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アスコン
バーチャルフィッティングアバターシステム

2018.06.09

最新記事印刷業のノウハウ生かし画面で色再現

 ビジネスの現場で、スマートフォンやタブレット端末を活用するシーンをよく見かけるようになった。小売店などでは、手書きの伝票を起こすことなく、タブレット端末内臓のソフトを使って、商品の在庫管理から受発注を行っている。また、保険商品の申し込みも、営業担当者のタブレット端末から直接できるようにした会社も現れた。今回の「これは優れモノ」は、タブレット端末で仮想の試着ができる日本初のソフトウェアを取材した。

バーチャルフィッティングアバターシステム

 「バーチャルで試着ができるシステムを作れないか?」。アスコン第一事業部の木野本賢一さん(55)に紳士服最大手、青山商事から打診があったのは2015年のこと。
 当時、青山商事はオーダーメードスーツの新規事業を計画していた。オーダーメードでは自分の体形にフィットする一着が得られる半面、出来上がりの生地の色柄が事前に描いたイメージと違うこともあったりする。また、採寸や事前の生地選びだけでも時間がかかり、若年層にとってオーダーメードスーツは遠い存在でもあった。

 若者が使いこなしているスマートフォンやタブレット端末を使って服地選びやサイズ選びができれば、顧客の選択肢も広がり、新たな需要を喚起するという狙いがあった。
「この世にないものを作れというのですから、手かがりを求めてネットや文献をあさりました」と木野本さんは、畑違いの事業開発に乗り出したいきさつを話す。

 1986年に印刷業として創業したアスコンは、青山商事のグループ会社として全国に展開する「洋服の青山」の新聞の折り込みチラシ制作などを請け負っていた。
 「印刷業で培った色の再現のノウハウがバーチャルでの試着システム作りに役立ちました」(木野本さん)
 例えば、紺色はビジネススーツの基本色だが、濃淡や色の違いもあるし、生地の素材や織り方でも発色が違ってくる。チラシ制作の時には、その微妙な違いを表現するのに苦労したという。

 今回は、紙ではなく、タブレット画面で見せる必要がある。デジタル撮影すれば色が忠実に反映されると考えたが、小さな生地見本を大きくする際に実物とは違う発色になってしまったという。「最終的には人間の目で実物と比べ色を再現していきました」と木野本さんは、アナログの知見がデジタル技術に活かされたと話す。
 さらに、このバーチャル・システム開発では、顔や頭の形など立体感を出す仕組みが必要だった。米国などで、3Dカメラが幅広く使われているのを知り、これを応用することにした。

 こうして既存の技術を上手く組み合わせることで、開発から1年余りたった2016年2月に「バーチャルフィッティングアバターシステム」が完成した。
「これを完成形で終わらせるのではなく、さまざまな分野で応用の効くシステムに育てていきたい」と木野本さんは抱負を語った。  

interviewアスコン 第一事業部  木野本賢一 氏

着物は実用化めど、需要回復に貢献したい

全くゼロからの開発だった

 当社は印刷業としてスタートし、全国で展開する「洋服の青山」の折り込みチラシなどを製作していた。洋服の色合いを忠実に再現し、地域ごとに内容の違うチラシを短時間で作る必要があった。このため、印刷の色を正確にいち早く全国の印刷所に送るために、自前でシステム開発をしてきた歴史がある。時代が、紙からデジタルに変化する流れに従い、必要な人材の育成にも努めてきた。これらが活かされて「バーチャルフィッティングアバターシステム」が誕生したのだと思う。

開発で苦労した点は

 生地見本がハンカチほどの大きさしかないので、これをスーツにしたときにどんな色柄に見えるかを想定するのに苦労した。生地をデジタルカメラで撮って、そのデータを、バーチャル上のスーツのデジタル模型に張り付けるわけだが、実物のようにしっくりこない。肉眼で見て、補正するという作業が必要だった。生地は1500種類にも及ぶので、10人ほどの開発スタッフがアナログな作業を繰り返して完成させた力作だ。現在、100万通りのスーツのコーディネートができる。

操作方法は

 ソフトが内蔵された3Dカメラ付きのタブレット端末で、試着する人の頭部を360度撮影するだけだ。ソフトには3パターンの体形がインプットされており、来店した顧客の体形に近いものを選んで、顧客の頭部の写真を組み合わせる。体の部分は白地なので、ここに好きな生地を選んで貼るという仕組みだ。スーツだけではなく、シャツやネクタイ、靴などもコーディネートできるようになっている。実店舗でもこの方式が受けて、オーダーメード需要が拡大していると聞いている。

洋服以外への活用は

 実用化がほぼ完成しているのが、着物だ。スーツと違って色柄が体の部位ことに異なり、帯もあるので開発には苦労した。和服の需要回帰に貢献できないか、期待している。浴衣や女子学生の卒業式用の袴、かつらでの応用も研究中だ。

フジサンケイ ビジネスアイ掲載記事・これは優れモノ