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第171回 『女優、森 光子さん』(2009年5月21日更新)
女優の森光子さん(89)に、俳優としては3人目、現役では初となる国民栄誉賞が贈られることが決まった。「放浪記」を48年間演じ続け、今月9日の公演で上演回数2000回を達成した偉業に贈られるものだ。初演は、森さんが41歳のとき。それからの48年間は体力的にも厳しかったと思う、肺炎になったり、乳がんの手術も受けたりしたが、舞台で演じることが逆に励みになったという。
せりふの数は毎回300にのぼる。それを、いつもよどみなくこなす森さんは「公演が終わるごとに全部忘れ、全部覚えなおす」と某紙のインタビューに答えている。そのために工夫を重ね、日々の体調管理にも気をつけてきたそうだ。「風邪を引かない。転ばない。お医者さまのいうことをよく聞く…」(自伝「人生はロングラン」から)と、まさに努力の賜物といえる。
「終わるたびに、すべて忘れる」という言葉は、その道を極めた方からよく聞く。産経新聞1面のコラム「産経抄」を35年にわたり執筆してこられた石井英夫さんは昨年12月末、75歳で退社されたが、思い出に残るコラムはありますかと、よく聞かれるそうだ。そういうときは「書いたことはすべて忘れます。そうでないと前に進めない。明日の記事がかけないからです」と答えるという。
石井さんは午後3、4時ごろ「産経抄」の原稿を書き上げると、論説委員室のソファにボーと座っていらした。何かの抜け殻のような印象さえした。それほど全身全霊で原稿を書き上げていたわけだ。そのあと、軽い食事を済ませ、同室の論説委員と将棋を楽しまれる。しばらくするとゲラが上がってきて、チェックして石井さんの1日が終わる。そして、今日の原稿のことは忘れる。
「週刊文春」の元編集長で現在、月刊誌「WiLL」編集長・花田紀凱(はなだ・かずよし)さんにも、「週刊誌時代、印象に残っている記事は」と聞くと「覚えてないですねぇ。毎号忘れてから、次号に取りかかるので…」という答えが返ってきた。頭を空っぽにしておかないと、新しいアイデアが湧いてこないのだろう。過去にこだわっていては、いい企画や記事は出てこない。
私たちの日常業務も同じことがいえる。「企業とはそういうもの」「この時期、人が集まるわけがない」、行動を起こしてもないときから言い切ってしまう人が時々いる。しかし、過去にこだわらず、一度、空白状態にして、企業が求めていること、人が集まる工夫を新たな視点で考えてみると、思わぬヒントが出てくるかもしれない。ぜひ、実行していただきたいものだ。
(広報フォーラム事務局・山本ヒロ子)
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