「ディアプレックス」は、防水と透湿の両方の機能を持たせたラミネート加工。綿やウールなど透湿性に優れた短繊維の天然繊維は、当然のことながら防水性は非常に劣ります。こういう繊維にラミネートすることによって防水・透湿機能を持たせようというものです。

「ディアプレックス」は、三菱重工が開発したポリウレタン系形状記憶ポリマーを加工した素材。素材そのものに、元の形状に戻る温度を設定することで、ウエアの着用シーンに合わせて、衣服内気候をコントロールさせ、高防水・高透湿・結露防止という高機能を持たせることができるという。ポリウレタン系のシートだから、ノン-ポウラス(無孔質)なので防水性に優れていることは容易に分かりますが、透湿性をどのように持たせるかは、形状記憶ポリマーということにあるらしい。「ディアプレックス」のラミネート加工は、非常に薄い無孔質のメンブレン(膜)になっています。このメンブレンを構成しているポリウレタン分子が、ある温度以上になると、ミクロブラウン運動を起こし、分子鎖の間に隙間が生じ、その隙間から、不感蒸泄の汗や熱気を移動させ、衣類内のムレを防止出来る仕組みになっているわけです。当然、ある温度以下になるとこのミクロブラウン運動は停止するため、水蒸気や熱の移動もしなくなりますから、防寒着や冬山などの登山用の衣類にも、保温性に優れた衣類としても提供できることになります。
冬山衣類ということのついででお話しすると、過酷な自然条件下では、体温と外気温との温度差から結露が生じます。いったん生じた結露をそのままにしておくと、衣服内の温度が下がり、氷結して体内の温度を下げてしまう危険があります。「ディアプレックス」は、メンブレンの高吸湿性によって、衣類内の水蒸気を速やかにメンブレンに吸着させ、メンブレンの中で速やかに溶解、拡散させながらメンブレンの表面に移動させて放出させて結露を防ぐということです。この結露防止の機能は、衣類内温度が低い安静の時でも効率的に働き、気温差によって生じた水分だけを放出してくれ、運動によって体温が上がってきたら、分子のミクロブラウン運動によって隙間が生まれたところから積極的に汗と水分を外に放出してくれますから、人間の安静と運動の生理機能によく合った加工と言えるわけです。
オンワード樫山からこの秋冬ものとしてコーデュロイのジャケットが販売されますが、コーデュロイの裏側にはこの「ディアプレックス」が加工されています。多少の雨なら傘も入らないということがうたい文句にはなっていますが、表側に「ディアプレックス」加工がされているわけではありませんから、生地は濡れてしまいます。ですが、濡れた水分は内側を通り抜けませんから、体温が冷えるということはありません。また、透湿性に優れていますから、暖かい室内では、不感蒸泄の汗を外に出してくれてムレて不快感を感ぜず、寒い屋外ではメンブレンがしっかり閉じて暖かいという、一石二鳥の快適さを実感できるはずです。