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第194回 『ミネラルウォーター』(2009年8月31日更新)
「ミネラルウォーターの国民1人当たりの年間消費量は、1986年は1人当たり0.7リットルだったが、2007年には19.6リットルに達している」(日本ミネラルウォーター協会調べ)そうだ。21年間で、28倍に増えたことになる。20数年前には、確かに「ミネラルウォーターという名の水」やお茶を買って飲む習慣はなかった。買って飲むのは、コカコーラやジュースなどが多かった。
水は買って飲むものではなく、家庭や職場、学校で水道の蛇口をひねって飲むのが当たり前。お金を出して水を飲むなんて考えられない時代だった。しかし、その後の健康志向の高まりからジョギングやウオーキング、ヨガ、スポーツジムでの体力づくりに人々の関心が集まり、それに伴いスポーツドリンクやミネラルウォーターが注目され、テレビCMでもよく見るようになった。
ミネラルウォーターはそれだけではブームにならない。それに火をつけたのが某飲料メーカーのS広報部長だった。欧米にはウォーターバーというのがあり、大人の男女はそこで夜遅くまで語り合っている−と、「ミネラルウォーターおしゃれ作戦」を打ち出した。文化部やスポーツ紙記者にウォーターバーの模様を写真入りで書いてもらった。そこに自社製品の紹介は一行もなかった。
地域のマラソン大会などに商品を提供し、選手や応援に来ている人たちに、まず飲んでもらうことにも挑戦した。それまではスポーツの合間に水を飲むのはタブーとされたが、適度な水分補給は体力持続のために必要なことという認識に変わった。こうした地道な活動でミネラルウォーターは徐々に浸透していった。S広報部長は、ミネラルウォーターのブームを完璧に作ってしまった。
いま、ミネラルオォーターは多くの人に愛飲され、健康管理の面でも欠かせなくなった。私も会社でデスクに座っているときは、ミネラルウォーターのペットボトルを置いている。ブームを作ったことで自社製品もよく売れている。定年を迎えリタイアしたS広報部長は正直、これだけブームになるとは思っていなかったのではないかと時々思う。
広報の面白さは、仕掛け、ブームを作れることだと思う。自社製品のPRも大事だが、大衆に受け入れられるには少し早いかな…と思うときには、まずブームをつくってしまうのはうまいやり方だ。世の中、自分の仕掛けでこんなに変わってしまうのかと思うと、ちょっとした快感でもある。季節が変わり、新商品が次々と発表されるころだ。少し見方を変えて広報展開してみるのも面白いかもしれない。
(広報フォーラム事務局・山本ヒロ子)
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