(132)やけどしにくいスープスプーンの素材


 熱々のスープを飲むときに欠かせないスプーンですが、普段使いのステンレススプーンで「熱っ!」と口から離してしまった経験はないでしょうか。そこで、スプーンの素材の違いで熱さの感じ方が違うのか、スープの中へ入れたスプーン自体の温まり方と、舌への熱の伝わり方を調べてみました。素材はステンレス、メラミン樹脂、木、木に漆を塗ったもの、磁器の計5種類。スープを飲む動作を想定して、舌に見たてたシリコンシートを使ったモデル実験を行いました。


結果一覧

 【スプーン自体の温まり方(スプーン表面の温度上昇)】
 スープに見たてた70℃の湯に温度センサーを付けたスプーンを投入。30秒後のスプーン表面の温度を測定しました。ステンレスが42.0℃上昇したのに対し、磁器はステンレスとほぼ同程度の温まり方でしたが、メラミン樹脂では-5.2℃、木は-4.9℃と、この2つの素材では約5℃も低い結果でした。


スプーン表面の温度上昇


 【舌への熱の伝わり方(舌モデル表面の温度上昇)】
 スプーンに密着しやすい柔らかいシリコン製の板(厚み4ミリ)で舌モデルを作製し、そこに湯から取り出したスプーンをすぐに置いて固定。スプーンが接触している舌モデル表面の最高温度を測定しました。ステンレスと磁器では約25℃上昇しましたが、木と漆塗りは、ステンレスより10℃も低く、この温度差はスプーン表面の温度差よりも木で2倍、漆塗りで3倍という大きさでした。


舌モデル表面の温度上昇

 今回の実験結果から、スープをすくい口や舌に接触したとき、木や漆塗りのスプーンではステンレスや磁器に比べて舌の温度上昇は緩やかで、やけどしにくいといえるでしょう。日本の汁物椀が、現在に至るまで変わらず木や漆塗りである一因は、手で持った際に、そして口をつけた際に熱くなりにくいよう配慮された素材であるからともいえるのでしょう。
 スプーンについてもステンレス以外に、木や漆塗りのものを揃えておくと、幼児から高齢者まで食事がさらに楽しくおいしくなりそうです。

(2016.11.04)


産経新聞掲載記事『比べる×調べる』
生活科学研究室