広報ショートコラム
 
第156回 『家に帰っても何もないよ!』(2009年3月26日更新)

 先日、台東区湯島にオフィスを構える某出版社の営業課長Uさん、中央区にある金融会社の広報課長Wさん、某紙経済部記者のZさんと昼食をともにした。はじめこそ「昨今の消費低迷はきびしいですね。多くの人が飛びつくようなユニークな企画、商品はないですかねぇ」などとビジネス周辺の話題だったが、そのうち、アフター5をどう過ごしているかに話が移った。

 共通テーマはお酒だ。最近は居酒屋に徹しているというWさんが「不景気のせいか、居酒屋は大繁盛だね。これまでは居酒屋に足を向けなかったウチのおエラ方も最近は、結構、行っている」と具体的な実態を語る。「地酒を楽しむ会」に毎月参加しているZさんは「20、30人集まっていたのに、ここ数ヶ月は10人前後。仕事を終えてアルバイトをしている人が多いらしい」とため息まじりだ。

 Uさんの会社は、地下鉄千代田線「湯島」駅から歩いて10分くらいのところにある。駅の周辺は居酒屋だらけだ。Uさんが帰宅するときは、当然、ここを通る。「生ビール一杯500円に値下げしました」「日本酒2合とおつまみ3点で、たったの1500円」―こんなビラを下げた居酒屋の前を通り過ぎるのは、ノンベエには目の毒、気の毒だが、どの居酒屋もお客集めに必死なのだ。

 そんな中で、Uさんが目を止めたのは「家に帰っても何もないよ!」というビラ。「確かにそうなんです。家に帰っても、ハンバーグやカレーなど子どもの夕食の残り物。酒のつまみにはちょっとね」というわけで、部下2人とその店に吸い込まれたという。女将が愛想よく、3人がゆっくり話ができる席に案内してくれ、Uさんは「さすが客の気持ちをよく理解している」とべたぼめだ。

 この話を聞いていたWさん、「ズバリ私に言われたようだ。私は家でゆっくり飲んでいられなくて…。『体に悪いでしょ!』と女房に怒られてしまうんですよ」とグチまじりに語り始めた。どこのサラリーマン家庭にも、ありそうなシーンだ。「家に帰っても何もないよ!」のビラは、その情況、サラリーマンの気持ちをみごとに射抜いた惹句だったのだ。

 お客さまが何を求め、どんな気持ちかしっかり把握することが大事なのだ。いくら安くても、デザインや色がダサければ、そんな商品に女性は見向きもしない。逆に高価なアクセサリーでも、使い勝手がよく、自分を引き立ててくれるものであれば、他で倹約してでも買い求める。要は、消費者の立場に立って物事を考えることが、この時期の成功の道といえるのかも知れない。


(広報フォーラム事務局・山本ヒロ子)
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