(79)「木」を通じて豊かな生活を訴求

住友林業 コーポレート・コミュニケーション部長 大野裕一郎氏

日本工業新聞社の経済情報紙「フジサンケイ ビジネスアイ」にて、広報部門のエキスパートに取材をしてご紹介しております。

フジサンケイ ビジネスアイ
コーナー 「広報エキスパート」
取材先 住友林業 コーポレート・コミュニケーション部長 大野裕一郎氏
新聞発行日 2018年10月11日(木)掲載

広報のプロに広報戦略を聞く。広報エキスパート

【プロフィル】
大野裕一郎(おおの・ゆういちろう)
 1988年慶大商卒、住友林業入社。ニュージーランド、アムステルダム駐在、総務部秘書、海外開発部グループマネージャ―、シアトル駐在所長、木材部グループマネージャーを経て2014年コーポレート・コミュニケーション室長。17年現職。


─海外事業が好調です
 米国、豪州の販売戸数は2018年度に9850戸を計画し、国内の戸建注文住宅の計画の7700棟を大幅に上回る見込みです。約半世紀にわたり、木材・建材の製造拠点を構えるインドネシア、また、タイ、べトナムといった東南アジアでも不動産開発に進出しており、海外の住宅・不動産事業の第三の柱として収益基盤を強化していきます。


─国内事業は
 10年に国は、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を施行しました。当社も木材の積極的な活用を促進するため、中、大規模建築物の木造化と木質化に取り組み、学校や高齢者、医療、商業施設などを手掛けています。最初に施行した木造小学校は、東日本大震災で被災し、高台移転に伴って2つの小学校が統合した宮城県東松島市立の宮野森小学校です。

 構造材は主にスギの無垢材で、東北材を中心に使用し、全面的に木の素材を生かした現(あらわ)しとすることで木質感あふれる空間となっています。大阪府の千里リハビリテーション病院アネックス棟は、「木の持つ治癒力」を最大限に引き出す施設で、外観、内観ともに木材をふんだんに使用しています。


─高さ350メートルの木造ビル構想が話題になりました
 今年2月、1691(元禄4)年の創業から350年を迎える2041年を目標に、高さ350㍍、地上70階の木造の超高層ビルを建設する研究技術開発構想「W350(ダブリューサンゴ―マル)計画」を発表しました。Wは「Wood=木」のことです。建物は約9割を木材で構成する木鋼ハイブリッド構造で、この計画で使う木材は約18万5,000立方メートルで、当社の木造注文住宅の構造材の量で換算すると約8000棟分に相当します。使用する木材は約10万トンのCO2を吸収し、固定します。

 記者発表には社長の市川晃、筑波研究所長の中嶋一郎が登壇。新聞、雑誌、テレビなど31社50人に取材いただき、当日のニュース番組や翌日の紙面で報道されました。国内はもちろん、海外からも大きな反響があり、手応えを感じることができました。


─広報体制は
 コーポレート・コミュニケーション部は、私を含めて総勢20人。広報・IR(11人)、広告ブランド・ウェブ(8人)で構成しています。4月に社の経営理念と行動指針を改定しましたが、旧経営理念を定めた01年からの17年間で事業は大きく拡大しました。

 当時、グループの従業員は約9400人、グループ会社は61社、売上高は約6800億円でした。現在は、従業員約1万8400人、グループ会社139社、売上高約1兆2000億円に拡大しました。国内外でさまざまな価値観を持つ従業員が働いていることから、気持ちを一つにするため、グループ報「樹海(じゅかい)」などで情報を共有、発信し、企業価値の向上を目指しています。


─積極的なCSR活動の一つに、名木や貴重木を後世に受け継ぐ活動があります
 15年には京都・北野天満宮の御神木で、菅原道真公の“飛梅伝説”で有名な「紅和魂梅(べにわこんばい)」の組織培養による増殖に成功しました。また、東日本大震災の被災地では、「奇跡の一本松」や「希望の芝プロジェクト」などで、バイオテクノロジーによる技術提供をしました。こうした取り組みもタイムリーに発信することで、「木や木材を通じて豊かな社会をつくっていきたい」という住友林業の姿勢を幅広い層に理解してもらいたいと思っています。



(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子 2018.10.5更新)