広報ショートコラム
 
第111回 『傘かしげ』(2006年6月28日更新)


 毎週木曜日、産経新聞文化欄に同紙編集委員の石野伸子さんが「お江戸単身ぐらし」というタイトルで、東京の日常生活でふと気がついたことを、関西のそれと比較しながらユニークな視点でまとめている。ちなみに石野さんは広島県出身、大阪勤務が長く、現在、東京に単身赴任中だ。今月1日の記事では、地下鉄構内で目についた、日本人のマナーを取り上げた看板「江戸しぐさ」をテーマに、気付き、気働きについて触れている。

 その一例が「傘かしげ」。今のような梅雨時、狭い通りで正面から歩いてくる人とすれ違った時、かさのしずくを他人にかけないように、傘を人のいないほうに傾ける動作をいう。私も毎朝、JR目黒駅までの7〜8分、花房山通りの狭い歩道を歩いている途中で、しばしば、こうした場面を見ることがある。大体、年配の方に多く見られる。時々、制服姿の女子中学生などもいて“ご両親のしつけが行き届いているのだなぁ”と感じる。

 全くお構いなし、というのが若い女性。かなり大降りの時でも、歩調をゆるめることなく、傘の角度を変えることもない。こういう時、一人が傘を傾けても全く意味がない。傾けた人は、すれ違った人の傘のしずくを頭から受け、ずぶ濡れになってしまうことにもなる。すれ違いざま、二人が同時に傾けてこそ、雨もかからず、スムースに前に進むことができるのである。若い女性からは、ずぶ濡れになった人に「すみません」のひと言もなかった。

 気付かなかったのかもしれない。しかし、この気付きが大切であることを気付いてほしい。ちょっとした気付き、心配り、配慮が人の心を穏やかにし、プラスαの効果をもたらす。これは、広報の仕事に相通じるものがあるように思う。例えば、某社広報部長さんとなかなか連絡が取れず、かといって、こちらからのお願い事に「ご連絡いただけたら」とも言えずもじもじしていると、すかさず、「席に戻りましたら、まず私から連絡させていただきます」言ってくれる女性広報担当の方が時々いる。

 何て人の気持ちをよく分かっているのだろう、と感心させられる。そして私も、もし、そのような場面に遭遇した時は見習いたいと思う。気付き心のある人は、他人に対しても気が付くことを教えてくれる。


(広報フォーラム事務局・山本ヒロ子)
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