広報ショートコラム
 
第218回 『メディアの変化に対応する広報パーソン』(2010年2月8日更新)

 先日、ある企業の広報担当執行役員の方から『次に来るメディアは何か』」(河内孝著 ちくま新書)という本を薦められた。既存のメディアがどのように変化していくべきかを、メディア先進国のアメリカを例に挙げ解説しており、興味深く読んだ。テレビ・新聞・出版などメディア業界のみならず、広報やマーケティングに携わる人たちにとっても、今後の業務を考えるうえでたいへん参考になる一冊だと思った。

 雑誌の休刊が相次いだり、若者が新聞離れしたりと、新聞・出版業界をめぐる環境は厳しい。通勤電車の中でも、新聞や本を読んでいる人は少なく、一心不乱にゲーム機や携帯を見ている人が多い。ニュースは携帯では詳しくは読めないが、見出し程度が分かればよいということか。情報の提供者であるメディアは、ネットでの新たな課金のシステムをいろいろ考えているが、解決策を見出せないのも事実だ。

 いまでは携帯端末の進化で、新聞はもちろん電子ブックの形で書籍も読める。近い将来には、電車の中刷り広告で見た本を、携帯端末を使って、その場で購入し読むこともできるようになるだろう。半面、書店に足を運ぶ人は少なくなり、書店減少に拍車がかかるかも知れない。ふらりと書店に行って、たまたま手に取った本が面白くて「衝動買い」したという経験も多い。街の本屋さんは、いわば「教養センター」であり、本屋さんが消えていくのは、さびしい。

 冒頭紹介した本の著者は毎日新聞出身の大学講師で、以前に新聞社のビジネスモデルは破綻したと指摘していた。厳しい環境にあるメディア産業を俯瞰(ふかん)して、今回は、新聞だけでなく、テレビやラジオなども収益モデルを大転換する必要があると論じている。そのうえで、一つの素材を様々な媒体で利用する組織=メディア・コングロマリットをつくるべきだと提唱している。

 メディア・コングロマリットとは、新聞・テレビ・出版・映画・通信事業などを合わせた企業体だ。グループ内で、一つの情報素材を徹底的に利用するので、経営効率もいいと強調している。つまり、そのコングロマリットがメディアの新たな収益を確保するためのプラットフォームになるというのである。逆に、中小の出版社などは、これまで以上に独自性を打ち出し、ニッチのマーケットを狙った展開をしていくのではないかと思う。

 メディア・コングロマリットが登場すると、情報を発信する企業側も、これまでのように一つの素材を広報部と宣伝部が別々に発信をしたり、アプローチ先を分け合ったりという区分けはできなくなる。外部への情報発信はすべて一元化され、組織や機能の見直しが進み、そこに携わる広報パーソンは、これまで以上に様々なスキルを要求されることになるのではないか。「備えあれば憂いなし」。広報パーソンはスキルを磨かなければいけない時代が来ている。
 

(広報フォーラム事務局・大島光博)
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