今年の八十八夜は5月2日でした。八十八夜は立春から数えて八十八日目を言います。八十八夜は、雑節の一つで、春から夏へと移る境目の日となっています。雑節とは、二十四節気(1年を24等分し、季節を表す名称を付けたもの。立春・夏至・秋分など)以外に、季節の変化の目安とする特別な日のことを言います。八十八は「米」という字になることからも分かるように、農耕に携わる人にとって八十八夜は特に特別な日だったようです。コメの豊作を願うための色々な行事を行い、現在でも様々な禁忌が守られているところがあるほどです。

しかし、現在では八十八夜は「米」よりも、「茶摘み」いわゆる新茶の茶摘をイメージする人が多いように、この時期に摘まれたお茶は極上と言われます。美味しいお茶の味と香りを堪能し、ゴールデンウィークの遊び疲れを癒してみてはいかがでしょうか? お茶を楽しむための道具の一つに急須があります。最近では、緑茶だけではなく中国茶や紅茶なども緑茶同様に急須を使って楽しんでいる方が多いようです。そこで今回は、どんなお茶にでも使える急須をご紹介しましょう。それは、どっしりと重く風格のある鉄瓶の急須です。
鉄瓶といえば南部鉄瓶が有名です。南部鉄瓶の独特の文様として知られているアラレ文様(表面が凸凹している文様)は、鉄瓶の表面積を増やして保温力を高めるという先人の卓越した知恵の結晶です。また、飽きのこない簡単なドットの繰り返しというシンプルなデザインが、年代を超えて愛されています。この鉄瓶を使用した急須は、内側がホーロー加工されて手入れがしやすく、茶漉しの金網ネットも装着され、お茶を抽出する際にお茶本来の味が引き出されるように工夫が施されています。
美味しいお茶を入れるには、お湯も重要になります。湯沸しポットで沸かしたお湯を使うのではなく、鉄瓶でお湯を沸かしてみるのも美味しいお湯を作るコツになります。急須のようにホーロー加工されていると、直接火にかけることは出来ません。お湯を沸かすためには、ホーロー加工されていない湯沸し用の鉄瓶を使用しましょう。
湯沸し用の鉄瓶は急須より二周りほど大きくなるので、鉄瓶のデザインも楽しむことができます。南部鉄瓶の文様には、実は裏表があります。鉄瓶の表は注ぎ口の左側とされ、鉄瓶を置く際に注ぎ口を右にしておくと、表側の文様を眺めることが出来ます。表側と比べて裏側は文様が控え目で鋳物師の銘も刻まれているので、興味のある方は裏表の文様を比較しつつ眺めてみて下さい。
鉄瓶でお湯を沸かすと、お湯がまろやかになります。さらに、鉄瓶から身体に吸収されやすい2価鉄の形で鉄分が溶出するので、微量ですが鉄分補給にも効果があるといわれています。
伝統に裏打ちされた美しい日本ならではの工芸品で、身も心も美しくなりたいものですね。