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第192回 『古いジョギングシューズ』(2009年8月17日更新)
私は会社のデスクの下に、ヘルメットとともに古いジョギングシューズと厚手のくつ下をいつも置いている。1995年の阪神淡路大震の後だ。震災を体験した多くの方の教訓として、地震で避難するさいに建物のガラスの破片や、がれきから足を守るためには厚底のジョギングシューズが最適であると書かれていたからだ。自宅でもベッドの横の棚に置いている。
その9年後の2004年10月に発生した新潟県中越地震では、オフィスのある天王洲アイルでも大きく揺れた。私のデスクの後ろにあるスライド式の本棚が左右に行ったり来たりしたものだ。この日は土曜日の夕方6時前。数人が出勤していたが、皆、比較的冷静だった。私は靴を履き替え、バッグを持って飛び出す準備をしたが、安全を知らせる館内放送があり、外に出ずに済んだ。
最近では今月9日午後8時前、東海道南方沖を震源とする地震があり、住まいの目黒駅周辺も激しく揺れた。この時も重要書類をバッグに詰め、ジョギングシューズで外に出るつもりだったが、テレビで安全だという知らせがあり何事もなく済んだ。11日午前5時過ぎの静岡沖地震の際は揺れが短かったこともあり、そのまま寝入ってしまった。
会社に置いてあるジョギングシューズが最近、大活躍した。7日の金曜日夕方、ゲリラ豪雨のときだ。午後4時すぎに某社CSR部長が来社。「その後は品川あたりで打ち合わしましょう」と約束していたのだが、ビルから一歩出ただけでもずぶ濡れとなり、タクシー乗り場は川が流れている状態。サンダルでは心もとない。そこで、お客様に理由を話してジョギングシューズに履き替えた。
タクシーにはスムーズに乗れた。車中、「そうだったのですね。地震もそうですが、今日のような日はジョギングシューズに限りますよ。ニューヨークの女性群は天候に関係なく通勤はジョギングシューズですからね」とそのCSR部長に感心された。品川では車寄せのあるビルに下車し、目的のお店に着いた。10時を回り帰るころには雨も止み、サンダルに履き替え山手線に乗った。
翌週の月曜日には、またジョギングシューズを紙袋に入れて会社に持ってきた。当初「こんな古い靴を」なんて思ったが、どこで、どう役立つかわからないシューズが、いつもデスクの下にあると思うと安心感がある。使い慣れたものや使い勝手のいいものを手放すときは、いま一度、「ほんとうに捨ててしまってもいいのかな」と振り返ることが必要なのかもしれない。それが身を守ってくれることもある。
(広報フォーラム事務局・山本ヒロ子)
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