経済部デスク、科学面とデジタルメデァイの責任者と親しくなりメディアへの露出を増やす」。科学面も重視したのは、その会社が医薬品も手がけるためだ。そのため、産経、朝日、日経、毎日、読売の担当部員を決めた。そして、部員はまず担当記者から経済部デスクを紹介してもらう。さらに、そのデスクからデジタルメディアと科学面の責任者を紹介してもらう作戦を立てた。

 部員は担当記者を通じて知り合った経済部デスクや2人の責任者との会合を開く。そこには必ず広報部長も同席し、その席を大事にしていると強調した。そうして、この会社のニュースは新聞の経済面だけでなく、科学面やデジタルメディアにもよく載るようになった。いま、新聞記者はネットへのニュースを他社より早く送る競争を繰り広げる。その姿を見て、この広報部長の慧眼とバイタリティーに改めて敬意を表している。
 

(情報調査部長 水上創)
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