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山崎製パン
「レーズンゴールド」

2018.09.08

最新記事2度発酵製法でしっとり食感長持ち

 最近、JRや私鉄駅構内のファストフード店、コンビニのイートインスペースで会社帰りのサラリーマンがちょい飲みする姿をよく見かけるようになった。パンを酒のさかなにした「パン飲み」もはやりつつあるらしい。今回の「これは優れモノ」は、日本の食卓に欠かせなくなった食パンについて取材した。

レーズンゴールド

ライフスタイルに変化

 「関西では厚切りが、関東では8枚切りのような薄切りのパンが好まれます」と、山崎製パン営業統括本部の菅真一さん(53)。厚切りは、たこ焼きやお好み焼きのように、もっちりとして満腹感があるからではないかと分析する。一方で関東では、薄切りのサクサクとした食感が人気だ。
 ライフスタイルの変化やパンメーカーの啓蒙も手伝って、「朝食はパン」という家庭も増えている。総務省の家計調査によると、2000年にはコメの年間購入金額が1世帯当たり3万2769円、パンが同2万3438円だったのに対し、17年になると、コメが1万8917円、パンが2万4723円と逆転した。パスタや冷凍食品の需要が拡大するなど食の多様化が進み、コメの消費が相対的に減ったこともパンを主食の座に導いたといえる。
 パンは、今から6000年前のメソポタミア(現在のイラク・クエート)で生まれたとされる。小麦をひいて水を加え、かゆ状にして食べていたものを、発酵させて妬いたのが今日のパンの原型になった。古代ギリシャの時代には、パンを大量生産できる器具も発明された。
 現在の食パン作りで基本となる原料は小麦、水、パン酵母、食塩の4つ。工場ではまず、小麦粉、水、パン酵母をミキサーで混ぜ合わせ、この「中種(なかだね)」を発酵室で4時間ほど寝かせて大きく膨らませる。さらに残りの小麦粉、水、食塩、バターなどを加え、パン生地を作る。
 パン生地は1斤ずつに切り分け、ケースに入れて45分ほど発酵させる。その後、約200度のオーブンの中で35分ほど焼くという具合だ。焼く際にケースに蓋をすると四角く、蓋をしないと山型のパンが出来上がる。「全国22カ所の工場で、1日約200万斤の食パンを生産しています」(菅さん)という。

時間かけじっくりと

 パンの製法も、メーカーによってさまざま。同社のように、発酵を2回に分けてじっくり作る方法のほか、街のベーカリーなどでは発酵は1回で焼き上げる。菅さんによれば、2度発酵製法によるパンは、しっとりとした食感を長時間にわたって楽しめる。
 こうしたノウハウを生かし、小さな3枚切りのレーズン入り食パンとして誕生したのが「レーズンゴールド」。16年に発売し、17年には年間47億円の売り上げを記録しているヒット商品だ。
 菅さんは「少量でも品質の高い物をという思いで作った新しいコンセプトのパンです」と、にこやかに語った。

interview山崎製パン
営業統括本部 菅 真一氏

少量でもおいしいものを シニア層にニーズ

小さな3枚切りというのは量が少なく感じるが

 シニア層や単身世帯をターゲットに食べきりサイズにした。企画にあたって社内でも議論があったが、少量でも満足感があり、ぜいたくな味わいのパンを目指した。サイズは小さいものの、レーズンをふんだんに使用するなど十分なコストをかけた。2016年の発売後、右肩上がりで売れ、17年の売上高は47億円で、4500万個を売り切った。

ヒットの理由は

 少量でもおいしいものを、という消費者ニーズにマッチしたのだと思う。特にシニア層の場合、多少高くても品質のいいものを求める傾向がある。通用サイズのパンを買っても食べきれずに困るという声も聞く。毎日買い物に出かける週間があるのも関係しているのではないか。俳優の中原丈雄氏をCMに起用してから、同世代の60代以上だけでなく、若年層の反響も大きくなった。

他のレーズンパンとの違いは

 品質の確かなカリフォルニア産のレーズンを従来品の2倍以上使っている。レーズンは、パン生地と混ぜると水分を吸ってしまい、パン自体が硬くなってしまう傾向がある。当社の食パンに共通している“しっとり、もちもち”感を出すために半年ほど試作を繰り返した。購入後3~4日経ってもおいしく食べられる風味を実現した。

今後の拡販は

 食パンの販売でボリュームが大きいのはスーパーだが、近年はドラッグストアなどでの取り扱いも増え、伸びている。レーズンのほか、チョコやチーズのパンも発売し、購入層の拡大を図っている。共働きや単身世帯が増える傾向にあり、手軽に食べられる食パンが、朝だけでなく夜の食卓にも並ぶよう、さまざまな提案をしてきたい。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ