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第131回 『タクシードライバー』(2008年12月25日更新)
普段、タクシーを頻繁には使うほうではないが、乗車して、わずか10〜15分間にドライバーとの思わぬ心の触れ合いを感じることがある。先日、会社での仕事が深夜になってしまったので、翌日のことも考え、少しでも早く家に帰り、身体を休めておいたほうがいいと判断して、会社から最寄りのJR大崎駅までタクシーを使うことにした。
ビルの前の通りにタクシー数台が待機していた。一番前のタクシーに合図したが、なかなか動かない。こちらから近づいてドアを軽くたたくと、女性のドライバーが「ごめんなさいね。こちらが気がつかなくてはならないのに」と第一声。疲れて客待ちしているうちに居眠りしてしまったようだ。「お疲れはよく分かります。私も、ですから」と声にはしなかったが、同情した。
「いつも、こんなに遅いのですか」と彼女。「会社に居るときは結構遅くまで仕事していますが、今日は特別です」と私。ちょっとした会話だが、疲れがほぐれた感じだ。駅近くに来たときハプニングが起こった。タクシーが停車した瞬間、用意していた小銭をシートと背もたれの間に私が落としてしまった。手を奥に伸ばせば伸ばすほど下に落ちてしまうのか、小銭は見つからない。
「1000円いただければいいですよ」と、さらりと彼女はいった。でも、料金不足だから、そういうわけにはいかない。「ドライバーは営業所に戻ると、必ずシートと背もたれを外し、隙間に現金やカード、定期など落し物がないかをチェックしますから大丈夫です」という。それでも、私が改めて小銭を探そうとすると、「本当に大丈夫です。それよりも電車、急がないと」と心配してくれた。
確かに彼女の言う通り、山手線でも深夜の時間帯では1台逃がすと、10分近く待たなければならない。私は彼女に何度もお詫びとお礼を言い、ホームへ急いだ。運よく電車が入ってきたところだった。数時間後、事務所でチェックする際、見つかってくれるといいのだが、と祈りつつ乗車した。数百円をめぐる数分のやりとりだったが、タクシードライバーへの印象がまた変わった。
最近、乗車するや否や「お疲れさま」「降ってきましたねぇ」「今日は特に渋谷周辺が混んでましたよ」と話しかけてきたり、「いやぁ、お客さんが減ってもう大変」と嘆いたりするなど、コミュニケーション上手のドライバーが増えている。話かけるきっかけづくりはプロだ。お客さんの立場を考えての対応には、こちらも勉強になった。年末、身体に気をつけて頑張っていただきたい。
(広報フォーラム事務局・山本ヒロ子)
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