広報ショートコラム
 
第220回 『バンクーバー五輪と危機管理』(2010年2月22日更新)

 バンクーバー五輪も中盤を迎えた。13日の開会式は、日本で土曜日午前11時から始まった。テレビに釘付けになった人も多かったのではないだろうか。私も洗濯や部屋の片づけをしながらテレビをチラチラ見ていたのだが、ストーリー性のある開会式の進行が気になって仕方がない。とうとうソファに座って見入ってしまった。地元バレー団によるカナダの歴史を紹介するシーンは、まるでミュージカルを観ているようで十分楽しませてもらった。

 華やかな中継とは別に、現地時間12日の午前、リュージュ男子公式練習中にグルジアのノダル・クマリタシビリ選手が事故死したことがたびたび放送された。21歳という若さ。翌日からの試合に向けて最後の調整をしていたクマリタシビリ選手自身が、なによりも無念であったと思う。開会式の各国選手団入場行進のさい、国旗と11人の選手団の左腕に喪章がつけられ、目を真赤にしていた役員の姿が悲しみを一層深いものにした。

 報道によると、バンクーバー郊外ウィスラーにあるリュージュコースは世界屈指の高速コースだそうだ。これまでも、選手が練習中にコースを外れる事故がたびたびあり、選手たちから安全性の問題が指摘されていたという。それなのに、なぜ改善されなかったのか。事件・事故には前兆というものがある。現に事故が発生していたわけで、それを怠っていたツケが、開会式当日に黙祷を捧げるという前代未聞のセレモニーになった。

 同じ21歳。スノーボード男子ハーフパイプ代表の国母(こくぼ)和宏選手(東海大学)は、公式服装の着方に乱れがあったと批判された。サングラスをかけ、鼻ピアスをし、ネクタイを緩めて腰パン、くわえてシャツ出しスタイル。国内はじめ世界のマスコミから「だらしのない21歳」と報道された。恥ずかしながら私は彼の名前すら知らなかった。今回の事件で、しっかり頭に刻みついた。

 このスタイルに賛否両論が巻き起こった。「公式ユニホームを着崩すとはとんでもない」という意見から、「騒ぎすぎるのではないか」「スノーボーダーのファッションはそんなもの」という見方までさまざまだ。私の意見は最初と同じだ。日本を代表する選手にはきちんとしてほしい。着崩すには、着崩すにふさわしいファッションがある。それを全く理解していないことが「反省してま〜す」という第一回目の謝罪会見の言葉によく表れている。

 彼は、在籍する東海大学にも抗議の電話やメールが殺到したことなど頭になかったのだろう。日本を代表するということは、さまざまなところまで影響が及ぶ。ケースは異なるが、まさかこのような事件・事故が起こるとは主宰者側は思わなかっただろう。だからこそ、事件・事故なのだ。起きてしまったことは事実。それをまた1つの事例として、今後の対応策を取っていくことが危機管理の最短距離なのかもしれない。
 

(広報フォーラム事務局・山本ヒロ子)
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