繊維の世界では「ナノ」という言葉が飛び交っています。 「ナノ」(nano-)とは10億分の1(10-9)を意味します。1ナノ・メートル(nm)は10億分の1メートルです。髪の毛の太さは50~100μm(10-6)ですから、髪の毛のさらに1万分の1の大きさと考えると、どんなに小さいかが想像できますね。

この「ナノ」という言葉が脚光を浴びだしたのは、「カーボンナノチューブ」というナノサイズの鋼より強く、銅より電気をよく通す管の開発によります。カーボンナノチューブのようにナノレベルで構造を制御する技術をナノテクノトジーと呼び、アメリカでは、このナノテクノロジーを「縦・横・高さのうち一辺が少なくとも100nm以下の物質の構造と機能を制御する技術」と定義しています。日本でもナノテクノロジーの開発が始まり、繊維の分野でもナノテクノロジーを駆使した技術が注目され始めました。
繊維に応用されるナノテクノロジーは、大きく分けて3つの考え方があります。
(1) 繊維の太さがナノオーダーであるという「ナノファイバー」
(2) 繊維の構造をナノレベルで制御する「ナノ構造制御ファイバー」
(3) 繊維の加工をナノレベルで行う「ナノ加工テキスタイル」
です。
東レから発表されたナノファイバーは、ナノオーダーの単糸で作られたマルチフィラメントのナイロンナノファイバーです。これは繊維の直径が数十nmの単糸数140万本以上からなる極限の細さを実現したナノレベルのフィラメント糸です。従来の技術では、糸を紡ぐ段階(紡糸)で、均一なナノオーダーの細い糸を紡ぐことができませんでしたが、今回世界で初めて成功したナイロンナノファイバーは、分子配列をナノレベルで制御してポリマーの流動性を最適化することで数十nmの細い均一な径の繊維を作り出すことができたというものです。ナノレベルの繊維太さにするメリットは、今までの繊維に比べて繊維1本に占める表面積が格段に大きくなるということで、ナイロンナノファイバーの場合、丈夫で強いナイロン100%でありながら吸湿性が従来の2倍~3倍に上がり、綿並みの吸湿性を確保できるという夢のような繊維が出来上がったというものです。
このナノレベルの技術は、新しいテクノロジーではありますが、皆さんが良く知っている軽くて暖かい毛の構造の中にも見られ、自然界には太古の昔からナノテクノロジーが見え隠れしてるんですね。