(96) まな板の熱湯消毒

 気温も高くなり、食材の腐敗や食中毒が気になる季節になりました。特に加熱を必要とする生肉や生魚の調理には注意しなければなりません。今回は、まな板の細菌数が調理の過程でどのように推移していくのか調べてみました。


 耐熱抗菌性の樹脂まな板、包丁、生の豚ばら肉を準備し、まな板の上に豚肉を広げて並べ、包丁で一口サイズに切りました。豚肉を全て皿に移した後、まな板を除菌表示の有る中性洗剤とスポンジで洗い、流水で流して水をよく切りました。次に、沸騰したお湯をまな板全体によく掛け熱湯消毒をしました。それぞれの工程の合間に、まな板の表面10センチ四方あたりの一般細菌数を検査しました。検査は、①調理前、②肉を切った後、③洗剤で洗った後、④熱湯消毒の後の計4回です。


グラフ:まな板100cm2あたりの一般細菌数

 使用前のまな板は汚染が少なく、100cm2あたりの一般細菌数は300以下で清潔な状態でした(結果①)。しかし、豚肉を切った後の細菌数は100cm2あたり4,500に増加していました(結果②)。豚・牛・鳥などの生肉には1gあたり数万〜数十万の細菌が付着しています。豚肉をまな板に乗せることで、表面の細菌がまな板に移ったことが判ります。洗剤で洗うことによって、見た目には綺麗になりましたが、細菌数は100cm2あたり5,600と多いままでした(結果③)。目に見える汚れは落とせても、目に見えない細菌を全て取り除くことはできないようです。洗った後のまな板から検出される細菌は、スポンジが原因とされています。スポンジに含まれる細菌数は非常に多く、スポンジ1個あたりに数憶の細菌が潜んでいることも珍しくありません。スポンジの細菌が洗浄中のまな板を再汚染していると考えられます。熱湯消毒後は一般細菌が全く検出されず、最初の水準に戻りました(結果④)。


 一般細菌の多くは熱に弱く、熱湯消毒は非常に有効です。生肉には病原菌が含まれている場合もあり、調理後の器具の消毒には常に気を使った方が良いでしょう。生肉や生魚を切った包丁やまな板をそのまま使って、他の食材を調理することは厳禁です。熱湯消毒の他、塩素系漂白剤に浸けても同様の効果が得られます。また、微生物の増殖には水分が欠かせません。使用後は風通しの良い場所にまな板を立て掛けて乾かし、天気のいい日には天日干しをしましょう。

(2015.05.22)

産経新聞掲載記事『比べる×調べる』

 

環境科学研究室